イヤホンの向こう側
教室の隅。廊下側の一番後ろに座っているあの子は、誰とも話さず、目も合わせない。まるで透明人間のように、ひっそりといる。
昼休み、手にした弁当箱を軽く揺らしながら笑い声を交わし、購買へ向かう足音や会話が壁にまで染み込むように広がっていた。
けど、あの子はいつも机に顔を伏せて、イヤホンをしている。
誰とも交わらず、ひとりだけ時間の流れが違っているようだった。
だから、私が話しかけようとしても、あの子がそれを望んでいないように感じてしまう。
教室の隅で、笑い声にまぎれてその子の悪口が聞こえてくる。
「授業中ずっと寝てるとか、ナマケモノじゃん」
「てか顔もナマケモノにしか見えないんだけど、ウケる」
本気で言ってるんじゃない。笑いの種として、ただ軽くいじっているだけだとわかっている。けど、もし、あの子に聞こえていたら。聞こえないふりをして、我慢していたのかもしれない。私たちには見えないだけで、あの子の心は静かに泣いていたのかもしれない。そんなことを考えていくうちに、胸の奥がじわじわと熱くなる。でも、私は知らないふりをしてしまった。多分、他の誰も。
0
閲覧数: 42
文字数: 1092
カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2025/6/30 1:40
最終編集日時: 2025/7/3 20:33
之助
こんにちは!学生です。
気軽に読んで頂けたら嬉しいです😌🍀
色々なジャンルに挑戦したいと思ってます!!
いいね、コメント、フォローめちゃ嬉しいです💖
リクエスト等があればぜひ🙏✨