わたしのR

わたしのR
 『ピシナム』に勤めているなかで、半年を過ぎても忘れられないことは、溢れかえるほどあり、そしてそのほとんどは『彼女』のことだった。  『彼女』は僕のことなど覚えているはずもないのに、それでも一向にかまわなかった。あるいは、それが愛情なのではないかとすら思った。  僕は『彼女』に名前を訊かなかったし、『彼女』も名前を告げなかった。  だから勝手に『彼女』のことを『R』と呼んでいた。そういう感じの名前をしてそうだったから。  僕が初めてRを目にしたのは、『ピシナム』に勤め始めてまだ一カ月目くらいのころだ。
久々原仁介
久々原仁介
ただ、僕を見てくれ。 この弱い、僕を