一千年の恨みを晴らす時

一千年の恨みを晴らす時
妙に辛気臭くて、ドス黒い所だった。みんな、取り憑かれたようにある人物への憎しみを唱えた。 「桃太郎を許すな!」 最初はそんなこと無かったのかもしれない。そうは言っても、俺の死んだひいひいひいひいひいひいひいひいひいお婆ちゃんが若かったくらいの時代だ。過去過ぎて、想像もつかない。いつの間にか、みんなそうなってた。俺もなんと無く、そう生きている。だって、桃太郎を許すなと、教わったんだから。 俺は所謂鬼だ。でも、元からツノがあったわけじゃないし、犬歯が尖っているのも後からだった。最初は、普通の人間だった。或いは、鬼になる前だったのかもしれない。でも、大して変わらなかったと思う。今から凡そ千年前、熟れた桃を食して若返った老夫婦の間に産まれたのが、桃太郎だ。子供を望めなかった老夫婦は喜んで育てた。そうして、桃太郎が十二になった頃、俺の先祖を意識し始めたらしい。俺の先祖は、ただの窃盗を働く人間だった。彼らは明日の食いもんに困っていた。明日着るもんに困っていた。今日の寝床に困っていた。だから盗むしかなかった。仕方なかった。そう言って逃げるつもりはない。我らが先祖は、生き残るためとはいえ、やり過ぎたのだ。夜にこっそり忍び込んで金品や服、食事を盗み、バレれば軽く怪我を負わせる。それで時には誤って殺してしまったこともあった。つまり、桃太郎が俺らの先祖を警戒し始めたのは、いよいよ桃太郎の村にも、我らが先祖の魔の手が迫っていたからだ。それを知らせたのは、トンビと名乗る細身の男だった。腕の太さなんかは、桃太郎より二回りほど細い。そんな男からの忠告だった。 「こんにちは。トンビと申します。」 「こんな粗末な家に何用ですか?」 「おや、奥様。私はお宅の坊に用があるのです。」 「お呼びに預かりました。桃太郎でございまする。」 「桃太郎や、今月の最後の週に鬼たちがやってきます。この村を守れるのは、貴方しかおりません。私が頼みにやってきたのは、こういう訳です。」 「なるほど。して、鬼というのは?まさか伝承の妖ではあるまいな。」
あいびぃ
あいびぃ
初めまして、あいびぃです! 見つけてくれてありがとう♪ 私自身、生粋のアニオタ・漫画オタなのでファンタジーが多めになってます…多分。 詳しいことは「自己紹介」にて! まだまだ若輩者なので、応援よろしくお願いします! ※❤︎&コメはめちゃくちゃ喜びますので、私を喜ばせたい方は是非! 私の事が嫌いな方はオススメしません。