犯した罪の意味が揺らぐ
米国特殊部隊の動向を窺いつつ、作戦は翌日決行することに決まった。
ダルタンは狭く静かな寝室へと案内される。
彼はベッドだけが置かれた薄灰色の室内を見回し、ゆっくりと息を吐き出した。
明かりを付けたままベッドの上に寝ころび、ダルタンは目を瞑る。縋るように、逃避するように、瞼の裏でリオラとの思い出を辿った。
目元に腕を押し当て、透き通る血潮の色を紅い星空に見立てる。そしてリオラが夢を語った時のことを思い出した。平和な田舎町で、一緒に小さな雑貨屋を営もうと、リオラは本気で提案していた。いつしかこれが兄妹の夢になっていた。
しかし、そうするには余りにも、自分の手は血で汚れ過ぎたと、ダルタンは悲痛な現実と向き合う。
自らの腹部に罪を刻み始めたのは、この罪悪感を和らげるためだった。
大きな戦いを前にしてこんな思いを抱くのはどうしてなのかと、ダルタンは不思議に思う。
寝付けぬ余り体を起こすと、小さなノックが聞こえてきた。
「私だ」
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カテゴリー: SF
投稿日時: 2022/1/28 12:55
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
アバディーン・アンガス@創作アカ
ローファンタジーや一風変わった雰囲気の作品が大好物。
主にダークファンタジーとかサイバーパンクとか、好きな要素をごった煮した作品を鋭意執筆中です。
「好きじゃないけど面白い」と言われる作品を目指しています。
合間に書いた短編を気ままに投稿していく予定です。