雪乃フユ

86 件の小説
Profile picture

雪乃フユ

趣味で小説書いてます。 我が子達の活躍を暖かい目で見守ってくれると嬉しいです! コメントやいいね等してもらえると嬉しいです! 【連載中】 魔剣作りの奇想曲(カプリース) 【完結予定】 七色の君へ 【完結】 七色の君へホワイト・プログレッシブ

第一章 第3話 村の少女レインとルーナⅢ

第一章 二人の魔法の序曲(オーバーチュア) 【第3話:村の少女レインとルーナⅢ】 村長のもとを訪れたレインとルーナ。 村長は不思議そうにしながらも二人を部屋へと通した。 「村長村長!お話があります!」 「どうしたんじゃ二人とも、そんな興奮した顔をして」 「私たち冒険者になろうと思うんです、そこで近くの街について教えていただけないかと思いまして」 「ほおほお、冒険者とな。このホビット村には冒険者協会が無いからの、登録をするならここから一番近い街じゃと、アルスの街じゃな」 「アルスの街、ですか。ちなみに行くにはどうすればいいんでしょうか」 「馬車じゃと3日、徒歩だと1週間ほどかかるかのぉ。森を抜けていくからの、徒歩だと魔物との戦闘は避けられんじゃろう」 「私は徒歩で行くべきだと思う、ルーナと私はレベルが低いから街に到達するまでに少しでもレベルは上げるべきだよ。それに私達はあのエリートゴブリンだって倒したんだ、あれより怖い魔物なんてそうそう出てこないよ」 「それに、私達お金ないしね、、、」 村長は少し考えるとズボンのポケットから財布を取り出し二人に銅貨を三枚ずつ渡した。 「二人ともそれを持っていきなさい、登録手数料分じゃ。儂に出来ることはこれくらいじゃ。あとは二人で頑張ってみなさい。この村ははお主たちの家じゃ、いつでも帰っておいで」 レインとルーナは村長に礼を伝えると家に戻り、出発の準備を始めた。荷袋に荷物を詰め込むレインを横目にルーナは一人隠れてコソコソと手元を動かしていた。 それを見てそーっと近づくレイン。 ルーナの背後からその手元を覗き見るとそこには今まで見たことのない薄い透明の板のようなものが宙に浮いているのが見えた。 それを見たレインは思わず声が出てしまう。 その声に反応したルーナも『キャン!』と奇声をあげてしまう。 「れ、レインちゃん!?ど、どうしたの!?、、、見た?」 「見た」 ルーナはため息をつくとレインに隠していたものを見せた。宙に浮かぶ板にはレインが読めない謎の文字も書かれていた。 「ルーナそれはなんなの」 「これは神板《しんばん》って言ってね、私みたいに遠く、、、異世界から来た人が使えるものなの。黙っててごめんね、混乱させると思ったから、、、」 レインは少しの間ポカンとした顔をして呆気に取られていたが、正気を取り戻した後ルーナに質問を投げかけた。 「異世界って、こことは別の世界って事だよね。ルーナはなんでこの世界に来ちゃったの」 「私は元の世界で事故にあって死んじゃったの、だからこの世界の神様が私を転生させてくれた。この神板といくつかの能力も授けてくれたんだよ」 それからルーナはレインの自分の三つの能力について話した。 一つ目の能力は全属性の魔法が使えること。この世界に存在する十種類の属性魔法を全て扱えるという破格の能力ではあるがその解放には自身のレベルをあげる必要である。 二つ目の能力はスキルの《生成》《解析》《分解》《付与》。これもその名の通りであり、自分意思でスキルを作り出したり解析を行い分解、そして付与が可能になるというものである。しかしデメリットは存在し、外的要因によるスキル獲得が不可能となっているのだ。ルーナ自身は自分でスキルを生み出さない限りスキルを獲得する事ができないのだ。 三つ目の能力は《鑑定眼》。これは対象の能力を見ることのできる能力。見ることのできる対象は人や魔物、アイテム等多岐にわたる。 「結構色々あるんだね、本格的な魔法使い職の全部盛りセットみたいな構成だねこれは」 「これからは私もレインちゃんを助けられるように強くなるから!だから、だから、、、」 「そんな食い気味にこなくても大丈夫だってば、そんな風にしなくても私はルーナの事を嫌ったりしないよ。でも、こういう大事な事はちゃんと言ってよねー、全くもう」 「ありがとう、私不安だったんだ。自分が異世界人だって話したら嫌われるんじゃないかって」 「そんな器の小さい人間じゃないわ、それよりも色々面白いことできそうな能力があるってわかって更に可愛がってあげたくなっちゃったじゃんか」 「あ、ああもう!そんなに激しくよしよししないでよぉ、髪がぐちゃぐちゃになっちゃうよ」 「ニヒヒ、そういえば私の能力って見れるんだよね?どんなものがあるのかな」 ルーナはレインに向けて《鑑定眼》を発動させた。 するとルーナの視界にレインのステータスが表示された。 しかし、何故かステータスのあちこちにモヤがかかりその全容を見ることは出来なかった。 表示された内容はこの様だった。 【レイン・█████】 レベル5 職業:無し 『スキル』《氷魔法》《速度上昇技:アクセル》《██》《███》《███》 『EX』無し 『SP』 10 「なんだろう、このモヤ。意図的に隠されてるのかな、でもレインちゃんはステータスをいじれないし、一体誰が、、、」 「いいでしょーそんな事は、とりあえずこの大荷物をどうするかを考えよ」 勢いで村を出ることを決めてしまった二人だったが、一つ課題は残っていた。それは荷物である。 レインの小屋に置かれている食料や小物や家具、魔剣の試作品等、運ばなければならないものは山ほどあった。 しかし、女子二人の筋力と持ち運ぶ袋の大きさからしても圧倒的に足りないのは明白だった。 「そうだ、早速スキルを作ってみるのはどうかな。収納に使える便利スキルがあれば持ち運ぶものを最小限に減らせるんじゃないかな」 「それもそうだね、ではよろしくお願いします」 「では、失礼しまして。《スキル作成:収納》」 ルーナはその場でスキル作成のスキルを発動させた。 スキル作成は欲しいスキルの能力を口にすれば自動でスキルが構築されるというものだ。構築されるスキルはスキル構築者の能力に応じてランダムに決まる。そのため必ずしも望んだスキルが手に入るとは限らない。スキルは無数に存在するため同じ様な能力を持ったスキルは数え切れない。構築されたスキルはレベルアップ時に手に入るSP《スキルポイント》を消費して入手する事ができる。 現在ルーナのレベルはレインと同じ5であるため、所持しているSPも同じく10。 十秒ほど待つとスキルは完成した。ルーナの視界に表示されたスキルは三つ。《アイテム収納》《アイテムボックス》《EX:無限収納》の三つだ。 「うーん、似たようなスキルが表示されたんだけど、、、どれがいいのかな。詳細な説明は、、、これかな」 《アイテム収納》…自由に出し入れする事の可能な収納空間を生成する。収納可能数 20 消費SP 1 《アイテムボックス》…素材やアイテムを出し入れする事の可能な収納空間を生成する。自身の出入りも可能。収納可能数 50 消費SP 5 《EX:無限収納》…万物を収納可能にする。使用者の能力に応じて収納空間は無限に広がる。収納可能数 無限 消費SP 300 「明らかに別次元なスキルもあるんだけど、他のスキルも取ると思うし今は一番安いスキルでいいかな」 ルーナはそう言うと《アイテム収納》のスキルを選択した。すると身体を淡いオレンジ色の光が包み、パッと光は四散した。 ルーナは手を目の前にかざした。かざしたすぐ先に白い小さな渦が生まれ、宙に浮きながら回転し始める。 レインはそれをみて首を傾げながらも恐る恐る手を入れてみる。 中は特に危険ではないと確認した二人はその渦の中に次々に荷物を放り込んだ。 《アイテム収納》の上限値は20。しかし二人が放り込んだ物は20という数を遥かに超えていた。ルーナがスキルを確認してみると、同じ様な物は一つの項目で統括される様で項目数の上限値が20というだけで物自体はそれ以上の数が入るようだった。 「ルーナ、このスキル便利すぎない」 「うん、、、とりあえずこれで荷物の事は片付いたね、次は装備かな」 「それに関しては私にツテがあります」 「この村は武器屋さんがあるの?」 「武器屋は無いけど、武器作りが趣味の変態が知り合いにいるんだ。その子に新調してもらうと思う」 「でも、お金が必要だよね。村長さんから貰った銅貨は使えないし、お金はどうするの?」 「この小屋と試作品の剣とかを売れば少しは足しになるんじゃないかな」 「いいの、大事な小屋じゃないの?」 「大丈夫だって、これから旅に出るんだし。それに街に着くまではどの道森で寝泊まりしなきゃいけないんだから」 「何から何までありがとうレインちゃん、私にも何かできたらいいんだけど、、、」 「ルーナにはこの後活躍してもらうから大丈夫」 「え?」 二人は村の東入口付近にある一件の家にやってきた。 その家は村にある家の中では比較的綺麗な状態の建物だった。 「たのもー!」 レインが家の前で叫ぶとドアを勢いよく開けて汗だくの小柄な少女が焦りながら出てきた。 「あのねレイン!何度言ったらそれを止めるのよ!ウチはいつも言ってるでしょ、、、普通に入ってきなさいよ!!」 「こんちはチェルティ、ちょっとした依頼があってきたんだ」 「最初に言っとくけど、魔法が撃てる剣とか空飛ぶ鎧とかそういうふざけた事ならお断りだからね」 「違う違うって、私は普通の剣士用の装備と魔法使い用の装備が一着ずつ欲しくて来たんだよ」 チェルティと呼ばれたその少女はレインの言葉を聞き、以外だったのかキョトンとした表情になる。 「どうしたのよ、アンタがそんな普通な事言うなんて。今日はストームでも来るのかしら」 「私の事を天災かなんかだと思ってるの君は」 「アンタは歩く天災よ」 「ひっどぉ。ルーナ、この子はチェルティ。この村で武器作りと装備作りを趣味としてる変態」 「酷いのはどっちよ」 「チェルティさん初めまして、ルーナと言います」 「見たとこ、アンタが噂の天災が連れてきた爆発魔ね。まぁいいわ、家に入って頂戴。二人とも装備が必要って事はいよいよ村を出るのよね、仕立ててあげるわ」 「わーお、ありがとチェルティ。それで、お代はいくら?」 「アンタね、そういうのは完成品を見てから言うんじゃないの?」 「大丈夫、チェルティの作ったものは間違いなく最高の出来だから」 「お代なら要らないわ。その代わり一つお願いを聞いてちょうだい」 レインは腕を組み首を傾げた。 「お願い?」 チェルティは二人を家に招き入れると奥へと案内した。 着いたのはこじんまりとした工場。壁にはこれまでに作ったと思われる武器や装備が飾られていた。 二人を案内したチェルティは工場にある小さな椅子に腰掛けるとレインを指さし口を開く。 「ウチの願いはただ一つ。レイン、アンタウチも一緒に連れていきなさい」 【続く】

