左右の扉
このまま眠れたらいいのになぁ……。
腕枕をしてもらいながら、私はこのところずっとそう思う。汗をかいた彼の肌の匂いがとても心地よい。
あと一時間くらいしたらいなくなってしまうが、仕方がないこととは諦めている。
好きになったのは私の方だ。
田舎から上京し、大学を卒業して入社一年目。入って最初の仕事で、発注書の桁を間違えるという決して小さくはないミスをした。頭の中が真っ白になってしまった私だったが、懸命になってリカバリをしてくれたのが、秋山武志。彼だった。
発注先に連絡し、作り直した発注書を持って、一緒に取引先まで出向いて頭を下げてくれた。
「よくあることだから。でも、気をつけてね」
部長にこっぴどく叱られた私を、陰で優しくなぐさめてくれもした。
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文字数: 6920
カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2021/9/2 15:59
最終編集日時: 2021/9/2 16:11
べるきす
文芸短編小説をメインにアップしております。
なにかを感じ取っていただける作品を目指して^_^
もしかしたら対象年齢少し高めで、ライトではないかと思いますが、ご興味をお持ちいただけましたら幸いです☺️
名刺がわりの作品としては「変愛」を。
もしご興味いただけましたら、少々長いですが「This Land is Your Land」を読んでいただければ幸いです。