エッセイ 「キズモノ」
時折考えることがある。彼の相手がわたしで良かったのかと。
父はわたしと彼が付き合いを始めた時、別れさせなければいけないとおもっていたらしい。わたしが、こころもからだも「キズモノ」だったから。彼の未来に影を落とす、彼にとっての危険因子だと彼の身を案じたのだ。
わたしのいまの情緒の状態は彼がいてくれるから成り立っているものだ。いくら腕を切っても何回自殺しようとしても彼はずっと傍にいてくれた。
しかしかれの情緒は。
三菱で働いていた彼はわたしと付き合い出してから変わった。わたしがデザインを教えたり わたしがたまたま彼のアパート(今のところじゃない社宅)に持っていった一眼レフに興味を持ち 町おこしみたいな会合に参加しては自分の意思を述べ 三菱では何をやっているのか自分でも分からないといい 辞めた。そして写真の仕事を始めた。いまでは動画編集や広報の様々な活動をしている。
彼が時折言うようになった「死にたい」を わたしは受け止めきれない。「三菱続けてたらもっと貯蓄あったろうな」に わたしは何も言えない。
彼はきょうも言った 「死にたい」と。わたしが以前毎日のように彼に言った言葉だ。一生懸命慰めてくれたその彼から発された方の言葉たちを、わたしは一言もおもい浮かべることができなかった。
結果わたしは彼から隠れるように箪笥の横に体育座りして静かに涙を流しただけだった。もう共に30である。折り返すには遅すぎる8年間を過ごしてきた。
「きみがわたしと出会ったことは間違いだったのかもしれないね」
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カテゴリー: 日記・エッセー
投稿日時: 2024/10/6 11:57
最終編集日時: 2024/10/6 11:58
灰谷つばめ
活字中毒。食えねえ文章ばっか書いてます。
オタクじゃないけどオタクみたいな話し方してしまう病。あとこころの病持ち。夜になると黒くなります。気に障ったらごめんね。悪気はないからタチ悪いね。悪いようにはしないんで よろしゅうお願いしやす
Novelee:: 2024.08.22-