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2 件の小説二頭の熊が出没しました
「続いてのニュースです。今日未明、◯◯県××市の住宅街に、二頭のクマが出没しました。クマは現在も捕えられておらず、住宅街に留まっている可能性が高いとみられます。近隣の方は十分に警戒をしてください。」とニュースが報じられている。 私はテレビ画面に顔を近付ける。 ニュースの内容は、イマイチ頭に入ってこない。二頭のクマの写真が画面に映し出されていることは分かるのだが。 窓の外を見ると、息子がこちらを見ている。 お母さん、そろそろさんぽにいこうよと。 はいはい、ちょっと待ってね。 あなた、手ぶらで出かけるつもりなの? ちゃんと食べるものを持っていかなきゃ、お腹が空いちゃうわよ。 もうごはんの準備は出来ているから、あとはあなたが食べやすい大きさにするだけだからね。 もう少しだけ待ってね。 息子は変わらずこちらを見ている。 その無垢な目で、私の支度の遅さを責めている。 準備が出来たわ。そろそろ出かけましょうか。 私たちは家を出た。 ちょうど季節の変わり目だった。 人々が空気の冷たさを、涼しいという言葉ではなく、肌寒いという言葉を用いるようになる頃だった。 コラ、そんなところに座り込まないの。 早く行くわよ。 息子が歩くのに疲れてしまい、道路にへたり込んでいるのを振り返りながら、私は歩を進める。 ふと前を向くと、車のナンバープレートが目の前にあった。 危ないじゃない、もうすぐでぶつかるところだったわ。誰がこんなところにこんなものを止めるのよ。 私は車を避ける。 すると、車の陰に人が倒れている。 周りには誰もいない。 私は動揺を隠せない。 なんでこんなところに人が倒れているの。 こういう時は、どうしたらいいのかしら。 助けを呼ぶべきかしら。 それとも私がどこかへ運ぶべきかしら。 私は生来、臆病なのだ。 こういう時にどうすればいいか、さっぱりと言っていいほど分からなかった。 息子が私の横に来る。 息子は、動揺していない。状況を正しく理解できていないのだ。ただただ、倒れている人に顔を近付け、何が起きているのかをこの子なりに理解しようとしている。 私が動かなければ。私が決めなければ。 そうよ、決めたわ。一旦お家に連れて帰りましょうか。 そうよ、それが一番よ。 だって、ここで私が何か出来るわけでもなければ、周りには助けてくれそうな誰かもいない訳だし。 私は息子に問いかける。 私が頭の方を持つから、あなたは足の方を持ってくれるかしら。 2人で分けっこして持った方が、1人で持つよりずっと楽でしょう? そうして私たちは家に帰った。 人が倒れていた。その人を家に運んで帰った。 それ以外はいつもと何一つ変わらない、平凡な一日だった。 ********************************** 「続いてのニュースです。昨日、◯◯県××市の住宅街に出没していた二頭のクマが、先ほど捕獲されました。クマは、民家に侵入し、1人で留守番をしていた5歳の少年を襲いました。現場に、少年の死体が見当たらなかったことから、クマは少年を食糧としたのではないかと推測されます。その後、捜索隊がクマの巣穴を突き止め、クマ二頭を射殺。クマの巣穴からは、××市在住の女性(67歳)の遺体が発見されました。遺体は腹部を食いちぎられ、上半身と下半身が分かれている状態で発見されたとのことです。なお、現場にいた人の証言によると、周囲にいた人はクマの姿を見た瞬間、一目散に逃げ出したが、その女性は死んだフリをしてしまった。 クマは女性が動かないことを確認した後、女性の腹部を噛みちぎり、そのまま胴体と下半身を持ち去ったとのことです。」
自己紹介を
みなさま、はじめまして。 私は、25歳です。 大学では日本で4年間、英国で2年間、法学を学んで過ごしました。 読書だけでなく、美術鑑賞や映画鑑賞、漫画、アニメなどなど、趣味は比較的多いです。(ちなみに、18歳までは本なんぞ一冊も読まないサッカー小僧でした) 日々の気持ちの整理や、ちょっとしたリラックスの手段として、物書きをしてみたいと思います。 自分の書いた物語がどなたかに読んでいただけることや、皆様が書かれた物語を読ませていただくことを、とても楽しみにしています。