0
0
第一章 第3話 村の少女レインとルーナⅢ

第一章 第2話 村の少女レインとルーナⅡ

第一章 二人の魔法の序曲(オーバーチュア) 【第2話:村の少女レインとルーナ Ⅱ】 二人は気にもたれかかりながら静かに体力を回復させ、二人が帰路を辿る頃にはとっくに日は沈んでしまっていた。 夜道は足場も悪く、フラフラになりながらも二人は森を抜け道を辿って近くの村を目指した。 そして、ルーナはレインに連れられ近くの村である『ホビット村』へとやってきた。 直径1キロメートル程の小さい村ではあったが、村の中には大きな畑や家畜の檻などがあり、住宅もかなりの数があった。村の四方に入口があり、二人は西門から検問を通り、村へと入った。 更に数分歩くとレインの自宅へとたどり着く。 小さな小屋ではあったが、中には暮らすには十分の蓄えと工作に用いられていると思われる机や、作りかけの剣等が置いてあった。 食器やベッドの数を見たルーナはレインに問いかける。 「レインちゃんはここに一人で住んでるの?」 レインは少し寂しげな顔をし、答えた。 「うん、私ここにずっと一人で暮らしてるんだ。両親の顔も知らない。五年前に森で村長に拾われて、それからずっと一人だよ」 「そうだったんだ」 「気にしないで、これからはルーナもいてくれるし私は嬉しいよ。さ、ご飯にしよ。明日からまた忙しくなるよ」 「うん、ん?忙しくなるの?」 そして、夜は過ぎ去り。 翌朝、ルーナは目を覚ました。目の前には横になって静かに眠っているレインの姿があった。昨夜は夕食を済ませると一つしかないベッドに二人で入って寝てしまったのだ。 疲れ切っていた事もあり、すぐに眠りについてしまったのでルーナはふと我に返り恥ずかしさが限界突破した。 その勢いのまま起き上がろうとした結果、ベッドから床へと綺麗に転げ落ちた。 「、、、キャッ!!」 レインはその声で目を覚まし、ゆっくりと起き上がった。 「あちゃあ、落ちちゃったか。おはよ、ルーナ」 「お、おはよう、レインちゃん、、、」 二人は家の裏にある井戸へと足を運び、水を汲み上げ顔を洗った。冷たい水は若干ウトウトしていたレインの意識をはっきりとさせた。 朝食はレインが先日買い置きしていたパン二つ。 生地はとても固く、手でちぎろうとしても中々ちぎれなかった。 「これ、硬すぎない。いつもこれ食べてるのレインちゃん」 「安くて長持ちだけが取り柄のパンでね、あんまり美味しくはないんだけど収入が少なすぎて色々贅沢できないんだよね」 渋々二人は硬いパンを平らげ、村中へと繰り出した。 最初に向かったのは、村の中心に位置する村長の家。 二人が訪れると元気な老人が出迎えてくれた。 「おー!レインじゃないかい、今日はどうしたんじゃ」 「ピークス村長、おはようございます。今日はこの子の村滞在の許可を頂きたく訪問させていただきました」 「初めまして、ルーナと申します」 「ほほう、可愛らしいお嬢さんじゃないかい。この子はどこで?」 「森で魔法を使っているところを目にしまして、話を聞くとどうやら迷子みたいで、私が面倒を見るのでどうか滞在を許可して頂きたいんです」 「なるほどのぉ、昨日の森での爆発はそういうことじゃったか。まぁ、レインが面倒を見てくれるなら問題はあるまい、よし。許可しよう」 「ありがとうございます村長!私頑張りますね!」 「全く、森でお主を拾ってからというもの、村はお主のお陰で随分と豊かになった。レインよ、どうじゃ、村長の権限でもっといい暮らしをしたってバチは当たらないだろうに」 「私は今の暮らしで大いに満足しているので、大丈夫です。いい暮らしは自らの手で切り開くので!」 「それならいいが、無茶はするんじゃないぞ?」 村長の許可を取ることの出来た二人は村長の家を後にした。 「ねぇレインちゃん、村長さんが言ってた村が豊かになったって話。どういう事なの?」 「ああ〜、アレね。私物作りが好きで興味を持ったものはとことん追求していくんだけど、村の設備を色々改造してたら気がついたら豊かになってたってだけだよ」 「凄いんだね、レインちゃんは。私にもそういう事ができたらな、、、」 レインはルーナの手を握ると優しく抱き寄せた。 「ルーナは凄い魔法の才能があるんだから、これからだよ。二人で一緒に頑張ろうよ!」 「うん、ありがとうね」 二人は再び森へとやってきた、昨日倒されたゴブリンの姿は跡形もなくなっており、その場所には紫色の結晶が一つ落ちているだけ。レインはそれを手に取ると、ルーナに見せた。 「これは魔石、魔物の体内にある核となる器官だよ」 「これが魔石、結構重たいね。これをどうするの?」 レインは近くに落ちていた石を使って魔石粉々に砕き、その砕いたものを腰にぶら下げていた布袋に入れて、更に粉々にした。 「こちらが出来栄えの物です」 「見てたから分かるよ。いや、それをどうするのかって、、、」 「ここからこれを剣にふりかける。そうすると剣は魔石の粉末を吸収して魔力を内部の芯に蓄える。一度に吸収できる量は限られてるから何回かに分けて吸収させます」 「それって他の武器でもできるの?」 「いや、私の剣は特別製でね。基本的には他の武器じゃ無理だよもしかしたら世界のどこかに私と同じ事考えている人がいるかもしれないけどね」 「話の腰を折ってごめん、それでそこからどうなるの?」 「この粉末を吸収すると、剣が魔法を使えるようになるの。この剣を私は『魔法術式発動可能剣』略して『魔剣』と呼んでる」 「魔剣、ゴブリンと戦った時にあの刀身が伸びた攻撃ができたのも魔法の力なの?」 「あれは、単純に魔力を刃として剣に纏わせただけのその場しのぎの代物だよ。だけど、ここからは違う」 そう言うとレインは手馴れた手つきで剣に魔力を纏わせ、一振りして見せた。 「私は本物の魔法をこの目で見ることができた。今までは想像してただ時間を食ってただけだったけど、ルーナの魔法が全てを変えてくれた。私にも魔法を使うイメージがやっと湧いてきたんだ、こうやってね!」 すると、レインの剣に纏っていた魔力に色が浮かび上がって来た。それは冷たく凍えそうになるほどの綺麗な水色。 刀身からは冷気が出始めたが、安定せず纏っていた魔力は砕けてしまった。 「氷魔法、、今のは魔法だよ!レインちゃん!」 「おかしいなぁ、ルーナが使った炎魔法をイメージしたつもりだったんだけど。氷魔法か、私は氷、ルーナは炎。対になってていいね。さぁ、もう一度やってみよう!」 それからルーナとレインは何度も魔剣に魔力を定着させる実験を行った。しかし、定着するのは僅か数秒。その後は決まって魔力は薄い氷がパリンと割れるように簡単に割れてしまった。 「これもしかして剣自体に問題があるんじゃないかな、魔剣として使うのに適した剣じゃないのかも」 「そうは言っても私たちには新しく剣を買うお金なんてないよ?毎日食べていくので精一杯なのに」 ルーナは少し考え込むと、ふと一つの答えを思いつく。 「レインちゃん、私達で冒険者になるのってどうかな。魔物を狩ったり、色んな場所に行けば魔剣作りのヒントを得られるんじゃないかな」 「それだ!それだよルーナ!この村をとびだして広い世界を見に行こう!そのためには出発に必要なお金を稼がないと。私に一ついい案がある、ノル?」 「ノルよ、行こうレインちゃん!」 二人が森を抜けて村に戻る頃には日は沈んでいた。 興奮収まらぬ中終えた一日、翌日二人は再び村長のもとを訪れていた。 【続く】

0
0
第一章 第2話 村の少女レインとルーナⅡ

第一章 二人の魔法の序曲(オーバーチュア) 第1話

第一章 二人の魔法の序曲(オーバーチュア) 【第1話:村の少女レインとルーナ I】 静かな風が森の木々の葉を揺らした。広々と広がる森の中でカコンカコンと木を斧で叩く音が響く。 大きな木を華奢な一人の少女が不格好な形をした斧で叩いていた。 「やぁ!」という掛け声に合わせ同じ場所を何度も何度も叩いた。 何十回と叩き、ノルマを達成した少女は叩く手を止めて先程まで叩いていた木にもたれかかるように座った。 腰のぶら下げていた皮でできた水袋を取り出し口へと運んで水分を補給し、斧に手を伸ばし撫でながら愚痴を吐く。 「ぷはぁ、やっぱりこの斧じゃいくら叩いても切れる気がしないな。やっぱりこっちかな」 水袋を腰に下げ、立ち上がると近くに置いていた鞘から剣を引き抜いた。木でできた剣は刀身はボロく、あまりいい出来のものではなかった。しかし使い込まれた跡は彼女をただの少女ではないと物語っている。 「魔力付与、開始。剣の芯から広がるイメージ、流し、広がり、纏い、作る」 淡い紫色の光が木の剣を纏い、刀身を鋭くした。 少女は木から少し距離を取り剣を構えた。 息を大きく吸い、優しく吐くと正面に向かって大きく踏み込み剣を大きく左方向へと振る。 すると、先程まで叩いてもビクともしていなかった木がゆっくりと倒れたのだ。 少女は剣を振り払う動作を行うと鞘に刀身を収めた。 「くうぅー!やっぱりコレコレ!この爽快感!この斬れ味!コレが、コレこそが魔剣だよ!!」 少女が一人目を輝かせてピョンピョンと飛び跳ねていると、森の奥の方でドカーンという爆発音が聞こえてきた。 急いでその音の方角へと向かってみると、再び大きい爆発音が聞こえた。木の影からソーッと覗いてみると、そこには金色の長髪の自分と同じくらいの少女が大木に向かって両手を伸ばしているのが見えた。 (何してるんだろう、爆発音はここから聞こえたと思ったんだけど) 「はぁー!やー!」 すると、金髪少女の声とともに手の先から巨大な火の玉が発射され大木に激突、爆発した。 周囲の木々は揺れ、地響きがとてつもない。しかし、大木の表面は若干焦げてはいるものの、木自体はビクともしていない。 (火の魔法!初めて見た、あんな感じなんだ〜!グフフフ、、あぁ、色々聞きたいけどいいかなぁ、、、) 木の影から出て話を聞きに行こうと少し踏み出そうとした時だ、大木の後ろから巨大な黒い影がその姿を覗かせる。 金髪少女はそれに気づき、声を上げる。 「ま、ま、魔物!!」 金髪少女は腰が引けてそのまま地べたに転げてしまう。 木の影から見ていた少女はその黒い影の正体に気づく。 「エリートゴブリン、なんでこんな所に!?普段は洞窟にしかいないのに。それにあの巨体があんな近くにいてなんで気づかなかったんだ、、、。彼女はなんで魔法を撃たないの」 「嫌、嫌、嫌、来ないで、、、」 金髪少女はあまりの恐怖に動くことすらできずにいた。 「私が行くしか、、でも、魔物と戦ったことなんて、ああ!考えてる場合じゃないでしょ!助けるんだ!」 少女は剣を抜き、淡い紫色の光を剣に纏わせた。 そして、金髪少女の前へと飛び出すと少女を庇うように両手で剣を持った。 「あ、あなたは、、、」 「今はいいから!とにかく逃げるよ!」 「で、でも、足が」 そうこう言っているうちにエリートゴブリンは巨大な棍棒を大きく振り上げ少女達に向かって棍棒を振り下ろした。少女は防御の姿勢を取った。が、強力な棍棒の一撃によって軽々ふき飛ばされてしまった。 二人は気に叩きつけられ、立ち上がるのもやっとの状況だ。とても逃走など不可能だった。 そこで少女はふと一つのアイデアを思いつく。 「ねぇ、二人でアイツを倒そう」 「え!?そ、そんな事可能なんですか、、、」 「あなた、残りの魔力は」 「7割くらいです」 「私の合図でこの剣に全部の魔力を流し込んで、そしたら二人でアイツにどデカいやつ一発お見舞いしてやろう」 「わ、わかりました。やってみます」 「よし、じゃあ行くよ。」 二人は剣の柄を握りしめ、お互い魔力を全部流し込んだ。 「私が魔力を剣に収める、大きく大きく強い刃を作るんだ。あんな奴なんか一気にぶった斬る超すごい剣に!」 「怖いけど、怖いけど、、、でも死にたくないから!」 刀身は眩い光を放ち、青く大きな光の刃を作り出した。 その輝きはゴブリンの視界を奪った。 「ゴ、ゴァ!」 ゴブリンがよろめいた隙を見つけた二人。 少女は声を振り絞り、こう叫ぶ。 「《アクセル》!」 すると二人の身体は凄まじい速度で加速し飛び上がり、一瞬でゴブリンの頭より高い場所へと到達した。 そして二人は咆哮を上げ剣を振り下ろす。 「「はああああぁ!」」 青く輝く刃はゴブリンの身体一刀両断し、二人は地面へと落ちてしまう。凄まじい轟音が森中に響き渡りその音は近くの村にまで聞こえていた。 少女達は近くの大木へともたれ掛かり、座り込んだ。 二人共ヘトヘトな状態になっていたが、どこか爽やかな気分だった。 先に口を開いたのは木の剣の少女だった。 「私、レイン。近くの村に住んでるんだ、あなたは」 金髪の少女は少し気まづそうにしていたが口を開いた。 「わ、私、る、ルーナ。うんと遠いところから来たの。だからここがどこだかあまりよく分からなくて」 「じゃあさ、ルーナ。私と友達になってよ」 「と、友達。私みたいな得体の知れない人と、い、いいんですか」 「一緒にゴブリンぶっ飛ばした仲でしょ?いいに決まってるじゃん。良ければ家(うち)においでよ。家、ないんでしょ?」 満面の笑みを浮かべるレインを見たルーナは頬を赤らめて少し俯きながらも、コクンと頷いた。 「よ、よろしくね。レインちゃん」 「こっちこそ、よろしくルーナ!」 こうして二人は出会った。この二人の出会いはここから世界を大きく変えていく。これはそのほんの序章に過ぎない一節である。 【続く】

