ユエ
8 件の小説ユエ
言葉足らずな部分がありますがフォロー、コメントして頂けると励みになります 哲学的な物語が多いかもしれません 低頻度ではありますが自分自身に置き換え読んで、考えて下さると嬉しいです!
八つのカケラ 四頭目
これは長い旅の一章に過ぎません 前回のお話に目を通していただけると幸いです 「……ねえ」 ナツが、校舎の奥を見つめながら言った。 「この学校には、もう一人いるんじゃないかな」 「ああ」 ユエは短く頷いた。 「紋章が、そう言ってる」 四人の紋章が、同時に淡く光った。 その時だった。 「リョクーーーー!!」 遠くから、校舎中に響き渡るような声が聞こえてきた。 リョクの眉間に、深いしわが寄る。 「……来た」 「誰だ?」 ユエが尋ねる。 「……同じ学校の奴」 「それだけじゃ分かんないって!」 カロンが身を乗り出した。 「友達? 知り合い? それとも、追いかけてくる敵!?」 「……全部違う」 「じゃあ何なんだよ!?」 リョクが答える前に、廊下の角から一人の少女が飛び出してきた。 「リョクいたーー!!」 「うるさい」 「開口一番それ!?」 少女は腰に手を当て、橙色の瞳でリョクを睨みつけた。 「昨日、いきなり帰るから探したんだからね! 先生にも聞いたし、校門で待ってたし、もしかして何かに巻き込まれたのかと思ったんだから!」 「……大げさ」 「大げさじゃない! 何も言わずに消えたら、普通は心配するでしょ!」 リョクは視線を逸らした。 「……悪かった」 「えっ」 少女が目を丸くする。 「素直に謝った……?」 「そこまで驚くことか」 「だって、いつもは『別に』とか『知らない』とかしか言わないじゃん!」 「……余計なことを言うな」 そのやり取りを見ていたカロンが、楽しそうに笑った。 「なんだ、リョクってちゃんと謝れるんじゃん!」 「……黙れ」 「ほら、今のもいつものリョクだ!」 ナツが小さく笑う。 「二人は、ずいぶん仲がいいんだね」 「仲よくない!」 少女とリョクの声が重なった。 「……息ぴったり」 ナツが呟くと、カロンが吹き出した。 「やっぱり仲いいじゃん!」 「だから違うって!」 少女はそこで、ようやくユエたちに気づいた。 「……あれ? この人たちは誰?」 少女がリョクを見る。 「まさか、知らない人を連れてきたの?」 「……知らない人ではない」 「じゃあ、どういう人?」 「……仲間」 リョクがそう言うと、少女は目を見開いた。 「仲間?」 ユエが一歩前に出る。 「俺たちは、八つの光を探している。リョクも、その一つだ」 「八つの光……?」 ナツが続ける。 「君も、同じ夢を見ていないかな。八つの光が現れる夢を」 少女の表情が変わった。 「……見た」 彼女は右手を胸元に引き寄せる。 「赤い光と、青い光と、黄色い光。それから緑の光……」 その瞳が揺れた。 「最後に、橙色の光が出てきた」 次の瞬間、少女の右手がまばゆく輝いた。 「……!」 橙色の紋章が浮かび上がる。 「オレンジだ!」 カロンが勢いよく叫んだ。 「これで五人目! すごいな、どんどん集まってくる!」 「声が大きい」 ユエがたしなめる。 「でも、嬉しいだろ?」 「……まあな」 ユエが答えると、カロンは満足そうに笑った。 その直後、ユエ、ナツ、カロン、リョクの紋章も一斉に輝き始めた。 「な、何これ!?」 少女が慌てて右手を振る。 「ちょっと、消えないんだけど!」 「落ち着いて」 ナツが穏やかに声をかける。 「危険なものではないと思う」 「本当に!? リョク、何か知ってる!?」 「……僕に聞くな」 「知ってそうな顔してるじゃん!」 「どんな顔だ」 ユエが少女に尋ねる。 「君も、あの夢を見たんだな?」 「うん。何度も見た」 少女は光る紋章を見つめた。 「でも、夢の意味なんて分からなかった。ただ、ずっと誰かを探してる気がして……」 「俺たちも同じだ」 ユエが言った。 「だから、残りのカケラを探している」 「カケラ?」 少女が首を傾げる。 「俺たちが勝手にそう呼んでるんだ」 カロンが胸を張った。 「八つの光を持つ仲間のこと!」 