二十七、家族

二十七、家族
 十二月、師走に入ると街はとても忙しく、この大きな商店街は特に賑やかに浮き足立っていた。それぞれの店頭には大小様々なクリスマスツリーが飾られ、華やかにその照明をチカチカと光らせている。それよりも更に目立つのは『SALE』という赤い大きな文字だった。その周りには少なからず人集りが出来ていて、それぞれに活気付いていた。  私は昨日、一つの決断をした。それは航平さんに私の写真集の出版を承諾するという事だった。私にとって、それはとても大きな決断だった。悩みに悩んで決断をした。その間、彼も航平さんも、誰も私にその話しを持ち掛けては来なかったし、私もまた誰にも相談する事は無かった。  以前の私であれば直ぐに誰かに意見を求めていただろう。だが今の私は違った。自分で決断を出さねばならない事が何であるのかが分かっていた。それは後悔した時に誰かを責める事がないように、ちゃんと自責を負う為に、だった。今朝、彼の店の開店準備を手伝い、その合間にメールを打った。夕方の商店街の賑わい等は、今の私には全く他人事だった。何故ならこの決断が自分にとって正しいものであるのかどうなのかに、私の心はまだ不安を捨て切れずにいたからだ。けれどももうグダグダと悩み続けるのも嫌だった。  いつの間にか彼の店の前にいた。私は自転車を停め、扉の前で大きく深呼吸をした。敢えて意識して口角を上げ笑顔を作った。 「ただいま。」  カウンターに立つ彼と直ぐに目が合う。彼はいつもの優しい笑顔で「おかえり」と出迎えてくれた。店は然程混んではいなかった。彼に上に居るから、とだけ告げ、私は二階に上がりキッチンに立った。  上着を脱ぐのも億劫な程、私は急いで料理に取り掛かった。料理に没頭する事で無心になれた。私は敢えて時間に追われる時の様に動きに無駄がないよう、両手を働かせながら頭の中をその思考でいっぱいにした。そうやって、私は下拵えを一気に終わらせた。  ふっと力が抜けると、きちんと料理をするという事には歓びがある、と改めて思う。ちゃんと手間を惜しまず手を掛けて作ると美味しさも増し見栄えも良くなる。誰かの為に作るのならその歓びは更に倍増する。私は美味しいと微笑む彼の顔を思い浮かべ嬉しくなった。  店に降りようと鉄製の階段に一歩足を乗せると同時に、階下の喧騒が耳に入ってくる。店はいつの間にかかなり混んでいる様だ。私は屈み込み、店内を窺いながら階段を降りた。店の中央の数台のテーブルは、ほぼ満席だ。彼はカウンターで直ぐ私に気付き、手元の書類を一箇所にまとめ私を迎えた。 「構わず続けてね。」
アナ.
アナ.
伝えたい思いがあります。 沢山の方々に届きますように。