トルニタラナイ①

トルニタラナイ①
 白く清潔なその部屋は、天井が高く、蛍光灯の白い光が壁に反射して眩しかった。  中央付近に置かれた腰高の台に乗せられた棺。目の前の、この扉が開けば、もう母の姿は二度と見る事はない。 こんなにしっかり顔を見たのは、いつぶりだろうか。もしかしたら、初めてかもしれない。  _______母が死んだ。  破天荒で自由な人だった。 小柄だがスタイルが良く、歳より何倍も若く見える人で、驚くほど社交的だった。結婚をせず俺を産み、育て方は無鉄砲というのか、感情的で怒ると口と手が両方出るタイプで、まぁよく叩かれた。 我儘で突発的な行動が多く、待つ事が苦手で待たせる事は得意で、よく振り回された。誰彼構わず面倒見が良くて、料理が上手くて、心配性過ぎて放っておけないくせに、面倒臭いが口癖の、スマホが圏外並みに繋がらない母。
DORRY
DORRY
思いつきのストーリーを書いています。記録用でもあります。 恋愛、BL、家族、友情、テーマはいろいろです。