0
0
第一章 二人の魔法の序曲(オーバーチュア) 第1話

勇者達の終楽曲

プロローグ ー魔法、それは人の生み出した、奇跡。 ー魔術、それは人の戦の歴史が紡ぐ、争いの象徴。 ー魔剣、それは世界が忘れた、救世主の証。 遥か昔、人は《魔法》を生み出し世界の常識を変えた。 人々は奇跡の誕生に歓喜した。生活も人生も、全てが変わった。 しかし、それは果てしない戦いの歴史の始まりでもあった。どこまでも続く世界は戦いに明け暮れ、自身の正義を主張した。蛮族は《魔術》を生み出し、凡愚はそれを利用した。 絶えず続く戦いに、神は激怒し大地を五つに分け隔てた。 そして、各大地に一人の英雄が生まれた。 人々は戦火を鎮めた彼らを《勇者》と呼んだ。 《勇者》は魔法を纏った剣を振るい、忌まわしき戦火を鎮めた。その剣を神は《魔剣》と呼んだ。 戦いは人々の心に大きな傷を与え、それを見兼ねた神々は世界に救済をもたらした。ある大地には大きな幸せの緑を、ある大地には決して枯れることのない青を、ある大地には蛮族を焼く地獄の赤を。 そして、《魔剣》は長い年月のうちに《勇者》の伝説と共に忘れ去られた。 神々は世界を救った《勇者》達に褒美として永遠の命を与えた。 そして、願った。時と共に、世界の行く末を見守って欲しいと。 『剣は鞘へと収められ、決して抜かれることの無いことを願う。杖は正義のために振るわれ、世界に永遠の平和をもたらすだろう。もし、再び戦火が世界を覆う時、次に剣を抜くのは我らではない』 これは《勇者》の一人、《炎の勇者》が神々に最後に残した言葉である。 そして、それより千年の年月が流れた。

