春つぐもの

春つぐもの
 その瞬間、色のない冬の景色の中に、名前も知らない小さな花を見つけた気がした。  さっきまでの教室の喧騒がどこか遠くなって、自分の周りだけがまるで静寂に包まれてしまったような感覚になる。  その半径一メートルにも満たない静寂の中で、彼女の声は静かな存在感を放っていた。 「おい、ヒョウ。聞いてんのか」  机を挟んで向かい合った光希(ミツキ)が、箸を持った手で氷(ヒョウ)の注意を引こうとする。  昼の放送が終わってしまうと、氷はいつの間にかまた教室の喧騒の中に戻っていた。 「聞いてるから、箸を振り回すな」  光希をたしなめ、再び冷たい弁当を食べる手を動かす。 「じゃあ話してくれるな」
あまもよい
あまもよい
 真夜中の通知ごめんなさい。