「なるほど……」 少女は五人を見回した。 「じゃあ、私もそのカケラってこと?」 「そういうことだな」 ユエが頷く。 少女は少しも迷わず、にっと笑った。 「だったら、私も行く!」 「決めるの早っ!」 カロンが目を丸くする。 「だって、面白そうじゃん! それに、ずっと探してた相手が見つかるかもしれないんでしょ?」 「危険かもしれないんだぞ?」 ユエが釘を刺す。 「それでも?」 「もちろん!」 少女は即答した。 「危険だからって、見つけたものを放っておくなんてつまらないじゃん!」 「……理由がミカらしい」 リョクが呟く。 「何よ、それ」 「褒めてない」 「じゃあ、褒めてるってことね!」 「……どうしてそうなる」 少女は楽しそうに笑った。 「私、ミカ! よろしく!」 「俺はユエ。よろしくな」 「ナツです。よろしく」 「俺はカロン! よろしく、ミカ!」 「……リョク」 「知ってる」 ミカは即答した。 「同じ学校なんだから」 「……そうだったな」 「忘れてたの!?」 「忘れてない」 「なら、もっとちゃんと返事してよ!」 リョクが小さくため息をつく。 ナツはそんな二人を見て、柔らかく微笑んだ。 「やっぱり、二人は仲がいいね」 「だから違うって!」 ミカが叫ぶ。 「……違う」 リョクも続けた。 「でも、息はぴったりだな!」 カロンが笑う。 「カロン、君は少し黙っていようか」 ユエが言うと、カロンは口を閉じた。 しかし、数秒もしないうちにまた笑い始めた。 その時。 五つの紋章が、一斉に強く輝いた。 赤。 青。 黄色。 緑。 橙。 五つの光が空へ伸び、一本の道を作っていく。 「……五つ」 ナツが静かに呟いた。 「あと三つだな!」 カロンが拳を握る。 「この調子で、すぐに全部集めようぜ!」 「急ぎすぎるな」 ユエが光の道を見つめた。 「何が待っているか分からない。慎重に進む」 「慎重に、でも楽しくね!」 ミカが付け加える。 「楽しいかどうかは関係ない」 リョクが言った。 「目的を果たすことが大事」 「でも、楽しい方が頑張れるでしょ?」 「……君はいつもそうだな」 「リョクが難しく考えすぎなの!」 「はぁ」 リョクは呆れたように息を吐いた。 けれど、その表情はほんの少しだけ柔らかかった。 ユエは五人を見渡した。 最初は、たった一人だった。 そこにナツが加わり、カロンが加わった。 そして、リョク。 今、ミカが加わった。 五人になった。 「……行こう」 ユエが言った。 「次のカケラを探しに」 「うん」 ナツが頷く。 「行こう!」 カロンが声を上げる。 「面白くなってきたね!」 ミカが笑う。 「……騒がしくなった」 リョクが呟いた。 「それって、悪い意味?」 ミカが尋ねる。 「……まだ分からない」 「じゃあ、いい意味にしてみせる!」 ミカはそう言って、光の道へ駆け出した。 「おい、勝手に先に行くな!」 ユエが追いかける。 「待って!」 ナツとカロンも続く。 リョクは一度だけ、背後の校舎を振り返った。 「……本当に、騒がしい」 そう呟きながらも、彼も四人の後を追った。 赤。 青。 黄色。 緑。 橙。 五つの光が、未来へ続いていく。 その先に待っているのが、残り三つの出会いだとは、まだ誰も知らない。 そして。 その五つの光を―― 遠く離れた場所から見つめる黒い影があった。 「……五つ」 影が呟く。 「あと三つ」 静かな笑い声が響く。 ――集まれ。 その言葉の意味を、五人はまだ知らない。
8つのカケラ 三頭目
この物語は前の話がございます。ぜひそちらもご覧になってからお読みください ユエ、ナツ、カロン。 三人になった彼らは、赤、青、黄色の光が示す道を歩いていた。 「なあ」 カロンが歩きながら口を開く。 「俺たちって、あと五人探すんだよな?」 「ああ」 「じゃあさ!」 カロンがユエの肩を掴む。 「残りの五人、どんな奴だと思う!?」 「知るか」 「即答!?」 その隣で、ナツが小さく笑った。 「……でも、僕も少し気になる」 「だろ!?」 「お前ら、気楽だな……」 ユエはため息をついた。 その時だった。 赤い紋章が光る。 「……!」 