イヤホンの向こう側

イヤホンの向こう側
教室の隅。廊下側の一番後ろに座っているあの子は、誰とも話さず、目も合わせない。まるで透明人間のように、ひっそりといる。 昼休み、手にした弁当箱を軽く揺らしながら笑い声を交わし、購買へ向かう足音や会話が壁にまで染み込むように広がっていた。 けど、あの子はいつも机に顔を伏せて、イヤホンをしている。 誰とも交わらず、ひとりだけ時間の流れが違っているようだった。 だから、私が話しかけようとしても、あの子がそれを望んでいないように感じてしまう。 教室の隅で、笑い声にまぎれてその子の悪口が聞こえてくる。 「授業中ずっと寝てるとか、ナマケモノじゃん」 「てか顔もナマケモノにしか見えないんだけど、ウケる」 本気で言ってるんじゃない。笑いの種として、ただ軽くいじっているだけだとわかっている。けど、もし、あの子に聞こえていたら。聞こえないふりをして、我慢していたのかもしれない。私たちには見えないだけで、あの子の心は静かに泣いていたのかもしれない。そんなことを考えていくうちに、胸の奥がじわじわと熱くなる。でも、私は知らないふりをしてしまった。多分、他の誰も。
之助
之助
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