7 件の小説
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勇者と魔王のお話

悪い人って、良い人

良い人なんて嫌いだった 根から良い人なんて存在しない 良い人、優しい人、なんて呼ばれている人は 大体何かを心の奥に隠している それが気持ち悪くて だったら悪い人、酷い人の方が 正直で綺麗な気がした でも、正直でいることが1番難しくて 僕も結局、良い人のふりをしてしまっている 自分が嫌いで、優しい良い人も嫌いで 悪い人も、自分はそう正直になれないことから 嫉妬で嫌いになっていく 全て嫌いなくせに、どうでもよくなれないから 誰かの目を気にして良い人を続けている いつか、誰にとっても、何に対しても 悪でしかないような人間に そんな人間に出会えたら そいつに全て振り回されて この嫌いな自分を無視できるような 僕を悪い人間に塗り替えてほしい

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不似合いな勇者

「なんて勇者に不似合いなんだ」 初めて見た瞬間、そう思った 物語の中にいるような勇者は きっと魔王なんて見たらすぐに警戒するだろう でも、俺の前に現れた勇者は 「戦うつもりはない。話がしたいだけだ」 なんて言って剣を捨てた どうして人を殺すのか、目的はなんだ とかたくさん質問責めにされたが 否定は一つもしなかった ただ俺の話を聞いては 「君は何にも縛られずに好きに生きている。尊敬するよ」 と、俺のことを認めた 善意からではない 俺を油断させるためでもない ただ興味があるだけだと こんな勇者いるだろうか 「勇者に向いてないな」 と俺が言うと、その勇者は嬉しそうに笑った きっと勇者というのに縛られているのだろう その勇者は苦しそうで でも誰もそのことに気づいてやる人はいなくて また一つ、人を恨む理由ができた そして、初めて人を好きになれるのかもしれない

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運命

魔王に倒されたい 「勇者が必ず勝つ」という運命から逃れたかった 昔からよく物語を読んでいた 特に、勇者と魔王のような正義と悪が テーマの物語をたくさん読んだ どの話も面白かったが 最後に勝つのが勇者であるのに気づいた瞬間どれも興味をなくした 人のため、国のために命をかけて戦う勇者は とても素晴らしいと思う だが、何にも縛られずにいる魔王が 勇者よりも何倍も綺麗に見えた 「…どうして僕が勇者になってしまったんだろう」 周りの人は皆、僕が物語にいるような 完璧な勇者に見えている だが、実際はこんなに勇者に向いていない思考をしていることに申し訳なく思う せめて、魔王がとても嫌なやつであってくれ という願いも虚しく この世界の魔王に僕は惹かれてしまった 魔王なんて言っても、この世界の魔王は そう呼ばれているだけであって人間だ 外見の良さも相まってとても綺麗に見える 死にたいわけではない 家族や仲間は大切だし、したいことだってたくさんある でも、そのどれもが 「勇者が必ず勝つ」という運命から逃れられるのなら捨てても良いと思った 魔王に倒されたい 「魔王が勝つ」という結末を迎えるために きっと僕は勇者になったのだろう 今はそう思うしかない

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きみの温かさを感じたかった

魔王が処刑される日 僕は勇者でありながらその魔王を庇った そんなことをすれば全員に失望されるだろう 今まで積み上げてきた信頼も全て失うだろう だがそれでもきみには生きていて欲しかった 僕が1番恐れている 他人に失望されること 耐えられると思って飛び出したが やはり怖くて仕方がない もう取り返しはつかない そんな時にもきみは僕を落ち着かせて 僕を庇ってくれる 「こいつは俺が操っている。勇者を俺のものにされて悔しいか!」 違う、違うのに これ以上周りの人に君が悪者だと 思わせたくないのに 僕への罵倒から君への罵倒へ変わっていく 自分が的から外れたことに 少し安心してしまうのがまた苦しい 君が何かをずっと話している 民衆と言い争っているのだろうか その間もずっと僕を抱きしめてくれる その手はとても冷たかった

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この感情は愛でも恋でもないけれど

「……本当におかしいな」 真夜中、ベッドで 僕の隣には敵がいる この世で1番恐るべき存在だ こんなやつと一緒に寝てるなんて 周りの人が知ったらどうなるか… こいつは、僕の兄を殺した 僕の幼い頃からの大切な友人も殺した 僕の仲間も、全て 今すぐにでも殺したいくらいには 憎むべき存在だ でもこいつは…君は 僕のことを想ってくれている 僕は、君と居る時だけは自分を偽らずに過ごせる 大切なもの全て奪われたのに それでも僕はずっと君と居たいなんて 「本当に…おかしいな」

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正しさ

僕は勇者だ 常に世間で正しいとされる道を進む それが自分にとって正しいと思えなくても 勇者でありながら、勇者に相応しくない 考えを持って今まで過ごしてきた 勇者である期間というのは最大の敵を倒すまで ついに、その敵を倒せる寸前だというのに 僕はどうしてか立ち止まってしまう 君は 「今まで好きなように生きてきた」 と言った 僕ができなかったこと、ずっと憧れていたことだ どうして倒さなければならないのだろう 僕のように周りに流されて生きてきた人では無い 本来なら、好きなように生きてきた君こそが この世界で認められるべきではないか 思えば思うほど、僕は君をを殺せない 僕は今日、初めて 自分が正しいと思う道へと進む それが誰にとっても悪いことだとしてもだ どうか どうか僕を 君の手で殺してくれ

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悪者

どんなに苦しい過去を持った悪者がいて 周りの人が全員それに同情するとしても 悪者は悪者である 結局は倒されてしまうのだ 僕は昔からそんなのが嫌だった 悪者が倒されるならば、その悪者は全員に恨まれる人であれ 苦しい過去を持った悪者がいるのならば、 その人が勝ち残るべきであれ そう願って生きてきた 今僕の目の前にいる男は、今の今までずっと苦しんでいる 誰にも理解されなくて、一人孤独で だから僕はそいつを倒したりしない 僕は、そんな辛くて醜い悪者に倒される側でありたい

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