0
0
勇者達の終楽曲

七色の君へ 終章第一幕

【終章第一幕 勇者の運命と黄金の汽笛の鳴り響く空】 ボードの圧倒的な範囲攻撃に会場全体が騒然とした。 スキルや武装ではこれ程の範囲攻撃は易々と撃てるものではない。戦闘終了の合図と共に選手は待機所まで転送された。そして、次々と繰り広げられる予選。 トラブルによるチーム変更等もありながらも順調に進んでいった。 実力者揃いのトーナメントはおよそ半日で終了し、残すは本戦の準決勝戦と決勝戦のみ。 準決勝戦は滴チーム対夜桜チーム、桜チーム対ボードチームというマッチアップになった。 闘技場の自動回復があるとはいえ、ここまでの戦闘でかなり消耗している為、全チームかなりの苦戦を強いられそうと予想されている。 滴チーム対夜桜チームの対戦はまもなく開始される。 選手は、滴チームは《クロス・ライン》雨草滴、《もっちもち堂》アジアンタム、《鬼ヶ島》レイティーナ・メイル。 夜桜チームは《もっちもち堂》夜桜璃音、《フォレスターズ》林筒 瞳、《怨霊廻》霊零 浮佳。 トーナメントのルールは単純、チーム全員が戦闘不能になるまでの戦闘、または降参するまで。 フィールドは廃要塞。上下にかなりの広さを持ち、狭い通路が多いのが特徴だ。全四層で構成されており最下層には巨大な訓練場があり、そこが唯一開けている場所になる。 全選手がランダムな場所に転送され、遂に準決勝戦が開始する。 全選手の転送位置はこのようになった。 《最下層》訓練場:滴 《一層》大倉庫:璃音 《二層》居住区・作戦室:タム、浮佳 《三層》大通路・各用途室:瞳、レイティーナ 全体的にバラバラに配置され、すぐには接敵しずらい場所に転送された。 滴は最下層の訓練場の中央に転送され、すぐに両腰に収められていた剣を抜いた。 「よし、最初から飛ばしていくよレーヴァテイン。《記憶解放》!凍てつく輝き、今こそ解き放て!〈白氷姫〉(アイシクル・クイーン)」 滴は魔剣レーヴァテインの記憶を解き放ち、氷の外装を自身に纏わせた。 そして、二本の剣を天井へと向けた。 「貫け!大氷塊!」 滴はレーヴァテインから巨大な氷塊を生成し天井へと向けて勢いよく飛ばした。氷塊は全階層を突き破り、閉鎖されていた空間を解放した。 一層に転送された璃音は試合が開始されてすぐに下からとてつもない魔力反応を感じ、二本の短剣を十字に構え防御の姿勢をとった。 (この魔力量、滴!) 突如床を突き破り下から巨大な氷塊が目の前を通る光景に僅かな戸惑いがあった璃音だったが、下にいる相手チームの滴を確認し、空いた穴から下へと降りた。 「最序盤からかなり派手にやるんだね、滴」 「そりゃ、こうすれば絶対にあなたは私の所に来るって分かってたから。璃音さん」 「じゃあ、大人しく倒されてくれないかな」 「それはちょっと無理かな、決勝戦でアキと戦いたいからさ」 両者が勢いよくぶつかり合い二刀流同士の激しい鍔迫り合いが始まった。ぶつかり合う金属音が訓練場中に響き渡り、上層の選手も少しずつ気づき始めていた。 二層ではタムが氷塊で空いた穴から下を覗きつつも同層の気配を探っていた。 「ちょっと早すぎるんじゃないかなぁ、滴さんにももう少し我慢ってものを知って欲しいんだけどなぁ、、、」 タムが背後の方に人の気配を感じ振り向くとそこには大剣を持ち歩いてくるオレンジ色の髪の人影があった。霊零浮佳だ。 「皆この穴に釣られてくる訳か、滴さんの狙いは早期決着って訳だね」 「彼女の行動が吉と出るか凶と出るか、それは他のメンバー次第なんだけどね。そうでしょう?皇帝」 「その呼ばれ方は久しぶりだね、五年前君たち怨霊廻がタム帝を抜けたのは覚えているよ。他の二人は元気にしているかな」 「ええ、あなたを倒せたらもっと喜んでもらえると思うよ」 霊零は前方へと踏み込みタムにタムとの距離を一気に詰めた。大剣を持っているとは思えない速さで近づいてきた霊零に対しタムは動揺一つせず、手のひらを床へと押し当てた。 ユニークスキル《創造》による力で床の一部を壁に変え大剣の一撃を受け止めた。 「僕が《創造》を手にする前、どうやって皇帝まで上り詰めたか、知らないわけじゃないだろう」 「確か、ここ一帯の無法者達を全員分からせて手下にしたとか。噂は幾らでもあるけど?」 「君が聞いてきていることは全て本当さ、《創造》で戦っているのはほんの小手調べだよ、防御に徹してても不利になるだけだろうしね。ここからは一瞬だ」 「《作り、書き換え、また生み出す》(アルベド)」 タムがスキルを発動すると、廊下の四方八方から棘が生え霊零の身体を貫いた。霊零は抜け出そうとしたが、その棘は身体を固定するように貫いていた。そして、棘が徐々に体内の魔力を吸収しているのを感じる。 「錬金術、でもこれでも全力じゃあないなんてびっくりだよ廊下のリソースのほんの一部だけでこれができるなんて。」 「《創造》は無限にリソースを作り出すことができる、つまり錬金術と組み合わせれば無限の錬成ができるのさ。そして、対象の魔力を吸収すればMP消費の心配もいらない」 「なんで、あなたが餅月箕白の下についているか、余計分からなくなったよ、、、」 霊零のHPゲージがゼロになり、光となって消滅した。タムは霊零を貫いた棘を消し去りコートを翻し廊下の先へと進んで行った。 「それは、いずれ分かるさ」 戦いの舞台は変わり、滴と璃音のいる最下層。 二人は熾烈な剣による攻防を続けていた。 両者二刀流の激しい剣さばき、スキルをぶつけ合い訓練場の地面には大きな亀裂が入っていた。 「まさか、こんな所であなたと戦うことになるとはね。滴ちゃん」 「私はあの時から超強くなった、だからあなたにだって負けない!璃音さん!」 滴の魔剣と璃音の紫色に輝く短剣がぶつかり合い両者に付与されている氷属性が訓練場中散らばった。 その影響は砕かれた天井まで届き、段々と崩れ落ちていった。 滴は璃音に向けて魔剣レーヴァテインから再び大氷塊を放った。凄まじい勢いで飛来する氷塊に対し璃音はもう片方の金色に輝く短剣のスキルを発動した。 短剣に込められたスキルは《韋駄天》。雷属性のスキルで超速の移動を可能にする。使用者次第で空中の移動も可能になる優れものだ、璃音は《韋駄天》を使い氷塊の上を駆けた。そして、二振りの短剣を構え滴へと突撃。 高速の剣撃で滴の身体にダメージを入れた。 落下する滴は、風属性魔法で体勢と整え、空中で硬直状態になった璃音に向けて落下する瓦礫伝って近づいた。 滴が近づくと同時に璃音の硬直状態が解け、二振りの短剣を交差させ滴の攻撃を受け止めた。 滴は空いている左手で璃音の腹部へ風属性魔法の《ウインド》を放ち地面へと叩きつけた。 すかさず雷、風、水の三属性の魔法による攻撃で追撃。 璃音は紫色の短剣に込められたスキル《闇障壁》を発動。闇の魔力障壁を展開し、滴の魔法攻撃をかき消した。 「滴ちゃん、流石に魔法連発し過ぎだよ。魔剣の力、不安定になってるみたいだよ」 「あ、衣が、」 滴の纏っていた白氷姫はほぼ完全に解かれてしまった。滴の魔法連発による魔力の減少で白氷姫を維持できる程の魔力がなくなってしまったのだ。 これにより、璃音の戦闘力は滴の戦闘力を僅かに上回った。 璃音は《韋駄天》を使い、滴との距離を一気に詰め短剣の一撃をお見舞した。 白氷姫が解け、懐ががら空きになっていた滴はその一撃をまともに受けてしまった。 滴のHPは二割を切り、同じく璃音も二割を少し割るほどだった。滴は、魔剣レーヴァテインを握りしめ、璃音に切りかかった。 「滴ちゃん、白氷姫が解けた今のあなたじゃ私には勝てないよ」 璃音は《韋駄天》で滴の攻撃をかわした。 今の滴の攻撃には先程までの速さはなく、璃音は滴の攻撃を完全に見切っていた。 《韋駄天》による高速軌道は滴を動揺させた。 しかし、滴は冷静さを取り戻し目を閉じた。 (今の私は白氷姫や魔法も使えない、そしてHPも残り僅か、今の私に出来ることは彼女の高速軌道の一撃をかわして懐に一撃を叩き込むこと!) 滴は剣を鞘に納め、璃音の一撃の瞬間を待った。 「「ここだ!」」 璃音が滴に《韋駄天》からの高速軌道の一撃を叩き込もうと突進した。 そして、滴は鞘から剣を抜剣。 両者共に懐に一撃を入れた。 「ふん、少しはやるようになったね」 「まだまだ強くなりますよ、私は」 両者の傷は深く、HPゲージは同時にゼロになった。 滴と璃音、両者が消滅。 こうして、最下層の戦いは決着した。 そして、三層のレイティーナは瞳を見つけるや否や、一言も発せずに闇属性魔法の《ダークホール》を使い、瞳を一瞬で呑み込み圧勝を決め、こうして準決勝第一試合は幕を閉じた。 試合が終わり、全員が待機室に転送された。 滴達三人が待機室で一息ついていると、突然エルロッテが訪ねてきた。 その紫色の瞳にはかつてない程の真剣さが映っていた。 「エルロッテさん、突然どうしたんですか」 「貴様に用があってきたのだ、雨草滴。少し私に着いてこい」 そう言うとエルロッテさんはスタスタと歩いていってしまう。滴は慌ててその後をついていく。 エルロッテと共にやってきたのは、セグリア城。エルロッテは人気のない場所へとやってくると、城の地下へと続く道を開いた。 (ここって、城の地下?こんな場所があったんだ) 「ここはかつて国中の科学者や錬金術師達がある研究をする為に使っていた場所だ」 「研究って、もしかして、、、」 「ああ、世界の壁を超える研究だ。そのために何十人という研究者がこの場所でその生涯を終えた、しかし約五百年かけて世界の壁を破壊しその先へと行く方法は完成し、そして一組のパーティーが七つある世界を渡り帰還した。それが勇者パーティーだ」 「勇者パーティー、私をここに連れてきたのは勇者について話すためなんですか」 「そうだ、今こそ話そう。この世界の勇者について、そして雨草滴。貴様と言う存在について」 エルロッテはどこか悲しげに天井を見上げ語り始める。 「勇者とは、この世界が創造された際、各世界に一人ずつ誕生した特殊なスキルを持つ者の事を指す。そして勇者の役目は世界が厄災に見舞われた際その救世主となる事、しかし勇者パーティーが世界を渡り歩いた際、他の世界の勇者とは協力する事が出来なかった。」 「何故なんです、勇者は世界を救うのが使命なんですよね。協力しなきゃ神々には勝てっこない。」 「それぞれの世界にはそれぞれの秩序や価値観が存在した。この第一世界の勇者を受け入れることのできる器を持つ勇者が居なかっただけだろう。第二世界大霊界幽世の巫 蓮実、第三世界機械文明国フェネレスのグェネス・アーカレウス、第四世界西大海シーアセイウムのキャプテン・ゼッケル、第五世界ネオアース2100の星空流星、第六世界空中要塞国家フェンゲットのルーカス・エース、第七世界ナーグバス大魔法共和国のリーゼン・スタットヘルン、そして第一世界首都セグリアの雨草 光 、これが五百年前に存在した勇者達だ」 「雨草光、って私のお母さん、、、。でも、五百年前なんて、そんなありえない」 「滴、貴様は確か18の歳だったな」 「はい、しかもお母さんは海外にいるはずだしそれに去年は家にも帰ってきてた。そんな事有り得るはずがないんだよ」 「じゃあ、その記憶全てが『作り物』だとしたら。貴様が歩んで来た今までの家族との人生、その全ての記憶が偽りだとしたら、貴様は信じられるか」 「嫌、そんなの嫌だ。私はずっと自分で考えて、自分で選択してここまで生きてきた!そんな事は絶対ない!絶対に信じない!」 滴はエルロッテに激昂をとばし、溢れんばかりの涙を拭った。 「そんな、そんなことを言うために私を連れてきたって言うんですか、、、」 「まだ話は終わっていないぞ、重要なのはここからだ。滴、貴様はこの国で、我と光、その仲間達で作った特別な魔導人形、人造勇者第一号なのだ」 滴は固まってしまった、何も理解出来なかった。 自分の手を確認し、普通の人と何も変わりない事を確認してもそれが怖くなってしまう。何処が人形だと言うのだろう。流れるこの涙も偽物なのか、疑いは増えるばかりだ。 「滴、何故自分だけが全属性を扱え、魔剣を手にし、仲間を束ねここまで来れたのか。それは我がここまで貴様を導いたからだ、全ては大いなる計画のほんの序章に過ぎない」 「大いなる計画、私を使って何をしようと」 「貴様は勇者の力を体内に埋め込まれた言わば影武者だ、その力を成長させ来たる決戦に向けて本当の勇者を導く、それが貴様の役割だ」 「私が偽物の勇者だって言うなら本当の勇者は私の身近な所にいるはず、それは一体誰なんです?それともまだ現れていないんですか」 「貴様もよく知っている人物だ、秋園桜。彼女が本当の勇者だ」 「アキが、勇者。でも、ついこの間まで紅月に捕まっていた彼女が何故勇者になんですか、本当に勇者ならあなた自身絶対にそんな風にさせないはずでしょう」 「あれは、彼女に対しても貴様に対しても試練だった。あの程度の事で死なれるようでは勇者として役には立たない、それに勇者の力は万能ではないのだから。貴様は勇者を導く立場、救えて当然、彼女も生き抜くのは当然という訳だ。我が手を下すまでもない」 「無茶苦茶だ、じゃあ選抜大会は!この戦いをする意味はあるんですか。私とアキ、それに精鋭を連れて行けば話は済むでしょう、何故こんなにも大掛かりにしたんです」 「簡単だ、貴様達が組んでいる者たち、その者達が共に向かう者たちという訳だ。大会は貴様達を鍛える口実だ、この世界の者たち相手に苦戦は許されない。神々の強さは先の戦いで敗れた阿修羅程度ではないのだからな。それに負けた者たちの中からも幾人かは選抜するつもりだ、流石に戦力としては物足りな過ぎる。先の準決勝も夜桜璃音と相打ちになっていたしな」 滴の脳裏に一つの不安がよぎる。 「エルロッテさん、あなたは私が勇者の力を持っていると言った。でも、肝心な能力の継承方法を教えてくれていない、どうすればアキに能力を渡す事ができるの。いつ何処で」 エルロッテは滴に歩み寄り、胸元に指を突き立て耳元で囁いた。 「貴様の死だ、貴様の死が引き金となり能力は継承される。そして、継承は既に可能となっている。能力自体はほぼ完成しているからな、いつでも構わん」 滴はエルロッテを突き飛ばし衝動的に鞘から剣を抜いた。剣先はエルロッテに向けられ、滴の額には冷や汗が流れる。 「へぇ、じゃあここで私を殺す事も厭わないと?」 「それは無い、我がここに貴様を呼んだのはこの事実を伝えるためだからな」 「話が終わったなら私は戻らせていただきます。仲間達が待っているし、アキとの試合がまだ残ってる」 「準決勝で負けるかもしれんぞ?」 「彼女は勇者なんでしょう、こんな所で負けるもんですか」 「もう少し待て、最後に見せなければならないものがある」 滴が剣を納めエルロッテに近寄ると近くの壁が動き出した。壁は大きく動き、部屋が拡大された。 すると、滴とエルロッテの右方向の壁に巨大な魔法陣が展開した。 黄色と白、二つの魔法陣が重なった物だ。 何処からかプオーンという汽笛が聞こえ、魔法陣からは巨大な黄金に輝く蒸気機関車が飛び出してきた。 汽車は部屋の壁ギリギリで止まり、運転席からは人が一人降りてきた。 小柄な男の子のようだ、服は汽車と同じ黄金色、車掌の帽子を被り丸眼鏡をかけたその少年は私たちの前に走ってくると敬礼をすると喋りだした。 「ハイ!どうも星界列車かがやき車掌を務めております、ハイルビス・ホロビー・ユナイクル・バンデス・アイナット・ヤジルビー・バイスターと申します!気軽に車掌君とお呼びください!エルロッテさん、お久しぶりですね!五百年ぶりでしょうか!お隣の女性は、、、光さんの娘さんですね!初めまして!」 元気な挨拶に圧倒される滴だったが、すぐに切り替えて質問を始めた。 「ど、どうも。えっとこの列車は、、、一体、」 「この列車はかがやき!正式名称は『星界移動用魔導力機関搭載型車両第一号』です!この列車さえあれば星界は勿論、どの世界でも行き来する事ができますよ!」 「我から説明しよう、この列車は車掌君の言った通り世界を行き来する為に使うものだ。今後君たちにはこの列車に乗って世界を行き来してもらう。とはいえ一度世界の扉を開いたら暫くはその世界との間しか行き来はできんがな」 「ハイ!なので僕が先程第三世界との線路を繋いできたんです、乗車人数の予約は十二名でしたね。えっとその方達はどちらに?」 「そのメンバーは今決めているところだ、もう少し待ってもらえるか」 「了解です!エルロッテさんは人使いが荒いので僕もかがやきもこの五百年は走りっぱなしですよ」 「まぁ、いいではないか。その方が君は落ち着くのだろう」 「はい!僕は汽車を愛し、汽車に愛された男!汽車と共にあれるなら本望です」 「という訳だ、滴。世界を繋ぎ、世界を渡り勇者達を繋ぐこの大いなる計画『エンゲージリング計画』へようこそ」 【終章第二幕】へ続く。

