レイ
8 件の小説ピアスの数
私のピアスは今まで付き合ってきた人の数 この決まりを決めたのはいつだっただろうか そんなことを考えながら私は八個目のピアスを開ける 私はあまり感情が豊かな方ではないようだった 確かに少し感情を表すのは苦手だったが 自分ではあまり分からなかった 初めてピアスを開けたのは一人目の彼氏と別れた日だった 彼には感情がないのが気味が悪いと振られてしまった 好きだったけど別れてもそんなに悲しくはならなかった だけど分かれた痛みを感じたくてピアスを一つ開けた ピアスの痛みがある限り私はつらさを感じられた 二人目も三人目も同じような理由で別れてしまった そのたびに私はピアスを一つずつ増やしていった 皆初めはクールでかっこいいと言い寄ってきたけど 皆同じように私を振っていく だけど彼だけは違った八人目の彼は今までの人と違って おどおどしていて可愛かった 私と正反対の彼はいつも私を楽しませようとしてくれた そんな彼に私は今までの人以上に惹かれていた 楽しくてこれまで感じたことがないくらい幸せだった でもそんな幸せが崩れるのにそう時間はいらなかった 彼に突然別れようと言われた 私を楽しませる自信がないとそう言われた 優しい彼のことだ いっぱい悩んで答えを出したのだろう 彼は震えていた 私は頭が真っ白になって何も言えなかった 一人になって急に悲しさがこみあげてきた 今までで一番胸が苦しくなった こんなに苦しいなら一生知らなくてもよかったな 大好きな彼のことを忘れたくなくて 痛みを残したくて 私は八個目のピアスを開けた …でも彼との思い出は、悲しみはピアス一個じゃ足りなかった もっと苦しくて今までで一番痛かった だから私は体に大きな穴を開けた
フィクション
愛する力は強いとか奇跡を起こすとか愛は魔法だなんて言うけれど 誰がそんなこと言ったんだろう 毒で眠ったお姫様も、呪いで眠ったお姫様も 愛のキスで起きたけど それはフィクションだからでリアルではそうはいかない この世界には愛の奇跡なんて存在しない だってそうでしょう? そうじゃなきゃ私が愛したあの人は何で死んでしまったの? 愛が魔法なら、奇跡ならあの人は死ななかった 愛なんてものを信じたからあの人は死んだの 愛することがこんなに苦しいのは愛が呪いだから 違うと言うのなら彼を返して 許さない!信じない! 誰よりもこの世界を愛し、信じた彼を 返して!返してよ私の愛しい人… お願い…私に救いを 神様…
歪んださなぎ
僕のクラスには自分のことが大好きな子がいる ナルシスト?と言うのだろうか まあ、そんな子がいる その子の自分大好きってオーラはすごくて好きなものを 自分って答えるくらいの自分大好きちゃんだ それに興味がわいたけど それが理解ができなくて知りたかった ただそれだけ 知らないというのはもどかしくて 分からないというのは気持ち悪くて いろいろ調べてみたけれど、どれもピンと来なくって 理解はできるけど、それに共感できなくて その子への興味はなくなってしまった けれど その子に二度目の興味がわくのに それほど時間はいらなかった その子は避けられてもいじめられてもニコニコ笑う なぜだろう? その子は嫌われることを人一倍怖がっているのに 皆が嫌う子を演じる なぜ?矛盾する彼女を僕は理解ができない どれだけ調べても、どれだけ考えても 分からない ある日の放課後一人で教室にいる彼女を見かけた だから僕はその子に聞いたんだ 「君はどおしてそんなに自分のことが好きなんだい?」 