虚構の夜

虚構の夜
 これはある嘯き続けた奉公人の成れの果てである。  奉公人である桂はとある地主の元で約五か年、昼夜問わず働き続けていたが、ある日、過労のあまり、終に身分に似合わない奢侈なことに手をつけ、何もかも等閑になってしまった。  奉公人は今日も庭の掃き掃除をやっているように見せかけて縁側に置いてある菓子を狙っていた。  「千代ー、ちょっと来てくれないかー。」  丁度菓子を持ってきた娘が屋敷の奥へ呼ばれ、菓子が手薄となった。  「はーい。今行くー!!。」  これを好機に奉公人は懐にサッと菓子を放り込んだ。  やがて、娘が戻ってきて先程まであった菓子がなくなっていることに気づく。  「かつら、わたしの置いてたお菓子どこかわかる?」
新野楓衣
新野楓衣
初めまして、新野楓衣(あらのふうい)です。趣味は読書とベースで芥川龍之介が好きです。しがない雪国の高校生ですがよろしくお願いします。