続いて、青と黄色の紋章も輝き始めた。 光は三人の前方へ伸びていく。 「まただ!」 カロンが嬉しそうに叫ぶ。 三人は光を追った。 やがて―― 大きな建物が見えてきた。 「……学校?」 ナツが呟く。 そこには、正直言えば古くボロい学校があった。 「なんで学校なんだ?」 ユエが首を傾げる。 しかし、紋章の光は間違いなく校舎の中へ続いている。 「行ってみよう!」 カロンが先に走り出した。 「おい、勝手に行くな!」 ユエとナツも後を追う。 ──────── 校舎の奥。 人気のない廊下。 そこだけ、妙に静かだった。 「……ここだ」 ユエが立ち止まる。 扉の向こうから―― カサ……。 カサカサ……。 何かが擦れる音がする。 「……誰かいるの?」 ナツが恐る恐る扉を開ける。 「……!」 三人は言葉を失った。 教室いっぱいに、植物が生い茂っていた。 机も椅子も見えないほどの蔓。 窓からは巨大な葉が伸びている。 その中心に、一人の少年が立っていた。 緑色の瞳。 そして―― 右手に、緑色の紋章。 「……誰」 少年がこちらを見る。 「勝手に入ってくるな」 「ご、ごめん!」 カロンが慌てて頭を下げる。 「俺たち怪しい者じゃないから!」 「……十分怪しい」 「えぇ!?」 少年は三人をじっと見つめる。 特に、ユエの赤い瞳。 ナツの青い瞳。 カロンの黄色い瞳。 「……その目」 「え?」 「……紋章も」 少年の表情が少し変わった。 ユエが尋ねる。 「お前も……同じ夢を見たのか?」 「……」 少年は黙った。 そして、小さく頷く。 「……見た」 ユエたちの紋章が光る。 少年の緑の紋章も―― 淡く輝いた。 「……やっぱり」 カロンが嬉しそうに笑う。 「君も“カケラ”なんだ!」 「……カケラ?」 「俺たちが勝手にそう呼んでるだけだけど!」 少年は少し考えたあと、 「……リョク」 と名乗った。 「僕の名前」 「俺はユエ」 「ナツ……」 「カロン!」 カロンが元気よく手を上げる。 リョクは三人を見る。 「……僕も、一緒に行くの?」 「え?」 「その……八つを探すっていうの」 ユエは頷いた。 「ああ」 「……分かった」 リョクは立ち上がる。 その瞬間―― 教室中の植物が、一斉に枯れていく。 「うわ!?」 カロンが驚く。 「……行こう」 リョクは何事もなかったように教室を出た。 「いや待って! 今のすごくない!?」 「……普通」 「普通じゃないって!」 ユエは呆れながら二人を追う。 こうして―― 四人目の“カケラ”。 緑のリョクが加わった。 しかし。 彼らはまだ知らなかった。 この学校には―― もう一人、“カケラ”がいることを。
八つのカケラ 二頭目
この物語は続いていますぜひ8つのカケラ1頭目をご覧になってからお読み下さい ユエとナツが歩き始めてから、数時間。 「……なあ、ナツ」 「……何?」 「さっきからずっと同じ道じゃないか?」 「……僕もそう思ってた」 「じゃあ言えよ!」 「……言える雰囲気じゃなかった」 「なんだそれ」 ユエは呆れたようにため息をついた。 森を抜けた二人は、今度は見知らぬ街へと入っていた。 人間。 獣人。 角の生えた者。 尻尾を揺らす者。 半透明の身体をした者。 様々な種族が、当たり前のように行き交っている。 ユエはその光景を横目で眺めながら歩く。 「……人、多いな」 「そうだね」 「こういうところ、あんまり来たことない」 「……僕も」 二人とも、どこか落ち着かなかった。 そんな時だった。 ユエの右手が、突然熱くなった。 「……っ!」 袖をまくる。 赤い紋章が、強く光っている。 「まただ……」 赤い光は、街の奥へ向かって伸びている。 「ユエ」 「分かってる」 二人は光を追いかけた。 ──────── しばらく進んだ先。 そこには、小さな路地があった。 だが―― 「……なんだ?」 妙な音が聞こえる。 ドン! ガシャン! 誰かの叫び声。 「誰かいる!」 ナツが走り出す。 「おい、待て!」 ユエも後を追った。 路地を曲がった瞬間―― 「うわあああああ!!」 一人の青年が、何かから逃げるように走ってきた。 「どいてどいてどいてーー!!」 