足りぬ欠片
私たちは、二人で一つ。それは心が、なんてものではない。
人格が二つある訳でもない。ちゃんと二人の人間。
だけど友からも国からも、認められているのは私ともう一人が演じる、もう一人の誰か。
私は私として生きたかった。
当時の日本は人口が増えすぎ、住む場所も食べるものも十分にない状態であった。そのため中国に習って一人っ子政策を行っていた。
私、さよと妹のすみは、普通の家庭に生まれてしまった双子だ。母さんは隠れて私たちを産み、国には「きよ」という名の女の子が一人産まれたと報告した。
「いい? あなた達はきよと言う名の、二人で一人の人間なの。さよとすみというのは区別をつけるための、ただのあだ名。そう、これはゲームよ。あなた達が違う人間だと誰かにバレたらおしまい」
私達は初めはこのゲームを楽しんだ。互いが互いの真似をし、学校での出来事を事細かに伝え合い、一人になるよう努力した。
「きよは勉強も運動も何でも出来るよね」
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カテゴリー: ミステリー
投稿日時: 2024/4/22 1:26
きのこ
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