天と地の青

天と地の青
「いい空だ、本当にな。だがな、こんな夜だったよ。祖母が死んだのは」  私はクサい独り言をこぼし、空を見上げた。コバルトの世界が、私を包んでいた。そういえば祖母の服は青色が多かったな。そんなことを思うと、世界は淡い青に変わっていた。 地平線が見える。天と地の分かれ目。青い山、青い空。しかし、その狭間には、何か決定的に違うものがある。それを人は地平線と呼ぶ。そんな下らない思考をしながら私は山の麓の光を眺めた。あの光一つ一つも誰かの人性の灯火だと思うと、無性に感慨深い。 「さあ、もう夕飯の時間だ。帰ろう」 浩は私を呼びながら自転車に乗り込み、家に向けて自転車のペダルを漕いだ。私は追いかけるように自転車にまたがった。 「待ってくれよ」 「ああ、追いつけたらな」
古井論理