あなたへ

あなたへ
 お元気ですか。私は寒くってとても元気とは言いたくないけれど、風邪も引かないで日々を過ごしています。最近はまた一段と凍えるような日が続きましたね。あなたの住むところもそうでしょうか。  私の住む風の村はご存知のとおり雪が積もりませんから、冬を感じるのは肌を刺す風のみです。木の葉ももうぶるぶると震えて、外に出るとこの世に暖かさというものが何にもないような気がしてしまいます。電車には遠く山の国からのってきた雪がこちらに着いてもまだ残っていて、きゅうと音を立てて電車が止まると、はら、とひとつ雪が落ちます。こちらの雪はもうそればっかりです。  でも、あなたはそんな冬が好きなのでしたね。吐く息の白さも、木の葉の落ち切った枝の眠った新芽も、この季節にだけ聞こえる鳥の声も何もかも。あなたはそんな綺麗で輝かしい冬を愛していましたね。  ああでも、でもね、はあっと息を吐いたとき白いねって一緒に笑うあなたがいないと、ここにも新芽があったよとはにかむあなたがいないと、この鳴き声はああだこうだと得意げに語るあなたがいないと、冬ってなんにも楽しくないのよ。寂しくって苦しいのよ。知っていたかしら。  そうそう、こちらではいよいよ山茶花が萎れ始めてしまいました。あの赤黒く染まる感じがどうにもいやなものです。かわりに、昨年押した山茶花を額に入れてみました。やっぱりちょっと赤黒くなってしまうけれど、鮮やかな色がまだ残っていて部屋が明るくなります。このお手紙にも同封しておきます。丁寧に入れるけれど、あなたのところに着くまで無事かしら。もし届くまでに壊れてしまったら、私のをあげるからきっと取りに来てね。ずっと、待っています。                           私より
ひるがお
ひるがお
見つけてくれてありがとうございます。