無善悪
【久世辰美 クゼタツミ】
容姿端麗な父母でした。しかし、それを引き継いだのは兄だけです。
僕は家族の誰一人とも似ていません。醜く吊り上がったこの目はきっと、顔も名前も知らない、母の不倫相手に似たのだと思います。
僕の顔を気に食わない父からよく、暴力を振るわれていました。警察に訴える勇気もなく、六年もの間、僕は父の道具として生きていました。
母はある日(夜中だったと思います)、意識が朦朧としている僕を叩き起こして言いました。
「逃げましょう」
と。返す言葉に悩んでいると、母は無理矢理僕にランドセルを背負わせて僕の腕を掴み、飛び出す勢いで外に出ました。
「走って」と言われたので、僕はとにかく走り続けました。
散々走った挙句に着いた場所は、おんぼろのアパートでした。
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カテゴリー: ミステリー
投稿日時: 2025/6/20 2:45
最終編集日時: 2025/6/22 5:51
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
井出元 悠来
いでもとゆうらです。よろしくお願いします。 プロフィール画像は、自作イラストをAI加工したものです。