黒ノ助
3 件の小説桜の伝説
ねぇ知ってる? この学校の裏にある桜の木の下で告白が成功すると そのカップルは一生幸せになれるんだって! 十年前… 「ねぇ、この桜の前で一緒に写真撮らない?もう卒業近いんだし」 一緒に下校している彼女はそう僕を誘ってきた。 「え…いいけど、なんかカップルみたいじゃない?別に付き合ってる訳じゃないんだし…」 僕は彼女の事が好きだ、告白するタイミングが分からなかったが、これはいいチャンスだと思う。 「よし!じゃあ行こ!早く早く!」 彼女はそう言うと早歩きで学校裏の桜の前へと向かってしまった。 そうして僕達は二人でスマホをかざし、桜を背景に写真を撮った。 すると突然、僕の耳元で誰かが語りかけてくる、 『お主と彼女は一生幸せになる』 と。 しかし周りを見渡しても僕の側には彼女しかいない。 僕は不思議に思いながらも勇気を出して彼女に告白した。 「僕と付き合ってください!この桜の様に一生守りたいんだ!」 彼女は少し照れながらも小さくこくんと頷いた。 「約束だよ」 そうして僕達はようやく付き合う事が出来た。 それから僕達は末長く幸せに暮らしていく。 この桜の舞い散る日を思い出しながら。
お別れ
「ここかな、302号室。」 僕は入院している彼女に話があると呼ばれ病室へと 足を運んだ。 「入るよ」 僕はノックを3回してゆっくりと中へ入る。 「いらっしゃい!」 彼女は読んでいた本を机に置き、明るく出迎えて くれた。 「話って?」 そう聞いた途端彼女は一瞬下を向いて顔を上げ、 悲しげに話し始めた。 「実はもうそんなに長く持たないみたい。だから最後 にお別れを言いたくて…」 辛い、とても辛い。僕はもう返す言葉が浮かばなか った。 「私は君に逢えて本当に良かった!楽しい人生だった よ!ありがとう」 そう伝えてくれた数日後、彼女は息を引き取った。 それから僕は彼女のお墓参りに行く度に、 「僕も楽しい思い出をありがとう」 そう伝える。天国へ届くように。
黒猫の叶わぬ恋
僕はご主人様に恋をしている。 抱いてくれた時のシャンプーの良い香り、 ご飯をくれる時の優しい笑顔。 それにいつも出かける時の行ってきますやただいま の彼女の挨拶にも… なのにどうして、最近僕が側にいるのに突然泣いて しまったり、僕と一緒に初めて撮った写真に 話しかけているんだろう? 僕はここにいるからもう泣かないで。 「にゃーん!」 「え?クロが鳴いたの?私が寂しくて泣いていたから?」 僕はずっとご主人様が大好きだよ!これからも 永遠に! そっか、僕はもう亡くなったんだ… なんで忘れてたんだろう、もうお別れが近いはずなのに。 もし生まれ変われるならご主人様と同じ人間になりたいな! もうそろそろ行かなくちゃ、 楽しい人生をありがとう! さようなら!