「うわっ!?」 青年はユエの横を通り過ぎ、そのまま盛大に転んだ。 「……」 「……」 ユエとナツは無言で青年を見る。 「……痛ぁ……」 黄色い瞳の青年は、地面に突っ伏したまま呟いた。 「……大丈夫?」 ナツが恐る恐る声をかける。 「大丈夫大丈夫! ちょっと転んだだけ!」 青年は何事もなかったかのように立ち上がった。 そして―― 「って、そんな場合じゃない!」 青年が後ろを振り返る。 その瞬間。 路地の奥から、巨大な妖怪が姿を現した。 「グルルル……!」 「うわ……」 ユエが一歩下がる。 妖怪は三人を見つけると、低く唸った。 「……え、これ俺のせいじゃないよ?」 青年が言う。 「どう考えてもお前のせいだろ」 「違うって!」 「じゃあ何したんだよ」 「……ちょっと、光らせた」 青年が苦笑しながら手を掲げると、掌の上で小さな光が爆ぜた。 「何を?」 「……街を」 「は?」 青年は笑った。 「いやぁ、俺、光が好きでさ!」 「そういう問題じゃない!」 妖怪が吠えた。 「グオオオオッ!!」 地面が揺れる。 ユエは反射的にナツの前へ出た。 「下がれ!」 「……でも!」 「いいから!」 妖怪が突っ込んでくる。 ユエは腕を構えた。 「……ッ!」 身体の奥が熱くなる。 赤い紋章が強く輝いた。 しかし―― ナツが叫んだ。 妖怪の爪が、ユエの身体を捉える。 「ぐっ……!」 ユエは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。 「ユエ!」 ナツの顔が青ざめる。 「……僕が……」 震える手を見る。 その時。 ナツの青い紋章が光った。 「……!」 足元から大量の水が溢れ出す。 「……止まって!」 水はまるで生き物のように動き、妖怪の足へ絡みついた。 「グッ!?」 動きが止まる。 ナツ自身も驚いていた。 「……僕が、やった……?」 「ナツ!」 ユエが立ち上がる。 「そのまま押さえろ!」 「え……?」 「できる!」 「……分かった!」 ナツが両手を前へ出す。 水がさらに大きくなる。 妖怪の身体を完全に包み込んだ。 「今だ!」 「おう!」 ユエが駆け出す。 右手の紋章が赤く輝く。 その瞬間―― ユエの身体が、一瞬だけ龍の姿へと変わった。 「――ッ!」 鋭い爪が地面を削る。 赤い瞳が妖怪を捉える。 「終わりだ!」 ユエの一撃が妖怪を吹き飛ばした。 妖怪はそのまま気を失った。 「はぁ……」 ユエは元の姿に戻る。 ナツは呆然とユエを見ていた。 「……今の」 「見るな」 「……龍?」 「忘れろ」 「……無理」 「だよな」 二人は顔を見合わせる。 そして―― 「……ふふ」 ナツが小さく笑った。 「何笑ってんだよ」 「……なんか、変だなって」 「何が?」 「僕たち、本当に何なんだろうね」 ユエは答えられなかった。 その時だった。 「……おーい!」 突然、背後から声がした。 二人が振り返る。 さっきの青年が、満面の笑みでこちらへ走ってくる。 「すっげぇ!!」 「……」 「今の見た!? 君、龍になったよね!?」 「……」 「めちゃくちゃカッコよかった!」 「……お前、怖くないのか?」 「何が?」 「龍だぞ」 「え? だって俺も普通じゃないし」 青年は自分の右手を見せた。 そこには―― 黄色い紋章。 「……!」 ユエとナツの目が見開かれる。 青年の黄色い瞳が、紋章と同じ色に輝いた。 その光を見つめながら、カロンはふと、遠い記憶を思い出していた。 幼い頃から、何度も同じ夢を見ていた。 暗い場所に、八つの光が浮かんでいる。 赤。 青。 黄色。 緑。 橙。 水色。 紫。 桃色。 その光の中心には、巨大な影があった。 八つの首を持つ、恐ろしい龍。 夢の中で、カロンはいつもその龍を見上げていた。 けれど、龍が何を言っているのかは分からない。 ただ一度だけ、はっきりと聞こえた言葉があった。 ――集まれ。 その声を聞くたび、カロンは目を覚ました。 胸の奥が熱くなり、掌には小さな光が灯っていた。 今も、その夢の続きを見ているような気がした。 目の前にいる赤い瞳の青年。 その隣にいる、青い瞳の少年。 