3.青年の話

3.青年の話
 濁った深夜に降り積もる雪によく似た孤独と寂寥。彼や彼女との瑞々しい記憶の上にも降り積り、呼吸を奪って思い出に変えてしまう。  一説によればこの孤独と寂寥は、満月から新月にかけて少しずつ削られる月であるという。 ———  これはかつて月を削る仕事をしていたという青年から聞いた話だ。削った月の欠片をランタンに詰めていたそうだ。  後に彼は、恋をすることでその辛く悲しい仕事をやめることができたのだと、嬉しそうに語った。
.sei(セイ)
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