0
0
七色の君へ 終章第一幕

VEGA -StarlightCentury- プロローグ

【プロローグ】 全ての始まりは、一つの隕石だった。 地球に墜落した小さな隕石は、一夜にして人類に絶望と恐怖を植え付けた。 隕石内から出現した巨大な『怪獣』よって。 墜落地点は日本、東京。 隕石の大きさは、直径三十メートル。 その隕石は明らかに人類が認知していない性質を持つ金属によって作られていた。 そう、これは自然生成物ではなく、誰かが意図的に作った人工物だったのだ。 隕石内部から出てきた僅かな青い液体は徐々に大きくなり、恐ろしい怪獣の姿へと変わった。 人々は逃げ惑い、討伐へと動く自衛隊は怪獣の圧倒的な力に手も足も出ない。 各国が突如現れた怪獣に驚きを見せ、即座に討伐の動きを見せた。 しかし、、、翌朝、怪獣は忽然と姿を消した。 怪獣に対抗するために政府は怪獣討伐専門の部隊『龍星』を編成し、先日襲来した怪獣に"Enemy01"という名称を付けた。 各国の怪獣への対策は日に日に強化され、その後幾度となくEnemy01との攻防は続いた。 しかし、しばらくすると世界各地から次々と怪獣の目撃情報が報告されるようになった。 Enemy01襲来から四十年、現在政府の討伐した怪獣の個体数はおよそ十二体。 世界各地に存在している怪獣の数は三十八、未だ人類と怪獣達の戦いは続いていた。 そして、日本の東京、品川区に位置する日本怪獣研究開発所では今日四月七日、新たな兵器が生まれようとしていた。 研究所三階、VEGA開発専門室ではこの兵器開発プロジェクトの責任者、星空流星博士が第一号の最終調整に入っていた。 白衣に身を包み、大型収納カプセルの制御端末を弄っている流星博士。 その凄まじい集中力に同室に居た同じくプロジェクトの第二責任者であり、流星博士の幼馴染の城戸水咲博士も思わず息をのんだ。 調整が始まってから四時間が過ぎているのにも関わらず集中力を切らしていない流星博士に呆れた水咲博士はアイスコーヒー持って流星博士に話しかけた。 「流星君、そろそろ一度休憩したらどう?ほら、アイスでいいんでしょ」 「あ、ありがとう水咲さん。どうしても今日中にこの子を完成させたくてさ、ちょっと焦ってたみたいだ」 「どうしてそんなに焦るのさ、あとは最終調整だけでしょ?それに期限は明後日、まだ焦る段階じゃないでしょ」 「明日には所長が来るんだ、この調整法を使ったことがバレれば恐らく僕は殺される。そうなる前にこの子を逃がさなきゃいけないんだ」 水咲博士はむすっとした顔になり、流星博士の頬をつねる。 「全く君ってやつは、なんでもっと早く教えてくれないのさ。君が死ぬのは困るんだけど、それに君今日誕生日でしょ。お祝いするためにも早く帰ろうよ」 「そうだね、早いところ終わらせて一緒に帰ろうか」 水咲博士が端末に近づいていき、流星博士に向かって満面の笑みで言う。 「そうと決まれば、調整に戻ろう。この子が私達の初めての"子供"なんだから」 それを聞いた流星博士は、口に含んでいたコーヒーを吹き出した。いつもは白く綺麗な肌がリンゴの様に真っ赤に染まった。 「ちょ、ちょっと水咲さん!その言い方はなんというか、こそばゆいよ」 「ふふっ、流星君は子供とか興味ないと思ってたもん。私達結婚してだいぶ経つんだけどなぁ」 「それはごめんって、僕も研究に熱心になり過ぎてたよ」 閑話休題 しばらくして、最終調整を終えた流星博士はプログラムの起動ボタンを押し装置を起動させた。 静まる部屋に佇む大型収納カプセルの一つのの中で第一号が動き始める。しかし、安定していないのか目覚めてすぐにまた眠りについてしまった。 「さぁ、お目覚めの時間だぞ。ベガ」 流星博士は大型収納カプセルを開けると中にいたのは小柄な少女。腰まで伸びている白髪、血のように紅い目。第一号ベガをおぶると水咲博士と共に研究所を出て、自宅へと帰った。 自宅は研究所から歩いて十分程度の場所だ。 帰宅すると流星博士は研究所から持ち帰ってきた一つの注射器をベガの左腕に注射した。 少し苦しそうにするベガだったが、すぐに落ち着いた。 その光景を見ていた水咲博士は不安そうな顔で問いかけた。 「流星君、それ注射して大丈夫なの?確かその液体って、、、ベガ一人に全て使って問題はないの?」 「大丈夫さ。第一、元々注射する予定だった四十六号と三十号と二号は所長の管轄下にあるんだ。"コレ"を奪われてなるものか」 「流星君、、、」 「四十六体居ても、こちら側のコントロールが効くのは僅か五体なんだ。一体だって死んで欲しくはない、このベガは全世界の希望になれる子だ、だからコレを託す。君が設計して作ったんだ水咲さん、きっと優しい子になるよ」 蘭が立ち上がり、ベガをベッドに寝かせようとした瞬間、、、。 ドゴーン!! とてつもない振動と共に研究所の方から突然爆発音が聞こえた。 流星博士が窓から覗くと研究所の方向に一瞬キラリと光る物を見た。次の瞬間、流星博士は右肩を弾丸で撃ち抜かれた。 「ヴッ、、、もう気づいたのか。相変わらずだな、所長の勘の鋭さは」 「流星君!大丈夫!?すぐに手当てしないと!」 「今はベガを逃がさなくては、この子が所長の手に堕ちれば間違いなく戦争を始めてしまう。この世を地獄に変えないためにはこの子を、、、『過去』に送るんだ!」 「ホントにやるのね、流星君。だってそれは過去が変わってしまう。過去が変わってもこの世界は変わらない。それは知ってるでしょ、、、」 「分かってる、だけどこの子だけは絶対に逃がすんだ。行くんだ水咲さん、僕はここで奴らを食い止める。だから急いであの場所へ!」 そう言い、流星博士は白衣のポケットからバックルを取り出し腰に当てた。バックルから自動でベルトが伸び、腰に巻きついた。 胸ポケットから1枚のメダルを取り出しバックルに差し込み、バックルに付いているトリガーを引いた。 『CHANGE、サターン!サンドロックハンマー!』 バックルから音声が鳴り、バックルが発光し流星博士の左腕に黄金色の機械の腕が合体した。 「分かった、でも気をつけてね。生きてまた会いましょう」 「ああ、最後に、ベガに伝えなくては。起きるんだベガ」 そう言い蘭博士はベガの身体を優しく揺すった。 ウトウトしながらベガは目を開ける。小さく赤子のような声で「うぅん」とうなる。 「おはよう、流星」 「ああ、おはよう。早速だがベガ、君には昔の僕に会いに行ってこれを渡してほしい、これは全人類の希望だ。突然の事ですまない。片道切符だけど、頼めるかい」 流星博士がベガに手渡したのは自身が身につけているバックルと同じ柄の腕時計型のガジェットだった、ベルトには二つのメダルが付いている。 ベガは受け取ると少し不安な顔になるが、決意を固め流星博士の顔を見る。 「わかった、わたしがんばる」 ベガの顔をまじまじと見つめる流星博士の瞳には涙が滲んでいた。そのままベガを抱きしめると耳元で囁いた。 「ごめん、一緒に居てあげられなくて。こんな情けない父親である事をどうか許してくれ、過去はお前にとって辛い場所かもしれない。だけど、きっとお前が生きている意味を教えてくれる、どうかどうか生き延びて」 流星博士が言い終わると水咲博士はベガを連れて家を飛び出し、研究所とは真反対の方向へ走っていった。 (流星君、どうか無事で。) 水咲博士は心の中でそう呟く。 正面入口が爆破された研究所からは更に火の手が上がっていた。 流星博士は急いで研究所へ戻ると、沢山の大型収納カプセルのある部屋へとやって来た。 ここはVEGA開発研究室の隣に位置する二号から四十六号までを収納している研究室。 流星博士は全てのカプセルの起動ボタンを押し、万が一のために作っておいた、緊急停止ボタンを押した。 「これで戦いは止められる、過去は変えられる、、、」 「それは認められない、流星」 全VEGAが活動停止するととそれと同時に研究室に所長であるイルグリス・ファルートが二人の武装状態警備員と入ってきた。 流星博士と同じ細身で髪は金髪、澄んだエメラルドグリーンの瞳を持つ顔立ちの整った美青年だ。 彼もまた流星博士と同じく腰にバックルを付けている。彼はポケットから青色のメダルを取り出すとバックルに差し込みトリガーを引いた。 『CHANGE、シリウス!シャイニングフレイム!』 バックルから音声が鳴り、バックルが発光、流星博士とは違い全身に赤と黄色の装備を纏った。 「まさか、お前が全身換装の適合者だったとはな、、、驚きだよ。イルグリス」 「そういうお前は左腕の換装で精一杯みたいだな、流星。お前の計画は初めから分かっていたさ、ここでコイツらの活動を止めたとてお前を殺せばまた再開はできる、ここよりも更にいい場所でな」 流星博士はその場に座り込んだ。 先程までの大作業で体力を使い切ってしまったのだ。博士は細々とした声で語り出す。 「過去に送って向こうからゲートを開く計画か、それなら無理だぞ」 「なんだと、それはどういう意味だ」 そう言い、手に持っていた銃の銃口を流星博士の眉間に押し付けた。 流星博士は額に冷や汗をかきながらも語り続けた。 「僕の娘達がお前の野望を、あの時代であの時に必ず止めるからだ」 「今更だ、もう何も変わることは無い。もういい、お前は死ね」 ズダンッ 部屋中に銃声が鳴り響く。 西暦二一〇〇年 四月七日、日本怪獣研究開発所の爆破テロと怪獣研究者星空流星博士の死亡という二大事件によって全ての歯車が回り始めた。 Under the starry sky, I will keep walking with you, forever. EPISODE:001に続く

