時雨

27 件の小説
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時雨

文才が欲しい学生です。 気まぐれ投稿 読んでくださると嬉しいです。 最近忙しいので、投稿頻度は低くなると思います。

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嗚呼 私はなんてことを言ってしまったんだ 苦笑いの知人 返事のない会話 ギュッと口を結んで 私は唇を縫いたくなるのです 嗚呼 私はなんてことをしてしまったんだ 取り返しのできない失敗 私の代わりに謝る大切な人 ギュッと拳を握って 私は腕を切り落としたくなるのです 嗚呼 私はなんで見てしまったんだ 惨たらしい現場 脳に焼き付く凄惨な景色 ギュッと目を瞑って 私は目玉を潰したくなるのです 嗚呼 なんで私は なんで私はこんなにも こんなにも出来損ないなんだ 体をギュッと縮めて 私は体をすり潰して 団子に丸めて捨ててやりたくなるのです そうしないのは きっと私が希望を捨てられないからでしょう 辛いことが多いのを分かりつつ その中に微かにある幸せを 求めているからなのでしょう 嗚呼 今日もまた また言ってしまった “またね” と

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ワタシの汚れ

足の裏に吸い付く湿った床は 悲しいくらい冷たい ワタシを歪める銀色の肌は 無機質で無常で ワタシの本当を写しているみたい あの子の顔がちらつく 無性に腹が立ってきて それを捻る 痛いほどに冷えた雨が降る あの子の顔がちらつく 反射的に首を掴んで ワタシのそっぽを向かせる あの子の顔がちらつく だんだん雨は白い湯気をたてる ワタシはその温もりを正面から受ける それがやけに染みるから ワタシは泣きたくなってしまった 汚れと毒が 頭のてっぺんから抜けていって 湯水と共に排水溝に飲まれていく いつかの母の腕の中のように 優しさが体を伝って包み込む 私の小さな嗚咽が反響する あの子へ投げつけたワタシの言葉 決してあれは嘘ではないけど 本音は今の私だから たった3文字 明日あの子に言おう ごめん

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ワタシの汚れ

幸運

「貴女はとても幸運を持っているわ!」 親も 先生も 友達も みんなが私にそう言った 私はツイていると 物事がだいたい上手く進むのも 良い友人が出来るのも 素敵な恋人が出来るのも テストの点が良いのも 病気にならないのも 怪我をしないのも 全て運がいいからで 私の努力のおかげではないらしい 私は自分を幸運だと思ったことなんてない くじも当たることなんてないし ジャンケンも弱いし 裕福でもないし 偶然で上手くいくことなんてないし 自然に友達ができることもないし 私が望んでいることが叶ったことなんて ほとんどないのに でも ただ1つ 「こんなに努力家で不満も本音も溜め込んじゃうあんたに、私みたいな親友が出来て良かったわね」 といたずらっぽく笑うあなたに出会えたことは 間違いなく最高の幸運だよ

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幸運

死体遺棄の変人

×月×日 とある男が死体遺棄で逮捕された。 異臭がすると近所の住人が通報。その場に駆けつけた警察官が見たのは、腐った死体と、それを愛おしそうに愛でる男だった。逮捕される…と言うより死体から離れることに抵抗した男だったがその後あえなく逮捕。妻の死因は心臓発作だった。聞き込み調査では、その男と妻は大変円満な夫婦だったという。平和な田舎で起こった事件だったこともあり、ニュースは全国に放送された。そして男の名は瞬く間に広まった。死体となった妻と1ヶ月も共に生活していた異常者、変人として。 記者やカメラに向かって男は叫んだ。 「妻は…ゆかちゃんは僕のものだ!僕は死ぬまでゆかちゃんと一緒にいるって決めたんだ!約束したんだ!僕たちを引き裂くな!ゆかちゃんに誰も触るな!」 期待以上の男の発言に、メディアはこぞって男を大きく取り上げた。異常な夫の歪んだ愛 事件の原因は妻への執着心の強さ テレビも新聞も、いいネタだと言わんばかりに教授や一般の人を使ってその事件を盛り上げた。 もちろんネットもその話で持ち切りだった。これが真実の愛だとか、ただの異常者だとか、障害者なんだだとか… 男は捕まった身でありながらも、抵抗を続けた。それがさらにメディアに火をつけ、男についてのニュースは長い間鎮火されなかった。 数年後 釈放された男は、実名でネットに書き込みをした。 「僕は歪んでなんかない。ただ、妻を深く愛していただけだ。体が腐って朽ちていく姿も、醜いところも全てを愛していて、全て僕だけが見ていたかった。彼女はどんな姿も美しいんだ。そんな彼女を独り占めしたかった。僕は異常者でも、障害者でもない。ただの愛妻家だ」 この書き込みはまたもやメディアに取り上げられた。しかし次第に、ネットでは男は度を過ぎた「愛妻家」というイメージが定着し、ネットのおもちゃと化していった。みんなが男の真剣な本心をネタとして使った。 男が自殺した時 みんなは妻を愛すばかりに後を追って逝ったと決めつけた 妻の分まで生きると決めていた男を ネットで追い詰め自殺させたことも知らずに 男の本心も苦しみも死も 全てネタとして、ネットに永久に縛られるこことなったのだ 男は死の直前に呟いた 「異常なのは どちらなんだろうか?」 と。

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死体遺棄の変人

ずれる

真っ直ぐ入れたはずなのに 中で折れてしまったシャーペンの芯 真っ直ぐ揃えていたはずなのに 曲がってしまったプリントの端 定規を使ったはずなのに がたついてしまった直線 きちんとまとめて入れたのに カバンの中で折れ曲がったノート 綺麗に切ろうと気をつけたのに 斜めになった前髪 前ならえをしたはずなのに 曲線状になった整列 がたついてても 歪でも 曲がってても 自分だけの折れない芯が 欲しいものです