そして、自分の黄色い瞳。 夢の中の光が、現実で繋がろうとしている。 「……やっぱり、そうなんだ」 カロンが小さく呟いた。 「何が?」 ユエが怪訝そうに尋ねる。 カロンは一瞬だけ黙り込んだ。 けれど、すぐにいつもの笑顔を浮かべる。 「ううん! なんでもない!」 青年は笑った。 「俺、カロン!」 「……」 「二人は?」 ユエはナツを見る。 ナツはユエを見る。 そしてユエが答えた。 「……ユエ」 「ナツ……」 「ユエとナツか!」 カロンは嬉しそうに笑う。 「よろしく!」 「……おう」 「よろしく……」 その瞬間。 赤。 青。 黄色。 三つの紋章が同時に輝いた。 光が空へ伸びる。 そして―― 三つの光が、一本の道へと繋がっていく。 「……まただ」 ナツが呟く。 ユエはその先を見る。 そこには、まだ見ぬ誰かへ続く光があった。 「……次がいる」 「次?」 カロンが首を傾げる。 「俺たち、あと五人探さなきゃいけないんだ」 「五人?」 カロンの顔が、一気に明るくなる。 「えっ!? 仲間探し!?」 「ああ」 「面白そう!」 カロンは迷うことなく二人の隣に並んだ。 「俺も行く!」 「……即決かよ」 「だって、こういうの楽しそうじゃん!」 ナツが少しだけ笑う。 ユエも、呆れながら笑った。 「……じゃあ、決まりだな」 三人は光の道を見る。 赤。 青。 黄。 三つの光が、まだ見ぬ未来へ伸びていた。 カロンはその光を見つめながら、胸の奥で夢の中の声を思い出していた。 ――集まれ。 その言葉の意味を、彼はまだ知らない。 ただ、目の前の二人と一緒なら、夢の続きを見つけられる気がした。 こうして―― 三人目の“カケラ”が加わった。 しかし彼らはまだ知らない。 この出会いが、後に始まる大きな旅の―― 最初の戦いだったことを。
八つのカケラ 一頭目
指を止めて下さり誠にありがとうございます 少々長い話の旅になりそうですが…お楽しみ頂けたら幸いです さてさて、突然ですが、この世界には妖の血を引く者や、耳や尻尾が生えた獣人、もちろん人間も暮らしています。 これは、そんな人々が暮らす摩訶不思議な世界のお話です 今日は、、、、十八歳の誕生日 ユエは、今日もひとりだった 祝ってくれる家族はいない そもそも、家族の顔を知らない 物心ついた頃には、家には誰もいなかった だから誕生日も、特別な日ではなかった いつも通りに起きて、いつも通りに食事をして、いつも通りに一日を終える それだけのはずだった その夜、ユエは奇妙な夢を見た 真っ暗な世界に、八つの人影が浮かんでいた。 赤 青 緑 紫 黄 オレンジ 水色 ピンク 人の形をした煙のようなものが、円を描くように並んでいる その中心には すべてを飲み込むような、真っ黒な煙 顔もない 姿もない ただ、そこに何かがいる その黒い煙が、低く響く声で言った 『八つ、揃えろ』 それだけだった 次の瞬間、世界が真っ白に染まった ――そして、ユエは目を覚ました 「……なんだ、今の」 汗をかいていた 心臓が嫌なほど速く鳴っている 夢の内容は、もうほとんど思い出せない ただ、八つの色と黒い何か そして―― 「八つ、揃えろ」 その言葉だけが、妙に頭に残っていた 「……意味わかんねぇ」 ユエはベッドから起き上がった その時だった 「……ん?」 右手の甲が、赤く光っていた 「なっ、、、」 慌てて袖をまくる そこには、生まれた時からある赤い紋章 龍の顔を思わせる、奇妙な形の紋章 普段は隠している この紋章を見られるのが嫌だった 普通の人間にはないものだから 赤い瞳も 龍に姿を変えられることも 全部、隠してきた なのに 「……光ってる?」 紋章から伸びた赤い光が、部屋の外へ向かっている まるで、何かを指し示しているように 「……行けってことか?」 当然、答えはない それでもユエには分かった この光を追え、と 理由なんて分からない 何が待っているのかも分からない けれど、十八年間何も変わらなかった自分の人生が、初めて自分から動こうとしていた 「…行ってみるか」 ユエは小さく笑った ──────── 光を追って歩き続けること、数時間 「ここ、どこだよ」 町からかなり離れた場所まで来ていた 赤い光は森の奥へ伸びている ユエはため息をつきながら進んでいく すると、森の中に小さな湖があった 「……湖?」 