第6回N 1『愚性』

第6回N 1『愚性』
エントリーナンバー2   「ランデヴー」  スウプをひとくち、口に運ぶ。匙の丸みが唇に吸いついた。喉に流し込まれたスウプが、喉仏を動かす。また一口、ゆっくりと匙を口元へ持っていく。もう匙では掬えないほどの量しか残っていないことを知り、静かに目を伏せた。  飴色のちゃぶ台と変色した畳が、終身刑を待つ罪人のように、春の日差しを静かに受けていた。  鶯の姿が葉桜の隙間から見えた。とうに散るものも散らし人々の関心から外れた葉桜は鳥を休ませることのみに価値を担っていた。
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Us「うず」です。よろしく。 高一