序章「罪」
昔から、平和に暮らしたかった。
暑いから扉を開け寝ていても魔物が入ってこないような、狩りをしに出かけてもゴブリンに襲われないような、そんな平和な日常が欲しかった。
兄と共にそんな日が来るといいね、なんて言っていた思い出がどこか懐かしく感じる。
そんな兄貴も大勢のゴブリンから俺を庇って死んだ。
兄貴は双剣を握らせれば右に出るものはいない、と言われるほど双剣を知り、扱いになれ、それを誇りに思っていた。
そのことを自慢せず、周りにも優しく、俺のことも沢山可愛がってくれた。
そんな、人から尊敬され、慕われていた兄貴を俺は殺した。
「ごめんな、1人にさせちまう。」
声を振り絞って出したであろう、俺に向けた言葉は今でも鮮明に脳裏に焼き付けられ、俺の首を絞めている。
だから俺は罪滅ぼしをしなければならない、兄貴の使っていた剣を受け継ぎ1匹でも多くの魔物を地獄へ送り、俺もそこに飛び込まなければいけない。
楽しかった日常は俺のせいで二度と帰ってこない、もう二度と。