『第1回NSS』夜景に思うこと

『第1回NSS』夜景に思うこと
久方ぶりに見る夜景は、どこかが違っていた。 場所の違いはおそらく原因ではない。墓地から星空や閑静な海面を眺めているわけだが、寒気や気配はない。霊感はないし、今更心霊の類も信じていない。 あれをくぐり抜けた今、もはや心霊は敵ではないのだ。 だから今夜ぐらい、綺麗な景色と共に彼らを想おう。 持ってきたのは美味い酒。退職金はたんまりと貰えたから、それなりに良い物が買えた。問題があるとすれば、あいつらがブランデーを好まないという可能性を考慮していない点にある。 死ぬ間際に好きな酒を言わなかった彼らの怠慢に原因があるのだから、そこは譲歩してくれると嬉しい。 片手で栓を引き抜いて、戦友が眠る大地にそれを注ぐ。澄んだ液体の中で、星がきらりと微笑んだように見えた。 海は凪いで静かに囁く。寒風も優しく吹きつける。どれだけ待ち焦がれた事か。 「やあポール。それにジョー、デッカード。あとは、敬愛すべき俺らのサミュエル中尉に、老いぼれのハバナード!」
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