0
0
VEGA -StarlightCentury- プロローグ

ポケットモンスターWORLD 第5話:カントー地方編I

【カントー地方編Ⅰ:初めてのジム戦!ニビジム!】 翌朝、ソラとそのポケモン達は朝早くから気合いを入れるため特訓をしていた。 外から音がして、カエデもそこにやってきた。 「皆!今日のジム戦絶対に勝とうね!」 ソラの言葉にポケモン達は元気よく反応した。 「おやおや、朝から元気だねー」 「あ、カエデ。おはよう!そりゃあ今日はジム戦だからね!気合い入れなきゃ」 「それはいい事だね〜、ソラって対戦戦績はどのくらいなの?」 「え?一戦もしてないよ」 「まさか、、トレーナーと戦ったこともないのにジムリーダーと戦おうとしてたの?」 「え?ダメなの?」 「いやいや、相手はプロだよ。それじゃあ相手にもならないって」 「でも、、、」 カエデは少し考えた末、ソラに提案をした。 「そうだ、私とバトルしよう。それで経験値稼いじゃえー」 「いいね!じゃあお願いするよカエデ」 「よっしゃ、じゃあ位置に着いてー」 二人は位置に着いた。 バトルコートはポケモンセンターのものを使うことに。 「お互いポケモンは二体、ニビジムと同じ形式でやろー」 「うん、分かった」 「じゃあ行くよ!」 ポケモンカメラマンのカエデが勝負をしかけてきた。 カエデはモンスターボールを構え、バトルコートへ向かって投げた。 「レッツゴーヤドン!」 飛び出して来たのはヤドンだった。 「ヤーン」 「お願いフシギダネ!」 「ダネー!」 ソラが繰り出したのはフシギダネ、バトル開始だ。 先に動いたのはカエデだった。 「ヤドン!あくび!」 「ヤーン」 ヤドンのあくびによって、フシギダネは眠気に襲われている。 「こっちも動くんだ、フシギダネ!はっぱカッター!」 「ダネー!」 フシギダネははっぱカッターを繰り出したが、眠気に襲われているせいで、狙いが定まらずに外してしまう。そして、フシギダネは眠気には勝てずそのまま眠ってしまった。 「ダネ、、、スピ〜」 「ああー!フシギダネ、戻って」 ソラはフシギダネをボールに戻し、次のポケモンを繰り出した。 「お願いピチュー!」 ソラの二体目はピチュー、こちらもヤドンに有利を取れるでんきタイプだ。 「ピッチュー!」 「なるほど、交代を選ぶのか。ヤドン、戻って」 カエデもヤドンを戻した。 そして、カエデも二体目のポケモンを繰り出した。 「レッツゴーモフ助!」 「モフッ!」 「モフ助はくさタイプ、でんきタイプのピチューの攻撃は通りにくい、そして眠ってるフシギダネもくさタイプ。さぁ、どう戦うソラ」 「私のピチューを甘く見てもらっちゃ困るよ、私達はあのルギアと戦ったんだから!ピチュー、でんこうせっか!」 「ピチュー!」 ピチューのでんこうせっかはモクローに命中、後ろへと転がったモクローはムクっと起き上がる。 「よし、よく耐えたねモフ助。はっぱカッター!」 「モフー!」 モクローははっぱカッターを繰り出した、ピチューは素早くそれをかわしたが、僅かに反応しきれず食らってしまった。 「ピチュ〜、、、」 ピチューは戦闘不能になってしまい、ソラのポケモンは残り一体となった。 「よくやったね、ありがとうピチュー」 「強いよ、でも流石に旅立ってまだ時間が浅いからピチューの技のキレもあまり良くはないね」 「まだ終わってないよ、この子がまだ残ってる。お願いフシギダネ!」 ソラは残る一体、フシギダネを繰り出した。 しかし、フシギダネは先程の戦闘でダメージを負っている。眠り状態が解除されているとはいえ油断ならない状況だ。 「ダネ!」 「手加減はしないよ!モフ助でんこうせっか!」 「モフー!」 「フシギダネ、相手をよく見て、動きを止めて!つるのムチ!」 でんこうせっかで突撃してきたモクローはフシギダネのつるのムチで両翼を掴まれ動きを封じられた。 「よし!そのままはっぱカッター!」 「ダネー!」 動きを封じられた状態のモクローははっぱカッターの直撃を受けた。 つるのムチを解除したフシギダネの目の前には戦闘不能になったモクローが倒れていた。 「よく頑張ったよ、モフ助。ゆっくり休んでね」 カエデはモクローをモンスターボールに戻し、ヤドンを繰り出した。 「ヤーン」 「よーし、最後まで全力でいくよー!ヤドン、ねんりき!」 ヤドンのねんりきでフシギダネは宙に持ち上げられた。そして、地面に叩きつけられた。 フシギダネは、踏ん張って立ち上がってヤドンに狙いを定めた。 「最後だよ、フシギダネ!つるのムチ!」 「ダネダネー!」 「ヤーン?」 つるのムチに反応出来なかったヤドンはフシギダネの攻撃を食らって戦闘不能になった。 「あーあ、やられちゃった。お疲れ様、ヤドン」 カエデはヤドンをモンスターボールに戻し、ソラの近くへと歩いていった。 「カエデありがとう、私なんだが自信がついたよ」 「いんやー、私も全力だったんだけどなぁ」 「でも、ホントに強かった。いい経験になったよ」 「それなら良かったぁ」 「確か、ニビジムって岩タイプだよね。こっちが有利を取れるのってくさタイプのフシギダネか」 「あと一体は誰にするの?」 「それは本番のお楽しみだよ」 その後、ソラとカエデはポケモンセンターでポケモン達を回復してもらい、遂にニビジムへと辿り着いた。 ソラはジムの入口を開け、中へと入っていった。ジムの中はとても開放感のある広さで、受け付けでエントリーを済ませると、受け付けの男の人が奥へと案内してくれた。案内されるがまま、奥へと進むんで行くと、そこにはとても大きなバトルコートがあった。 明かりは付いておらず、いつも見ているバトルコートとは少し違い、岩がゴロゴロ転がっていたり、小さな岩山が沢山ある。 ソラが立った位置と反対の位置には腕を組み、どっしりと構えた男が立っていた。 明かりが付き、男の姿も見えるようになった。 男はソラに向かって話し出す。 「よく来たなチャレンジャー、俺はこのニビジムのジムリーダー、タケシ。君の名前は」 「私はマサラタウンのソラ、チャンピオンになる者だ!」 「それが固い意志であるならば、俺と俺のポケモン達の固い意志が、それ砕こう。俺の使うポケモンは岩タイプばかり、だが負けると分かってて戦う奴は居ない。さぁ、かかってこい!」 「私達は強くなって、いつかまたルギアと戦うんだ!ここで負ける訳にはいかない!」 そして、審判が前に出た。 『これより、ニビジムのジム戦を行います。両者使用ポケモンは二体、ポケモンの交代はチャレンジャーのみ可能とします。どちらかのポケモンが全て戦闘不能となった時点で終了とします。では、両者ポケモンを!』 両者がモンスターボールを投げ、一体目のポケモンを繰り出した。 「お願い!フシギダネ!」 「行け!イシツブテ!」 ソラはフシギダネを、タケシはイシツブテを繰り出した。 『それでは、バトル開始!』 審判の合図でバトルが開始された。 先手を取ったのはイシツブテ。 「イシツブテ、たいあたりだ」 「イッシ!」 イシツブテは勢いよくフシギダネ目掛けてたいあたりしてきた。 それを見たソラはすぐにフシギダネに指示を出す。 「フシギダネ、つるのムチでイシツブテを捕まえて!」 「ダネー!」 フシギダネはつるのムチを使い、たいあたりして来たイシツブテの動きを封じた。 観戦席ではカエデが試合の様子を見ていた。 (あれって、さっき私と戦った時に使ってた戦法!早速応用をきかせてるのかぁ、流石ソラ) 「そのままはっぱカッター!」 フシギダネは掴まえていたイシツブテにはっぱカッターを撃ち込んだ。 その勢いでふきとんだイシツブテは宙へと上がった。 すかさず、ソラは攻撃を続けた。 「つるのムチで地面に叩き落として!」 「イシツブテ、そのままたいあたりだ!」 イシツブテは宙からフシギダネに向かってたいあたりをした。フシギダネはそれをつるのムチで叩き落とそうとしたが、イシツブテの落下スピードが上回り、フシギダネに直撃。 「イッシ!」 イシツブテはまだ元気そうだ。 「フシギダネ、まだ戦える?」 「ダネダネ!」 フシギダネはソラの呼び掛けに応え、立ち上がった。 「よし、これで決めるよ!フシギダネ、とっしん!」 「イシツブテ!たいあたりだ!」 フシギダネはイシツブテに向かって突進した。 勢いのある突進はイシツブテのたいあたりを崩し、ジムの壁へとふき飛ばした。 審判がイシツブテを見ると、 『イシツブテ戦闘不能!フシギダネの勝ち!』 審判の判定により、フシギダネは勝利を勝ち取った。 「戻れ、イシツブテ。よく頑張ったぞ。よく育てられてるな、戦法も悪くない」 「ありがとうございます!でも、これで終わりじゃないです、このまま勝ちます」 「その心意気や良し、行け!イワーク!」 「イワーク!」 タケシの二体目はイワーク、イシツブテと同様岩、地面タイプのポケモンだ。 ソラはこのままフシギダネで続投。 だが、フシギダネはイシツブテのたいあたりと自身の突進のダメージが残っている。 タケシは速攻で攻撃をしかけてきた。 「イワーク!がんせきふうじ!」 「イワー!」 イワークは巨大な岩を次々と降らせ、フシギダネの退路を塞いだ。 「ダネ!?」 フシギダネはたいあたりやつるのムチで岩を壊そうとするが、岩はビクともしない。 「よし、イワーク!ずつきだ!」 イワークは退路を塞がれたフシギダネに向かって渾身のずつきをお見舞した。 「フシギダネ!はっぱカッター!」 「ダネダネ!」 はっぱカッターを繰り出して、跳ね返そうとするが、イワークの勢いは止まらずそのままフシギダネは頭突きを食らってしまった。 審判が近寄っていき、判断を下した。 『フシギダネ戦闘不能!イワークの勝ち!』 「ありがとうフシギダネ、ゆっくり休んでね」 「私のポケモンも残るは一体、お願いキャタピー!」 ソラの二体目はキャタピーだ。 観戦席のカエデは困惑していた。カエデはソラがポッポを出すと思っていたのだ、機動力、攻撃力並びにキャタピーを上回っているポッポではなくキャタピーを出した事に困惑していた。 「まさか、キャタピーを出すとはね。ソラ、どういう、、、」 イワークの攻撃の手は止まらない。タケシは追い討ちを続けた。 「イワーク!続けてがんせきふうじだ!」 「キャタピー!いとをはく!イワークをグルグル巻きにして!」 「キュー!」 キャタピーは移動しながら糸を吐き、イワークのがんせきふうじを避け続けた。 バトルコートはがんせきふうじの岩で溢れかえり、イワークは自身がキャタピーの動きを封じるために出した岩に囲まれ、身動きが取れなくなっていた。 キャタピーは糸を吐き続け、イワークの身体に大量の糸を巻き付かせた。 イワークは糸を簡単に引きちぎったが、僅かに残る糸がイワークの素早さを奪っていく。 「よし、キャタピー!むしくい!」 「キューー!」 積み上がった岩を越え、キャタピーは跳ね上がりイワークの頭にむしくいを繰り出した。 すると、同時にキャタピーは眩い光に包まれ、姿を変えていく。 光が消え、そこにいたのはキャタピーの進化した姿、トランセルだ。 トランセルはイワークにむしくいを繰り出し続け、イワークを倒した。 イワークが倒れた衝撃で積み上がった岩が崩れ、イワークは押し潰れされた。 「イワーク!大丈夫か!」 審判が近づいていき、イワークを確認した。 『イワーク戦闘不能!トランセルの勝ち!よって勝者チャレンジャーソラ!』 「やったー!勝ったんだ!ありがとうトランセルー!進化おめでとう!」 「トランセル!」 「よく頑張ったぞ、イワーク。ゆっくり休んでくれ」 タケシはイワークをボールに戻すと、ソラに近寄って行った。 「おめでとう、君にはこれを。ジムリーダーに勝利した証、ポケモンリーグ公認のグレーバッジだ」 「ありがとうございます、タケシさん。これで一個目、やったー!」 ソラはグレーバッジをリュックから出したバッジケースに入れた。 「次に行くジムは決めているのかい?」 「いえ、まだですけど」 「なら、この先にあるハナダシティのジムに挑戦するといい」 「ハナダジムか、行ってみます。では!」 観戦席で見ていたカエデもモフ助も喜んでいる。 「ソラー、おめでとうー」 「モフー!」 「二人ともありがとう!一緒に行こ!」 「うん!」 二人はニビジムを後にし、ポケモンセンターでポケモン達を回復してもらい、ニビシティを出て東へと向かった。次の目的地はハナダシティ、ソラとカエデの旅はまだまだ続く。 【第6話:カントー地方編Ⅱ】に続く、、、。