赤い光が、湖の中央を指している だが、そこには誰もいない 「……おかしいな」 ユエが辺りを見回した、その時 背後の茂みが、かすかに揺れた ユエは反射的に身を低くした 右手を隠していた袖をまくり、紋章を露わにする 赤い光が、鋭く明滅した 「……誰だ」 返事はない ユエは足音を殺しながら、茂みへ近づいていく その瞬間 「……誰?」 「!」 背後から声がした ユエはとっさに振り返り、相手の腕をつかんだ そこにいたのは、一人の少年だった ユエより少し年下 青みがかった髪 怯えたように見開かれた目 だが、その視線はユエの顔ではなく、つかまれた自分の腕とユエの右手を交互に見ていた 「離して……!」 「先に名乗れ」 「……っ」 少年は身を引こうとしたが、ユエの手は離れない 敵かもしれない 夢に出てきた「八つ」の一人かもしれない あるいは、紋章のことを知る誰かが自分を探していたのかもしれない ユエの頭の中で、いくつもの可能性が駆け巡る 少年もまた、ユエを警戒していた 視線が何度もユエの赤い瞳へ向かう その目に、恐怖が浮かんでいた 「……その目」 「何だよ」 「……赤い」 「だから?」 「……普通じゃない」 ユエの指に力がこもった 「お前に言われたくない」 少年の右手 そこには、青い紋章があった ユエはそれを見た瞬間、息をのんだ 少年も同じものに気づいたらしい 互いの紋章を見つめたまま、二人は動かなかった 赤と青 形は違う けれど、どちらも人間にはない光を放っている 「……お前も、それを持ってるのか」 ユエが低く尋ねる 少年はすぐには答えなかった 逃げるべきか、話すべきか迷っているようだった やがて、つかまれた腕を見下ろしながら、小さく言う 「ずっとある」 「俺もだ」 「……君も?」 その言葉に、少年の表情がわずかに変わった 驚きだった ユエも同じだった 自分以外にも紋章を持つ人間がいる それだけでも信じられないのに、目の前の少年は自分と同じ光を追ってここまで来ている 偶然にしては、重なりすぎていた ユエはようやく手を離した 少年はすぐに数歩後ずさり、腕を押さえた 「……悪い」 「……謝るんだ」 「敵かと思った」 「僕も、君が敵かと思った」 「なら、最初からそう言えよ」 「言える雰囲気じゃなかった」 少年は俯いたまま答えた その返しが妙に正直で、ユエは少しだけ目を細めた 「……名前は?」 「先に君が」 「俺はユエ」 少年はしばらく黙っていた それから、ためらいがちに口を開く 「……ナツ」 「ナツか」 「……うん」 名前を交換しただけなのに、張りつめていた空気がほんの少し緩んだ だが、警戒が消えたわけではない ナツはまだユエから距離を取っている ユエも、いつでも動けるように足の位置を変えなかった 「その赤い光」 ナツが言った 「お前も見えるのか?」 「……うん。僕のところにも、青い光が出た」 ナツが右手を掲げる 青い紋章から伸びた光は、湖の向こうへ続いていた ユエの赤い光と、同じ方向を指している 「……同じだ」 ユエの声が、思わず低くなる ナツも光を見つめていた 「僕は、誰かに追われているのかと思った」 「俺は、誰かを探せって言われたんだと思った」 「……誰かを?」 「夢を見なかったのか?」 ナツの肩がわずかに跳ねた その反応を見て、ユエは確信した 「お前も、あの夢を?」 「……たぶん」 「八つの色が出てきた?」 「うん……」 「黒い煙は?」 ナツは答えなかった 青い光を見つめたまま、唇を固く結んでいる その顔には、夢を思い出したくないという気持ちがはっきり浮かんでいた 「……『八つを揃えろ』って」 やがて、ナツは小さく呟いた 「やっぱりか」 ユエは空を見上げた 夢じゃなかった 偶然でもない 自分と同じ紋章を持ち、同じ夢を見て、同じ光に導かれた人間がいる それが嬉しいのか、怖いのか、ユエ自身にも分からなかった ただ、十八年間ずっと自分だけのものだと思っていた異常が、初めて自分だけのものではなくなった 「君は……これからどうするの?」 