そう聞くとその子は泣きそうな顔で言った 「だって愛されたいから」 愛されたい? なら普通にしてたほうが愛されるだろう 意味がわからない そう言うとその子は声を荒げて泣き始め 糸が切れたように話始めた 「誰も私を愛してくれないの、パパもママも友達も 愛されなきゃ生きてる意味なんてないじゃない! だから私は私を愛するの 私だけでも私を愛さなきゃ…私の価値がないもの」 なぜこんなに極端な考えなのだろうか理解ができない 「私だって私じゃない誰かに愛されたかった、でもパパもママも私より妹の方を大事にして私を愛してはくれなかった 友達だと思ってた子も私と一緒にはいてくれなかった だから…誰かを信じる愛はやめたの 私が愛されるために」 そう言う彼女をほとんどの人が理解できないだろう 僕もそう思った、でもそれと同時に いやそれ以上に彼女を愛おしいと思ったんだ 完璧な蝶になる前のこの不安定な〈さなぎ〉を一生籠の中に閉じ込めて僕だけのものにしたいと思った あぁ、この気持ちが恋…愛なんだね 愛なんて理解できないと思ってたけど 本で読んだ通り 胸が高鳴って、顔が熱い また僕は一つ理解できたんだ! 「なら、僕が君の生きる理由になろう、僕が君を愛するよ」 そう言うとその子は驚いた顔で僕を見つめた この子はまだ誰かを信じる 完璧ではない存在 あぁ、そうさ 君を愛するのは僕だけで十分 だからどうか羽化しないでおくれよ 愛しい愛しい僕のさなぎ
いいよな
ずっとあの人が羨ましかった 小学校から高校まで一緒のあの人は 元気で明るくて、みんなのヒーローのような子だった 私は持ってないようなそれを あの人は全部持ってた 運動が得意で、いつもみんなを笑わせてて クラスの中心のあの人が ずっと羨ましくて、ずっと嫌いだった 家族も仲が良さそうで、みんなが慕ってて苦労がなさそうな そんな人だった 愛想笑いと人の顔色伺ってばっかりの こんな私とも仲良くしてくれた ある日、放課後に話していたらお家の話になった 勉強をしなさいと怒られるという話を聞いた 正直それが羨ましかった 私は両親に怒られたことが、心配されたことがなかったから 外では仲良さげに振る舞っていても パパもママも私に興味なんてないから… そんなことを思っていると 「いいよなお前は恵まれてて苦労なんてなさそうで」 とそう言われた なんで…私はこんなに苦しいのに 私の方がこんなに悩んでるのに それが口に出てしまっていたようで あの人は気まずそうな顔をして帰ってしまった あの人が何で私を恵まれているというのかが分からなかった あんなに恵まれているのに何が不満なのだろうか 私は何も持ってないのに…
私の方が
ずっとあの子のことが羨ましかった 小中高と一緒のあの子は 可愛くておしとやかで、守ってあげたくなるようなそんな子だった 私にはないようなそれを あの子は全部持っていた 勉強もできて、賞状とかいっぱい貰ってて みんなの高嶺の花って感じのあの子が ずっと羨ましくて、ずっと嫌いだった 親と仲良さげで、みんなのあこがれで 苦労なんて何にも知らないような そんな子だった 成績悪くていつも先生怒らせてるようなこんな私とも 仲良くしてくれた ある日、放課後話してたら家の話になった 親が勉強しろとかうるさくて、みたいなことを愚痴ってて それを共感できなさそうに聞いているのにイラっときて つい、いいよなお前は恵まれてて苦労なんてなさそうで なんてことを言ってしまった 言い過ぎたと思い謝ろうとすると あの子が何かを言っているのが分かった 小さすぎてあまり聞こえなかったが 「私の方が…」 そう聞こえた気がした あまりに思いつめたような顔をしていたから気まずくなって 帰ってしまった あの子がなぜあんな顔をするのか私には理解ができなかった あんなに恵まれているのに何が不満なのだろうか 私は何も持ってないのに…
ずっと一緒
私ね、ずっとずうっと暗い所にいたの 暗くてさみしくてあぁ、私ここで一生居るんだなって思ってた でも、でもねあの人が私を連れ出してくれたの 私を見て嬉しそうに大事に大事に抱えてくれた こんな気持ち初めてだったの 胸が熱くなって私初めて生きてるって感じたの あの人はね私のこと優しく扱ってくれたの 私より綺麗で賢い子がいても私だけを見てくれた お話したり、一緒にゲームしたり、お絵かきしたり とっても楽しかった ずっと一緒に居られると思ってたの でも、私が上手にお話しできなくなって、一緒にゲームができなくなった時からね あの人は私を困った目で見つめるようになったの それでも私頑張ったのよ 