0
0
ポケットモンスターWORLD 第5話:カントー地方編I

ポケットモンスターWORLD 第4話:旅立ちIV

【旅立ちIV:風のルギアと轟く雷鳴】 ソラは次にポッポを繰り出した、ルギアはまだピンピンしている。 ポッポは目の前にいるルギアに対して恐縮してしまい、戦闘拒否という名のボール戻りをした。 「な!?ポッポ!、、、まぁ、無理もないよね。よし!フシギダネお願い!」 次に繰り出したのはフシギダネ、ルギアに対してくさタイプ技はいまひとつの効果しかないが、今のソラにそれはそこまで関係なかった。 ただ、このバトルを楽しみたかったのだ。 「フシギダネ!はっぱカッター!」 「ダネダネー!」 「ギャーアアス!」 フシギダネのはっぱカッターはルギアの咆哮によって砕け散った。 「ダネ!?、、、ダネダネー!」 フシギダネは、それを見てビビったが余計に闘志に火がついた。 「いいよフシギダネ!ツルのムチでルギアを下に落とすんだ!」 「ダネダネ!」 フシギダネがツルのムチでルギアの足を掴んだ。 ルギアは身体をものすごい勢いで回転させてフシギダネを振り払おうとした。 その勢いでフシギダネは空高く飛び上がってしまい、ルギアはフシギダネにエアロブラストを放った。 直撃したフシギダネは地面に落ちていきながら渾身のたいあたりをルギアに入れた。 落下の速度がつき、威力は通常の数倍になっていた。 ルギアも流石に応えたのか、地面に足を着けた。 「ギャーアアス!ギャアアス!」 地面に着地したフシギダネだったが、たいあたりの時の反動が効いてきたのかすぐに戦闘不能になってしまう。 「ありがとうフシギダネ、ゆっくり休んでね」 ソラはフシギダネをボールに戻し、最後のポケモン、ピチューを繰り出した。 「お願い!私のパートナー!」 「ピチュー!」 ピチューはやる気満々のようだ、ソラはそれに応えて元気よく指示を出す。 「ピチュー!たいあたり!」 ピチューはルギアに向けて走り出した。 ルギアはピチューに向けてエアロブラストを放つ。 「ギャーアアス!」 「ピチュー避けて!」 「ピッ!」 エアロブラストを避けると、ピチューはたいあたりの勢いを更に上げ、電光石火の如く速さで突撃した。 「ピッチュー!」 「凄いよ!でんこうせっか使えるようになったんだ!それじゃあもう一度、でんこうせっか!」 「ピチュー!」 ソラの指示でピチューはすぐに体勢を整え再度でんこうせっかを繰り出した。 凄まじい速さでルギアに突撃し、僅かに仰け反らせた。 怒りを覚えたルギアはピチューに向けて全力のはかいこうせんを放った。 「ギャーアアアアアアス!!」 ピチューはソラに顔を向けてやれるぞと言わんばかりの鳴き声を上げた。 「ピチュ!」 「分かった、信じるよ!ピチュー、全力のでんきショック!」 「ピチュピチュピチュピッチュー!」 ピチューから放たれたでんきショックはでんきショックとは言えない程の放電量だった。 本来ピチューの放電量には限界があるのだが、今ピチューが放っている電力量はそれを遥かに超えている。 今ピチューは自身の限界に挑戦しているのだ。 ソラはそれを信じて全力のでんきショックを指示した。 ルギアの全力とピチューの全力がぶつかり合い、両者の技は相殺しそうになったがルギアの力はあまりに強大過ぎた。 ピチューのでんきショックは押し返され、はかいこうせんはピチューに直撃。 ピチューはソラの所まで吹き飛ばされソラの腕の中で戦闘不能となった。 ソラも力が抜けたのか地べたに尻もちを着いてしまった。 「ピチュー、みんな、ほんとにありがとう、、、」 「ピ、チュ、、、」 「ピチュー、最後のでんきショック凄かったよ。まるで10まんボルトみたいだった」 ルギアはソラ達を見てどこか満足そうな顔をし、その場から飛び去ってしまった。 「ルギア、凄かったなぁ。ねぇピチュー」 「ピチュ?」 「いつか、私達がもっと強くなったらルギアまたバトルしてくれるかな」 「ピチュピチュ!」 ピチューは、ソラの頬に抱きつきながら「きっとできるよ」と言った。そう、ソラは感じたのだ。 その後、ソラ達はポケモンセンターで傷を癒した。 ソラに至ってはルギアとの勝負で服が泥まみれになってしまい、ポケモンセンターで洗ってもらう事に。 その間着替えで過ごすことになり、しばらくニビシティに滞在する事にしたソラ。ニビジムでの戦いに向けて、元気になったポケモン達はポケモンセンター裏にあるバトルコートで特訓をする事に。 ルギアとの戦いの後、どうやらソラのポケモン達にはもっと強くなりたいという向上心が生まれたようだ。 一匹を除いて。 「ポッポ、もしかして戦いが苦手なの?」 「ポゥ、、、」 「無理に戦わなくても大丈夫、私はあなたの意思を尊重するから」 それを聞き、ポッポは嬉しそうにソラの肩に乗った。 「ポー!」 バトルコートではやる気満々なフシギダネとピチューが特訓をしていた。フシギダネは木に向かってツルのムチを繰り出し、その命中率と威力の向上を。 ピチューはでんこうせっかの洗練と電気放電量の調整をしていた。 対してソラは相当疲れたのか、コート外にあるベンチでキャタピーとポッポと休憩していた。 ジョーイさん曰く、キャタピーは進化の兆しがあるがルギアからのダメージが大きくしばらくは休ませるようにとの事。 ソラには分かっていた、あのルギアと僅かながらも戦えていたのはキャタピーの糸でルギアの素早さが少し下がっていたからだと。 あの攻撃がなければおそらくピチューやフシギダネもあそこまで戦えてはいなかっただろう。 「私、私ももっと強くなりたい。もっと沢山のポケモンと出会って強くなりたい」 「ほほう、そこのお姉さん。いい顔だねぇ〜グッドだよ〜」 そう言い突然声とカメラのシャッター音がソラの右横から聞こえた。 突然の事でびっくりしたソラだったが、そこに居たのは自分と同じ歳くらいの女の子だった。 夜でもよく映える金髪とおっとりとしたタレ目。 首にはカメラをぶら下げていて、背中には少し膨らんだリュックを背負っている。 「えっと、あなたは?」 「私カエデ、しがないポケモンカメラマンだよ〜。昼間のルギアとのバトル見てビビッ来ちゃってさぁ〜」 「はぁ、私はソラ。えっと何の用かな」 「私にあなたの取材させてくれなーい?」 「しゅ、取材?私の?」 「そうそう、私ね遥々アローラ地方から来たんだけどカントー地方は初めてでさー。いい取材をできそうな人探してたのよー」 「私なんかでいいのかなぁ。トレーナーは沢山いるよ?」 「君がいいの。ルギアとのバトル、ほんとに凄かった。他のトレーナーなんかほぼ瞬殺だったから、あそこまで戦えた人は君だけだったよー」 「そうなんだ、じゃあ少しなら、、、」 「ありがとう〜、これからヨロシクね〜」 ソラとカエデは握手を交わした。 カエデは背中のリュックを下ろし、チャックを開けた。中では一匹のポケモンがスヤスヤと気持ちよさそうに寝ていた。 ソラはその姿に思わず見とれてしまった。 「可愛い、、、この子は?」 「モフ助、私のパートナーだよぉ」 「モフ助?」 ソラはスマホロトムを取り出し、モフ助にかざした。 ロトムは元気よく解説を始めた。 『ケテー!モクロー、くさばねポケモン。くさ、ひこうタイプ。狭くて暗い所が落ち着く。トレーナーのふところやバッグを巣の代わりにする事もある』 「モクローか、もしかしてアローラのポケモン?」 「そうだよー、トレーナーになって初めて貰ったポケモンなんだぁ。そうだ、ソラのパートナーは?」 「私のパートナーはあそこにいるピチューだよ、私達はポケモンリーグに挑戦するために旅をしているの。て、バッジはまだ持ってないんだけどね」 「ほほう、ではまだ旅立ったばかりの雛というわけですなぁ」 「そうだ、カエデの夢ってなんなの?カメラマンだって言ってたけど」 ソラが聞くと、カエデは空に浮かぶ月を見上げながら答えた。 「私の夢はねぇ、私の撮ったポケモンの写真だけでポケモン図鑑を完成させる事なんだぁ。だから、こうして旅をしているの」 「めっちゃいいじゃん!お互いに頑張ろうね」 「うむ、よろしく」 「そうそう、明日にでもニビジムに挑戦しようと思ってるの、カエデも一緒に来る?」 「勿論ついてくさぁ、私はソラの取材をしたいからねぇ」 こうして、ソラとカエデは共に旅をする事になった。 お互いに夢を叶えるために。 その後、二人はポケモンセンターに泊まり次の日を迎えた。 (いよいよジム戦だ、絶対に勝つ!) 【第5話:カントー地方編Ⅰ】に続く。

