それは安いのか高いのか
取り付けられたルーペを使って水槽を覗くと、濁りは無数の小さな点の集まりだった。ルーペを追加してさらに拡大すると、ひとつひとつが小さく動いているのが分かった。ふたつが並んでくるくると回っていたり、ひとつを中心にたくさんの点が回っていたり。眺めていると点の大きさはまばらで、赤や白、黄色、青など色の違いがあるもわかる。これは確かにいつまでも眺めていたい、と思った。
「良いだろ、それ」
勝ち誇ったように友人が言った。
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こいつは変なものを集めるのが趣味の変なやつだ。壊れた傘や道端の小石に始まり、この間は粗大ゴミとして捨てられていた電子レンジをも持ち帰っていた。そんな奴に「面白いものがある」と誘われてのこのこやってきた俺だ。机の横のゴミの山が動かされて真新しいスチール製の棚が置かれ、横幅100cmほどの水槽が鎮座していた。液体が入っていることだけはわかるが、生き物が入っているようには見えない。友人はニヤニヤ笑いながら「まあ、見てみろよ」と取り付けたルーペを覗くように俺に勧めてきた。
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カテゴリー: ファンタジー
投稿日時: 2021/11/10 13:51
.sei(セイ)
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