ナツが尋ねた 「決まってるだろ」 ユエは湖の向こうへ伸びる赤い光を見る 「八つを揃える」 ナツの表情がこわばった 「…本当に?」 「ああ」 「知らない人を探すんだよ?」 「お前だって、俺のことを知らなかっただろ」 「……そうだけど」 「それでも、ここに来た」 ナツは黙った ユエは、彼が怯えていることに気づいていた 自分だって怖い けれど、怖いからといって、何も知らないまま元の生活に戻ることはできなかった 「怖くないの?」 ナツが聞いた 「そりゃ怖いさ」 ユエは正直に答えた 「でも、ここで何もしなかったら、たぶん一生後悔する」 「……僕は、何をすればいいのか分からない」 「俺も分からない」 「じゃあ、どうしてそんなに迷わないの?」 「迷ってるさ」 ユエは自分の赤い紋章を見下ろした 「ただ、迷ってる間にも光は進んでる。だったら、追うしかないだろ」 ナツはしばらく黙っていた やがて、青い光の先を見つめる 「僕も行く」 ユエはナツを見る 「いいのか?」 「一人で戻っても、たぶん何も変わらないから」 ナツは一度、ユエから目を逸らした 「それに……君がいるなら」 言いかけて、ナツは口を閉じる ユエは聞き返さなかった 代わりに、手を差し出す ナツはその手を見つめた まだ完全には信用していない ユエも、ナツをすべて理解したわけではない それでも、二人の間には一つだけ確かな共通点があった 同じ紋章 同じ夢 同じ光 ナツは少し迷ったあと、ユエの手を握った 「……よろしく、ユエ」 「ああ。よろしくな、ナツ」 二人の紋章が、同時に光った 赤と青 それぞれの光が空へ伸び、やがて一本の道を作った ナツはその光を見上げ、わずかに目を見開いた 「……本当に、始まるんだ」 「何が?」 「分からない。でも……もう、戻れない気がする」 ユエは光の道の先を見た 「だったら、戻らなきゃいい」 ナツは少し驚いたようにユエを見る それから、ほんのわずかに笑った その笑顔は、まだ不安に揺れていた けれど、初めて会った時のような怯えだけではなかった その先には、まだ見ぬ六人がいる そして、彼ら自身も知らない この旅の先で待っているものが―― 自分たちの器だということを ユエとナツは、光の道を歩き始めた 互いを完全には信じられないまま それでも、ひとりではないという事実だけを胸に 八つの物語 その最初の一歩だった
幸
私は、いつも心配している。 明日は何が起こるんだろう。 失敗したらどうしよう。 怒られたらどうしよう。 嫌われたらどうしよう。 事故に遭ったら。 大切なものを失ったら。 考えれば考えるほど、 世界は怖いものでいっぱいになっていく。 だから私は、何度も思った。 「どうして私ばっかり」 どうしてあの人は笑っているのに、私は笑えないんだろう。 どうしてみんなは幸せそうなのに、 私はこんなにも不幸なんだろう。 ……ずっと、そう思っていた。 でも。 気づいたんだ 今日も、私は目を覚ました。 昨日の夜、 「明日なんて来なければいいのに」 なんて思っていたのに。 ちゃんと朝が来て、 ちゃんと目が覚めて、 ちゃんと布団から出た。 お腹が空いた。 喉が渇いた。 疲れた。 誰かと話した。 くだらないことで笑った。 嫌なこともあった。 泣きたくなることもあった。 心も体も沢山動いて、疲れて。 眠る。 それでも私は、今日を終えた。 そして今、 また眠ろうとしている。 明日のことは、まだ怖い。 きっと私は、 明日も心配する。 何か嫌なことが起こるかもしれない。 また「自分は不幸だ」って思うかもしれない。 それでも。 もし明日、目を覚ますことができたなら。 それだけで、 少しくらい幸せだと思ってもいいんじゃないかな。 だって―― たった24時間を積み上げて、あなたは今日まで生きて、 今ここにいて、 明日を迎える準備をしている。 それって、 本当はすごいことなんじゃない? ……ほら。 今日も目をつぶって 明日も、 起きて絶望出来たら、幸せでしょ?