2
0
ポケットモンスターWORLD 第4話:旅立ちIV

ポケットモンスターWORLD 第3話:旅立ちⅢ

【旅立ちⅢ:トキワの森】 翌日、ソラはトキワシティを後にしてトキワの森を訪れていた。何故トキワシティのジムへ行かなかったのか、それは現在ジムリーダーが不在でジムが開いていなかったからだ。 昨年ある事件があり、トキワジムはジムリーダーが変わった。じめんタイプで有名だったトキワジムは今はこおりタイプでその実力を見せていた。 そんな訳で、次に向かうのはトキワの森を抜けた先にあるニビシティ。 そこにあるニビジムにはいわタイプを得意とするジムリーダーのタケシがいる。 ソラはそれに対抗するため、トキワの森で弱点の突けるくさタイプのポケモンを捕まえようとしていた。 「うーん、中々いないなぁ。どのポケモンならいいんだろう。ロトム、トキワの森に生息しているポケモン分かる?」 『ケテー、キャタピーやビードル等のむしタイプポケモンに加え、マダツボミやナゾノクサ等のくさタイプポケモンも生息しています』 「そうかぁ、じゃあ探せばいるかもね」 ソラは草むらをかき分けながら進んだ。 森は木々が生い茂り、空からの光が遮られているせいか少し薄暗かった。 少し進むと光が集中的に集まっている岩を見つけた。 よく見ると、その岩の上ではフシギダネが光合成を行っている。 日光を浴びて、とても気持ちよさそうだ。 ソラは、恐る恐る近寄りモンスターボールを構えた。 (まさか、こんな所にフシギダネがいるとは。これはチャンスだ!) そして、タイミングを見定めソラはモンスターボールをフシギダネ目掛けて投げた。 (いっけー!モンスターボール!) 今回は少し避けにくいカーブで投げ命中性を上げた。 ボールはフシギダネに命中し、中に収納した。 ボールは岩の上に落ちて一回、二回と揺れた。 しかし、三回揺れる前にフシギダネが中から出てしまい突然攻撃してきた。 「ダネー!」 それに対してソラはキャタピーを繰り出した。 「キャタピー、いとをはく!フシギダネの動きを止めて!」 「キュピー!」 キャタピーのはいた糸はフシギダネのツルのムチで弾かれた。 しかし、ムチに絡みついた糸がフシギダネの動きを止める。それを見たソラはキャタピーに次の指示を出す。 「いいよキャタピー!たいあたり!」 「キュキュー!」 キャタピーのたいあたりに対してフシギダネもたいあたりを繰り出してきた。 両者のたいあたりがぶつかり、両者に少しのひるみが出た。 そのタイミングでソラは再びモンスターボールを投げる。 再度ボールに収納されたフシギダネ、ボールは一回、二回、三回と揺れてカチッという音と共に止まった。 『ケテー!フシギダネが新しく図鑑に登録されます』 「やったー!フシギダネゲット!ありがとうキャタピー!」 「キュッキュー!」 「早速出てきてフシギダネ!」 フシギダネをボールから出したソラはフシギダネのムチに絡みついた糸を取ってあげた。 「ダネダネ、ダーネ」 フシギダネは少し不機嫌そうにしていた。 その表情からは「次は、負けない」と言っているようだった。 「いいねいいね、一緒に強くなろフシギダネ」 「ダーネ」 「そうだ、こんなに森の奥へ来ちゃったけど出口どっちだろう。」 「ダネ、ダネダネ」 「え?出口分かるの?」 ソラは肩にキャタピーを乗せ、フシギダネに導かれるままに進んで行った。 そして、フシギダネに連れられてトキワの森を抜けたソラ達はニビシティへとやって来た。 ニビシティのポケモンセンターに行くと、何やら騒がしくしていた。 受付待ちのトレーナーが沢山いる。 しかも、その手には傷を負ったポケモンが。 ソラはそのうちの一人に話しかけた。 「すいません、何かあったんですか。この騒ぎって」 「ルギアだよ。伝説のポケモン、ルギアが現れたんだ」 「ルギア!?この近くなんですか」 「まだこの近くにいる筈だよ、ここのトレーナー全員ルギアに挑んで返り討ちにあったんだ」 「教えくれてありがとう、じゃね」 「ちょっとアンタ、まさかルギアに挑むつもりじゃ」 「こんなチャンス滅多にないんだ、私だって!」 ソラはポケモンセンターを飛び出してルギアを探した。ニビシティを走り回っていると、遠くからルギアの鳴き声が聴こえた。 「ギャアアーース!!」 ソラが上を見上げると、そこにはルギアの姿があった。旅を始めてまだ二日、しかもまだポケモンはそこまで育っていない。 「ねぇルギア!私とバトルしよ!」 「ギャーアアス!」 そして、ルギアは戦闘の構えになった。 ソラはポケットからモンスターボールを出し、ルギアへ向けて投げた。 ソラが最初に繰り出したのはキャタピー。 キャタピーはやる気満々のようだ。 「キャタピー!いとをはく!」 「キュピー!」 キャタピーはルギアを糸でぐるぐる巻きにした。 ルギアは素早さが落ちたが、糸は容易く切られてしまった。 ルギアは攻撃の体勢に入った。 キャタピーは少し怯えているが、ソラは思い切って攻撃の手に出た。 「キャタピー!たいあたり!」 「キュッピ!」 キャタピーのたいあたりはルギアにはほぼダメージを与えられなかった。 そして、ルギアはキャタピーに向けてエアロブラストを放つ。強力な風がキャタピーを包み、吹き飛ばした。 地面に落ちたキャタピーは倒れるのを必死にこらえた。今にも倒れてしまいそうなキャタピーを見てソラはボールへと戻そうとした。 しかし、キャタピーはそれを拒否。 まだ戦えるという意思表明をしたのだ。 その心意気にソラは少し涙目になった。 「キャタピー、、、じゃあ行くよ!むしくい!」 「キュピキュピキュピー!」 キャタピーの最後の突撃はルギアに僅かに届きルギアの急所へと攻撃を入れた。 しかし、キャタピーは力尽き空中で戦闘不能状態になってしまった。 ソラは溢れそうになる涙を拭い、キャタピーをボールに戻した。 「ありがとうキャタピー、お疲れ様。もっと強くなろう。次は、ポッポお願い!」 ソラが次に繰り出したのはポッポだった。 【第四話:旅立ちIV】に続く。

0
0
ポケットモンスターWORLD 第3話:旅立ちⅢ

ポケットモンスターWORLD 第2話:旅立ちⅡ

【旅立ちⅡ:初めてのバトル】 ソラは少し悩んだ末、胸に抱いているピチューを見て言った。 「ねぇピチュー、私のパートナーになってくれない」 それを聞いたピチューは、嬉しそうに頬をソラに擦り付けた。 「ピチュピチュー!」 「ありがとうピチュー!これからよろしくね!」 「ピチュー!」 その様子を微笑ましく見ていたヤナギ博士はしゃがみこみ、三匹の初心者ポケモンを慰める。 「そうか、その道を選ぶか。残念だったなぁ皆ぁ」 「カゲー」 「ゼニー」 「ダネー」 しかし、選ばれなかった三匹はどこか満足気にボールへと戻って行った。 「さて、最初のポケモンが決まった訳だがこれから旅に出るのにポケモンの事をもっとよく知れるようにこれを渡しておこう」 ヤナギ博士は、ポケットから赤色の四角い板を出した。 「これなんですか」 「スマホロトムだ、ポケモン図鑑や電話、色々な機能が入っている優れ物だ。使うといい」 「ありがとうございます博士!」 「それと、これはピチューを入れるためのモンスターボールだ」 ソラは、一つのモンスターボールを手渡された。 ソラがボールをピチューへと近づけると、ピチューは自分からボールのスイッチ部分に頭を付けた。 ピチューはボールの中へ収納され、ボールは三回揺れた末カチッと言う音と共に止まった。 ポケットに入れていたスマホロトムが反応し、ポケットから自分から飛び出してきた。 『ロトロトロトロト!ピチューが新しく図鑑に登録されます!ピチュー、こねずみポケモン。でんきタイプ。電気を溜め込むのが下手。何らかのショックを受けるとすぐにほうでんしてしまう』 どうやら、ピチューを捕まえたという事で図鑑登録されたみたいだ。 スマホロトムは、ピチューの図鑑説明をするとポケットへと戻って行った。 「さて、これで旅立つ準備ができた訳だが心の準備はできているかな」 「はい、私準備出来てます!」 「では、行ってらっしゃい。まだ見ぬ冒険とポケモン達が君を待っているぞ」 ソラは、元気よく研究所を飛び出してその先の道へと走り出した。 そして、ソラの冒険が始まった。 始めに通ったのは一番道路、横幅が広くなんの変哲もない道路だが、ソラにとっては自身のスタートを告げる始まりの道だった。 近くの木から何かが飛び立ったのに気づき、スマホロトムを取り出してかざしてみた。 すると、ポケモン図鑑が反応した。 『ケテー!ポッポ、ことりポケモン。ノーマル、ひこうタイプ。戦いを好まない大人しい性格だが、下手に手を出すと強烈に反撃される』 「ポッポか、私の初めてのバトルにもってこいだね!お願い!ピチュー!」 ソラは、ポケットからピチューのモンスターボールを取り出しポッポ目掛けて投げた。 ボールから飛び出したピチューは、ポッポに突撃した。激突されたポッポは地面に落ちた。 一緒に地面に着地したピチューは、戦闘の構えに入った。立ち上がったポッポは、両羽を広げて風を起こした。ピチューは風を堪えながらソラを見る。 「ピチュー!」 「分かったよピチュー、たいあたり!」 「ピチュピッチュー!」 ピチューのたいあたりがポッポに炸裂した。 ポッポはよろけている。 それを見てソラはポケットからモンスターボールを取り出し、ポッポに目掛けて投げた。 「いけー!モンスターボール!」 「ポッポー!」 ポッポは、体勢を立て直しボールを風を起こし吹き飛ばした。吹き飛ばされたボールはソラの顔を直撃。 「痛っ!ああーもう、ピチューでんきショック!」 「ピッチュー!」 ピチューの放ったでんきショックは風を起こしていたポッポを直撃した。 ポッポはまひ状態になり、ソラは再度ボールを投げる。 今度はボールがポッポに命中し、弱ったポッポはボールに収納された。 ポッポを収納したモンスターボールは地面に落ち、一回、二回、三回と揺れ、カチッという音と共に止まった。 ソラはモンスターボールを拾い上げると空へと掲げた。 「やったー!ポッポゲットー!」 「ピチュー!」 『ケテー。ポッポが新しく図鑑に登録されます』 ソラと一緒になってピチューもはしゃいでいた。 二人は少し落ち着くと、この一番道路を抜けた先にあるトキワシティーに向けて走り出した。 三十分程進んでいき、トキワシティに着いたソラとピチュー。真っ先に向かったのは赤い屋根の建物。 そう、ポケモンセンターだ。 ここではポケモンの回復したり、預けたり引き出したり、トレーナー等が宿泊する施設などがある。 ソラは予め研究所に頼んでポケモンを預けられるようにしているため、もし手持ちが六体以上になってもここから預ける事が出来るようになっている。 ソラとピチューはセンターの奥のカウンターにいるピンク色の髪のお姉さんに話しかけた。 彼女はこのポケモンセンターでポケモンの回復等の仕事をしているジョーイさんだ。 各町にあるポケモンセンターに一人ずついるが、皆同じ顔をしていてとても不思議な存在だ。 「すいません、ポケモン達の回復をお願いします」 そう言い、ソラはピチューとポッポのモンスターボールを差し出した。 ジョーイさんはそれを受け取り、ピチューはボールに戻った。 「はい、少々お待ちください」 それから少し経ち、ジョーイさんが戻ってきた。 「お預かりしていたポケモン達は皆元気になりましたよ。またのご利用お待ちしております」 「ありがとうございます、ジョーイさん」 ソラはジョーイさんから二つのボールを受け取りポケットに入れた。するとジョーイさんがソラを呼び止めた。 「そうだ、あなた新人トレーナーさんよね。少しお願いを聞いてもらえないかしら」 「お願いですか?」 「はい、かなり前にあるトレーナーさんが置いていかれたポケモンがいるの。もし良ければ受け取ってもらえないかしら」 「ちなみにどんなポケモンなんですか?」 ジョーイさんはカウンターの下からモンスターボールを一つ取り出した。 「この子はキャタピーよ、前のトレーナーさんが要らないと言って置いていってしまったのでこちらとしても困っていたの。もし良ければ引き取ってもらえないかしら」 ソラはピチューの事を思い出した。 トレーナーがポケモンへの責任を放棄するなんて許せない、そう思ったソラはジョーイさんの提案に乗った。 「はい、私で良ければ」 「ありがとう、この子もきっと喜ぶわ。宜しくね」 ジョーイさんからキャタピーのモンスターボールを受け取ったソラはポケモンセンターを後にした。 トキワシティの池近くのベンチに腰を下ろしたソラはキャタピーをモンスターボールから出した。 「キュ?」 ボールから出たキャタピーはソラの事を見て少し怯えていた。 持ち主が突然変わって少し怖いのだろう。 「キャタピー、こっちにおいで。大丈夫、怖くないから」 「キュー、、、」 それでも、キャタピーは少しずつソラの方へと近づいて行き、ソラの膝の上で座った。 ソラは、キャタピーを優しく撫でた。 「ありがとう、信じてくれて。これからよろしくね」 少し日が傾いて来た。 ソラはポケモンセンターに泊まり、その日はピチュー、ポッポ、キャタピーと一緒に就寝した。 こうして、ソラ達の冒険は幕を開けたのであった。 【第三話:旅立ちⅢ】へと続く

2
0
ポケットモンスターWORLD 第2話:旅立ちⅡ