前みたいにお話したくて、大事にしてほしくて でも、ダメだった やっぱり私より新しい子には勝てなかった あの人は私を 私みたいな子がいっぱいいるところに連れて行ったの ショックだった ずっと一緒だと思ってたから そのあとのことはあんまり覚えてないの 気が付いたら他の子と同じように並べられてたから でもね、きっと何か私を手放さなきゃいけないわけがあったのよ あの人は私を迎えに来てくれるわ だから私はいつまでもあの人を待ち続けるの、あの人が私をあの時みたいに連れ出してくれるその時まで、何年も何年もずっと待つわ… 「あれ?お前スマホ新しくしたの?」 「そう、なんか壊れちゃってさ~ 調べてもバグって出てこないし、ゲームもできなくてさ やっぱ、新しいのいいわ、画質きれいだし早いし 変えてよかったわ~」 「ははっ、それな~」 『ははは…はは…』
無能の王
大きく炎があがる小さな別荘の中で私はいまその命を散らそうとしていた ゴウゴウと炎の音が響きわたる 逃げなければ死ぬがもう私には逃げる気力はおろか声を出す気力すらも残っていない 死にたくないとは思う しかしこれが運命なのだと受け入れている自分もいる この国に無能な王などいらない 王太子に…一番に生まれただけで王になる無能だとよく噂されていた つい先日も私は大臣を辞めさせたばかりだ 大臣は有能だと評判だったので皆の不満を買ったのだろう 腹違いの弟も昔はよく一緒に遊んでいたのだが王妃に止められここ10年は顔も合わせていなかった つい先日顔を合わせた時には笑顔などなく昔の面影は消えていた おそらく王妃に王になれと教育を受けていたのだろう 王妃は私のことをよく無能だなんだと嘲笑っていた 昔から皆が私を嫌っていた 王である父も義母も使用人でさえも皆いろいろな目を向けてきた まだ小さい子供だった私は訳も分からず向けられるその目が恐怖以外の何物でもなかった この国の者は皆私に死んでもらったほうが都合がよいのだろうな この国を守るそれが母と交わした一番大切な使命だった 私は…この国を愛していた 今は亡き母上が愛したこの国を民をそのすべてを愛していた だが、母亡き今…私がこの国に執着する理由は果たしてあるのだろうか 牙を向ける国をこの人間たちを果たして守る必要はあるのだろうか いや…もういいか こいつらの都合なんざ関係ない!! 暴君だ?笑わせるな この国を、ハイベルンを守っていたのは私だ!お前らじゃない 無能はどっちだ このまま死んでたまるものか 私が愛した、まもろうとした国は死んだ もはやこの国に、人々に慈悲などいらぬ 私からこの国に祝福をやろう 呪いという名の祝福を… 滅びてしまえ王も国も人々も さぁ…始めよう この国に 「ハイベルンに栄光と祝福を」
真っ赤な薔薇
私には好きな人がいる。 幼馴染で隣の家に住んでいるあのこ 「よう、今帰りか」 そう言って声をかけてきたのは隣に住んでる幼馴染だ 「じゃあな風邪引くなよ」 そう言って帰っていった 私も家に入り、部屋に向かったがなんだか気分が悪くなりすぐさま洗面所へと駆け込んだ 私は吐いた 真っ赤な薔薇を 私は怖くなり隣の家のあいつに助けを求めた 出てきたのはあいつの妹だった 私は先程あったことを話した 「それって花吐き病じゃない?」 そう返ってきた言葉に私は納得した 花吐き病とは片思いをこじらせ続けると発症する病気 治すには片思いの相手と両想いになるしかないとゆう病気だ 「お兄ちゃんが好きなんでしょ! 告白しなよ」 私がどうしてと聞く前に 「みんな知ってるよ!」 とそう返ってきた 「お兄ちゃんのとこ行こ!」 そう言って私は流されるままあいつの元へ向かった 幼馴染のあいつはずっと私のことが好きだったらしくそのまま私達は付き合うことになった それから5年が過ぎ、私達はまだ仲良くやっている 私は昔から自分の意見を言うのが得意ではなかった そんな私をあいつはいつもひっぱってくれた いつも強気で、元気なあいつ そして、そんな兄にそっくりな可愛いあのこ そうして私は今日も真っ赤な薔薇を吐いている