第二十七話 告白
配達用の四角いリュックサックを背負うとレンタル自転車にまたがった、スマートフォンが鳴ったのを確認すると画面に表示された飲食店に向かう、注文の品を手早く受け取り、リュックの中に詰め込むと再び背負った。
スマートフォンに表示された目的地に向かって蒲田はひたすらペダルを漕いだ、マンションのエントランスに着くと部屋番号を入力してインターホンを鳴らす。
「ドアの前に置いておいてくださいー」
殆どの注文客が置き配を要求してくる、なるべく人との接点を持ちたくない蒲田に取っては好都合なシステムだ、杏奈と二人で東京から逃げるように大阪までやってきたが莫大な貯蓄がある訳でもないので何かしら仕事をしなくてはならない。
とはいえ命を狙われている身からすれば同じ場所に長時間留まっているような仕事は避けたかった。
最初の一週間ほどは安いビジネスホテルに宿泊していたがこれから先の事を考えると何時までも割高のホテルに泊まり続ける事も出来ない。
杏奈と二人で安アパートを探した、あまりこの辺の地理には詳しくなかったが大阪梅田駅よりほど近い都島駅みやこじまえきで1K5万円の物件を即決した。二人で住むには手狭だが贅沢を言える身分でもない。
朝から晩まで自転車を漕ぎ続けておよそ八千円の収入だ、ヘトヘトになって部屋に戻ると杏奈が夕ご飯を作って待っていてくれる、まるで新婚夫婦のようで気分が高揚した。
「お疲れさま」
カレーをかき混ぜながら杏奈が振り向く、思えば最初に杏奈が作った料理はカレーだった、あまりの衝撃に生死の堺を彷徨ったが、今では少しづつ上達してまともな料理が出てくるようになった。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2023/3/6 0:12
最終編集日時: 2023/3/6 0:13
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
桐谷碧
小説家を目指しています(歴3ヶ月)
年間150冊以上は小説を読みます😄
夢は直木賞、ドラマ化、映画化。
自殺、復讐、競艇、がテーマの小説執筆中🖋
好きな作家
東野圭吾(母の影響)
現在
引きこもり