もしもし、おつきさま
きみが、わたしに触れたとき。
それが寒い冬でほんとうによかった。
きみの、体温がよくわかりますから。
わたしが、錆びた金具の身であってよかった。
夏、灼熱の太陽に溶けようとも。
きみの温度が、この身によく伝わるのですから。
それは、両手の指と腕を合わせた数よりもっとずっと前のことでした。長身の男と、柔らかな栗色をした髪の女性が、その部屋に住むようになりました。その女性は身重らしく、すこし大きな椅子に座って、よく何かを書きつけていました。夜の幕が被さるころ、男はその部屋に帰り、穏やかな表情で何か彼女に話しかけていました。わたくしがなぜ、そのようなことを詳しく知っているのかというと、わたくしからよく見える部屋だったからなのです。わたくしの立つ建物と隣の建物はともに、少し大きな集合住宅で、それはそれは賑やかな優しい場所でした。
しばらく経ったころです。長身の男がまだ出かけているころ、彼女が産気づきました。ひどく、苦しそうに唸っており、わたくしの耳にも届くほどの声の大きさでした。その声を聞きつけ、他の住人たちが彼女のもとに駆けつけ、かつて産婆をしていたという老婆が、赤子を無事にとりあげました。
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カテゴリー: お題
投稿日時: 2026/3/15 8:49
最終編集日時: 2026/3/15 9:23
歩道橋
はじめまして。