プロローグ 風に愛された少女

「きゃぁぁぁっ! ひったくりよぉぉぉ!」  昼下がり、一段と賑やかさを増した街中に、引き裂くような悲鳴が轟いた。次いで男の怒鳴り声が響き、混雑していた繁華街にざわめきが広がる。  なんだなんだと、見えない状況に困惑しながらも、「退け」と叫ぶ男の声に、一気に道が開けた。 「退きやがれぇっ! ぶっ殺されてぇのか!?」 「こっち来る!」 「いやぁぁっ!」  開けた視界の中に、効果そうなバッグを片手にナイフを振り回す男を捉えた群衆に、たちまち混乱が広がる。この混乱に乗じて逃げ出そう、と男がニヤリと笑った。  _その時だった。
霧咲水蓮
霧咲水蓮
NL、BL、GL、ハピエンから死ネタ、メリバまで、多岐にわたって大好きな雑食です。 最近は特にGLを中心に書いています。 投稿頻度はクソ以下です。