犯した罪の意味が揺らぐ

 米国特殊部隊の動向を窺いつつ、作戦は翌日決行することに決まった。  ダルタンは狭く静かな寝室へと案内される。  彼はベッドだけが置かれた薄灰色の室内を見回し、ゆっくりと息を吐き出した。  明かりを付けたままベッドの上に寝ころび、ダルタンは目を瞑る。縋るように、逃避するように、瞼の裏でリオラとの思い出を辿った。  目元に腕を押し当て、透き通る血潮の色を紅い星空に見立てる。そしてリオラが夢を語った時のことを思い出した。平和な田舎町で、一緒に小さな雑貨屋を営もうと、リオラは本気で提案していた。いつしかこれが兄妹の夢になっていた。  しかし、そうするには余りにも、自分の手は血で汚れ過ぎたと、ダルタンは悲痛な現実と向き合う。  自らの腹部に罪を刻み始めたのは、この罪悪感を和らげるためだった。  大きな戦いを前にしてこんな思いを抱くのはどうしてなのかと、ダルタンは不思議に思う。  寝付けぬ余り体を起こすと、小さなノックが聞こえてきた。 「私だ」
アバディーン・アンガス@創作アカ
ローファンタジーや一風変わった雰囲気の作品が大好物。 主にダークファンタジーとかサイバーパンクとか、好きな要素をごった煮した作品を鋭意執筆中です。 「好きじゃないけど面白い」と言われる作品を目指しています。 合間に書いた短編を気ままに投稿していく予定です。