私達
私には生まれた時から上に四人いた。 一人目は誰よりもニコニコしている。 転んでも笑う。失敗しても笑う。 その笑顔につられて、周りも笑う。 二人目は誰よりも怒りっぽい。 理不尽を許さない。 誰かが泣けば、一番に前へ出る。 三人目は誰よりも涙脆い。 映画でも、本でも、夕焼けでも泣く。 その涙は誰かの痛みに寄り添える。 四人目は誰よりも楽観的。 「なんとかなるよ。」 その一言だけで、空気が少し軽くなる。 皆が皆、違う。 だから綺麗だ。 だから羨ましい。 笑える人が羨ましい。 怒れる人が羨ましい。 泣ける人が羨ましい。 前を向ける人が羨ましい。 私は、どれも持っていない。 でも、不思議なことがある。 私たちはいつも五人でいるのに、 私たち以外の誰かに会ったことがない。 家はある。 朝も夜もある。 なのに窓の外には、いつも誰もいない。 それでも兄さんたちは気にしない。 「そんなものだろ。」 そう言って笑う。 私はずっと思っていた。 私たちは、どこで生きているんだろう。 ある日、世界が揺れた。 嬉しそうに笑う兄さん。 怒鳴る兄さん。 泣き崩れる兄さん。 「大丈夫。」と笑う兄さん。 個性がある彼らを見つめる私 外の世界は不思議と、私たちの意思とは関係なく変わっていく。 まるで誰かが、 私たちを動かしているみたいだった。 あぁ、気づいたよ。 私達は、自由に生きるために生まれてきたんじゃない。 1人の人間を形作るため、感情の1つとして生まれたんだ。 ようやく気づいたよ 私は嫉妬。 今日も持ち主の心の中で、誰にも知られずに役目を果たす 持ち主が、最後の息を吐くまで。 持ち主の最後を過ぎ、自由になった私達は何処へ行くのか それを知る兄弟は、まだ誰もいない
少女レイ
ああ、まただ クラスメイトの仮面を被った加害者達が地面に突っ伏している私を取り囲む。机には1つの花瓶 「私達が構ってあげてるのになんなの?」 「泣いてんじゃん」 「無反応がかっこいいとでも思ってんのかよ」 うるさいな、蹴られても何をされてももう何も感じられなかった。 ひとことを覗いては 「あの子が死んだのもお前のせいだもんね」 その声は小さく事実確認と共に洗脳の様だった、私は飛びついてぶん殴ってやりたくなった。 私の親友をいじめて殺したのはお前らだろと叫びたかった、ただ私がイジメられたく無さに彼女の机に花瓶を置いた。 彼女はイジメられ始めたが私より酷く、私へのイジメも消える事は無かった。 急にあの子を思い出した 『そっか、今行くね』 電車の滑走音が踏切の甲高い音を越した 止まらない電車の車掌の怯えた絶望の目と最後に目が合った
貴方は誰に見られてる?
ある男は会社員になり安定した職を得た そして本を読む事にした その本の内容は ある博識な子供が有名な偉人の伝記を読み成長するものだった 子供が呼んだ本の中の偉人もまた、著者であり本を愛した人間だった 本の本の本の中 貴方は誰に書かれ、誰に読まれているの?