海へ

海へ
崖から足を踏み外すと、水面で僕の身体が砕ける音が響き渡った。 小さな気泡が視界を遮り、水面の美しい模様がぼやけていく。 やがて意識は暗闇にのまれていった。 再び目を開けた時、僕は異なる景色を目の当たりにした。 肉体の裂け目から、血液が流れ、赤い雲となって水中を漂っている。 醜い色を見て、僕の実感が蘇った。 ああ、僕は死んだのだ。 壊れた肉体、肉体なき精神。 海底に横たわった一体の人生。
Yameta