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ずれる

笑顔

友達には楽しい笑顔を 近所の人には元気な笑顔を 嫌いな人には苦笑いを 面白い人には笑い泣きを 可愛いものには弾んだ笑顔を 好きな人には控えめな笑顔を 好きな物には尊い笑顔を 目上の人には愛想笑いを 軽蔑してる奴には憤りの笑顔を 大切な人には優しい笑顔を 他人には上辺の笑顔を 親友には呆れた笑顔を 親には感謝の笑顔を 愛している人には心からの笑顔を 我が子には愛しい笑顔を どんな笑顔だとしても 笑顔を絶やさない人に 私はなりたい

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笑顔

白昼夢

夢を見た パン屋さんに スポーツ選手 小説家や 先生 パティシエ、 画家 お花屋さん 色んな職業に興味があって 色んなことがしたくて 夢に溢れて目を輝かせる幼い自分を ただただ遠く離れたところから見る夢 小さい時は自由だった なんでも出来ると思ってた 夢なんて沢山あって 希望に満ちていたはずなのに 今の私は なりたいものなんて やりたいことなんて 分かんない やりたいことも 現実的でないことばかりで 夢になる前に諦めて気持ちを捨ててしまう 夢見ることは簡単じゃない もう、夢を見ることが 私の夢になってしまってるの 分からない 私は何になりたいの? 私ごときに何ができるの? 教室の窓辺 青い空を見つめながら まっさらな進路調査の紙を前に 私はぼんやりと白昼夢を見る

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白昼夢

女神が死んだ日

私は女神だった 誰にでも優しくて みんなを平等に扱って 困ったら必ず助ける そんな私を皆は女神のようだと言った 何かする度に崇められるようになり クラス中で怖がられている派手目の人達にも 私は女神のように扱われた そして私の善は 段々と意図的に行われるようになっていった これは善だ これは悪だ そんなことをよく考えて動くようになった どんな人にも絶対平等に 女神の私が怒ったり イラつくことなんてしてはいけない 寛容にならなきゃいけない 悪いことも許せるような そんな人でなくてはならない 皆を愛し 愛され 完璧でなくてはいけない そんな意識が私に強く根付いていた その意識は私をどんどん飲み込み 私は徐々に感情が欠乏していくようになった なんでも許せる代わりに 私は何に対しても無感情になっていった そんな時 私の天使は言った “あんまり無理しないで”と 彼女は私の手を握りさらに “自分のことも大切にしてあげてよ” と言った その瞬間、私の目の前が明るく開けた 何かが壊れる音がした ああそうだった 私は女神なんかじゃない 無償の愛を授けることなんて出来やしない ただの人間だった ただの弱い弱い未成年だ 手を握る私の天使…私の友人の 心配そうに私を見つめる その瞳には 私は女神ではなく 1人の少女として 人間として 友達として 映っていたようだ その日私の中の女神は死んだ

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女神が死んだ日

シャンプー

香りで君に気づくようになった時から きっと僕はもう君に落ちていたんだ 何となくいい匂いだと思ったのがきっかけだった 匂いが鼻に届く度 君をつい探してしまった 柔軟剤の匂いでも 香水の匂いでもない それはシャンプーの匂いなんじゃないかと 友達が教えてくれた 僕は彼女が気になっているんじゃない 彼女のシャンプーの香りが ただ好きなだけなのだ そう言い聞かせてみたが 気がつけば香りが鼻に届く前に 君の姿を目で追ってしまっていた いつしか嗅覚だけでなく 五感で感じる君の全てが僕の胸を苦しめるようになった ただの話しかける口実で 使っているシャンプーを聞いてみた もう匂いなんかにこだわっていなかったが 君について少しでも知れるだけで胸が踊った 薬局でそのシャンプーを見つけたが 君から香る匂いとは程遠い 無機質な匂いだった そうか 君の匂いはシャンプーじゃない 君だけの匂いだったのだ 全く他人の匂いなど気にしない僕が 君の匂いに気になってしまったのは 君が僕にとっての特別だから 特別なのに 大切なのに 守りたいのに 僕は君に思いを伝えられないまま卒業してしまった 大人になった僕は 今でも君を探してる 君の香りを 求めて 探して 君の隣に居たいのだと 痛いほどに 苦しいほどに 願っている 願っているんだ

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シャンプー

乾き

枯れて散った花のように 枯渇しひび割れた地面のように 私は乾ききっている どんなに娯楽に身を投じても どんなに欲のまま生活しても 全く満たされない 潤いのない体をミシミシ音を立てながら動かして 生きるためだけに働く 虚無感を抱えて 意味の無い日常を生きる 誰か 誰でもいいから 無償の愛で私を潤して 溺れさせて 息が出来なくなるほど 私を愛で埋めつくして 生きている意味を 理由を 誰かちょうだい そしたら私は今日も生きていて良かったと思えるはずだから お願い 誰か… 携帯の着信音が鳴る スマホを取って 乾いた目でメールの文章を追う 『最近大丈夫?なんかあったらいつでも帰っておいで。大事な娘に会えなくてお父さんも寂しがってるから、正月ぐらいは実家に来なさいよ?仕事ならしょうがないけど、もし帰って来れることになったら早めに連絡ください。』 胸から温かいものが広がって体が満たされてゆく。 潤いが目に宿る。 なんだ 気づいてなかっただけだった 気がついたら私は『母(鬼)』に電話をかけていた

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乾き