結婚相手。
昨日の夜、最愛の彼女にプロポーズした。
結果は「よろしくお願いします」の一言だった。
プロポーズは成功したらしい。
そのことを、初恋の彼女に報告した。
初恋の人と行った、初デートで訪れた喫茶店。
久しぶりに来たけれど、雰囲気もぜんぶ当時のままだった。
「それでさぁ、あんなに勇気出してプロポーズしたのに、『よろしくお願いします』の一言だけだったんだよ。泣いてなかったし、ほんとに嬉しかったのかな」
初恋の相手に、結婚相手の愚痴を話した。
初恋の彼女は大きく笑っていた。
まるで俺を小馬鹿にするように。
「それで?不安になっちゃったんだ」
「いや、不安というかその……もっと喜ぶ姿見たかったなって」
「へぇー、その人のこと愛してるんだね」
「まぁ、そりゃ愛してるよ」
初恋の相手はニヤニヤと口角を上げていた。
「お待たせいたしました。こちらデザートのいちごパフェです」
「わぁ、これ私がすっごく好きだったパフェ!ねぇ、覚えてる?」
「うん、覚えてる。たしか中学生の頃、週末に毎週来させられたし」
「ねぇ、来させられた、ってなによ。かわいい私が幸せそうにパフェ食べてる姿が愛おしいってノコノコついてきた癖に」
「そんなときもあったね」
あの頃とは生きる世界も、年齢も、関係性もなにもかも違った。
けれど、変わらない彼女の食べっぷりは見てて微笑ましく感じた。
「その人はさぁ、どんな人?」
最後に残ったいちごを、初恋の彼女は僕に差し出した。
優しい人って言ったら、ありきたりでつまらない。
かわいい人って言えば、まるで僕が顔だけで結婚相手を選んだみたいになってしまう。
それと同時にまるで目の前の彼女と付き合っていた理由もそれになってしまう。この手の質問は変わらず苦手だ。
「私が彼女だったとき、あなたは私のこと優しい人って答えて、怒ったときあったよね。そんなんじゃ私は喜ばない。0点だって」
「あー、そんなときもあったね」
「で、どうなのよ?」
逡巡した矢先、
「パフェの最後に残ったいちごを、差し出してくるような人」
そう答えた。
「ねぇ、なにそれ。まぁでもマシにはなったかな。50点!」
じゃあ行こうか、と立ち上がる彼女。
差し出された手には、指輪がはめられている。
昨日、僕が渡したダイヤモンド。キラキラと輝きを放っていた。
「また来ようね」
「次は100点の答え待ってるからね」
彼女が僕の頭をわしゃわしゃと撫でる。
いつかまた、初恋の相手と来れる日が楽しみだ。