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幼なじみの雨宿り〜ロマンチック、始まらない〜

ぽつり。 そしてまたぽつりと雨が降り、本格的な土砂降りに巻き込まれた私達は公園の遊具の中に隠れた。 傘持ってないときに限って雨降るのなんでとかいう曲があるけど、正にこのことだ。 そして前に傘を持った日は見事な晴天だった。 にしても公園にくるなんて十数年ぶりだ。 会社に勤めるいい大人なのに、何だか秘密基地に居るみたいでどきどきしたけど、そんなのきっと私だけ。 隣の君はカバンの中の書類やら何やらを気にして、私のことも自分のことすらも目に留めない。 仕事本位に生きる彼が好きだから、そんなことは愚痴愚痴言うつもりはないけど。 「良かった〜こっちは無事そう…って!ずぶ濡れじゃん大丈夫?」 「平気だって。てかひーくんの方がひどいよ?」 「俺はいいんだよ…お前と違ってすぐ風邪とかひかないし。ほらコレ。」 そう言いながらハンカチでポンポン叩くように私のこと拭いとくれたけど、手しか拭けない小さなタオルではとうてい無理がある。そしてこいつが持ち歩くハンカチは昔から一回り小さい。かと言う私は友達から借りるタイプだからそもそも持ってない…… 「お前そろそろ自分で持てよ。こうゆう時不便なんだから。」 「分かってるよそろそろ持つって…もう、もういいよその、ポンポンポンポン」 「あはは、何うざがってんだよ〜〜」 「やめて!その猫パンチみたいな威力で厚かましい攻撃するのやめて!」 「猫パンチって意外と強いらしいぜ。ネズミを気絶させられるって言うし。」 そんなどうでもいいことを話しながら、気づけばポンポン攻撃も止まり、私達はダラダラ会話して公園で雨が待つのを待った。 そしてふと思い出したんだ。ハンカチすら入ってないこのカバンに何故か入っている、elli◯sの存在を… elli◯sことエリッ◯スは、カプセル型のヘアオイルで、500円玉ほどの大きさなので気軽に持ち運べる便利アイテム。濡れ髪にも使えるのでプール後とかによく友達からもらってた、そしてついに自分で買って入れておいたのだ。ハンカチは入れなかったのに。 私の記憶上鞄に入れてまだ使ってない残機が残っていたはずだ。オイルを使ったあとは自然乾燥でも大丈夫なので、ドライヤーなんてあるわけない今この状況でももってこいのアイテム。使うしかない…! 男ってのは匂いに弱い。女子力をアピりつついい女の匂いを作れば、もしかしたら私にも脈ができちゃうんじゃない?CMや広告漫画みたいなラブロマンスが叶えられるんじゃない?なんて事を企みながら私はとにかく鞄をまさぐった。彼と会話し、冗談に笑いながらもとにかく血眼で探した。気づいてないのか気づかないフリをしてるのかわからないけど、向こうがあまりにも普通に話し続けるもんだから私も普通のフリをして相槌を打った。遂にブニブニしたものに当てつけ、嬉しさのあまり勢いよく握り引き上げた。ら。 ドロっとした感触に上昇したテンションも一気に下がる。どうやら握り潰してしまったらしく、何が何か分からんくらいにはぐちゃぐちゃになっていた。 「………あーあ!」 「?うおっ」 そのまま髪に塗れば良かったもののそんな気にもならず、完全に諦めがついてそのまま彼の方にドカッと頭を乗っける。何か無駄に疲れてしまった。というか直入れにしてた私が悪いけど。人の事を馬鹿にできないくらいにはかなり私も馬鹿だ。 「あっごめんね急にもたれちゃって。濡れてるし気持ち悪いよね…っひゃっ」 ついついくっついてしまったものの、不快にさせちゃったかな…と思い頭を離そうとすると、彼の手が私の頭をまた肩に寄せる。 「いいよ別に…俺も濡れてるし」 しばらく沈黙が続いた。私も何となく黙っておいた。彼の手はまだ私の頭に触れたまま、少しずつ熱を帯びてくのが分かった。でもその顔は見れなくて…見れないまま、強く地面に打ちつける雨音だけが空間に響いた。 彼がようやく口を開いた時。と同時に、私の手元からジャリ、と不自然な音が聞こえた。 「あのさ、」 「ちょっと待って」 「え」 「待って」 「え」 いいムードの中、意中の彼が何か言いかけていると言うのに、それを制しながら恐る恐る手元を見てみる。さっき握りつぶしたヘアオイルが地面の土やら何やらを巻き込んで更にぐちゃぐちゃになっている。さっきまではまだギリギリ猶予があったとはいえ、今度こそ使い物にならなくなった。というかシンプルに汚い。 困惑する彼を払いのけて、遊具の外に手だけ出して雨で流れてくれないか試みてみる。が運がいいことに砂利が洗い落としきる前に雨は徐々に止んでいき、雲の間から光が差し込んできた。 ☆☆☆ 「ー何してるんだよ本当にさあ??」 「だって!だってほら、濡れ髪って傷みやすいじゃない?!オイル持ってたらつけとこうってなるじゃない!私なりの美意識だったの!!」 天気はすっかり晴れ、公園の水飲み場で手を洗いながらうなだれる。呆れたような口ぶりで、もう一度彼がハンカチを差し出して私の手を拭いた。 「何か雨宿りするだけで疲れちゃったなあ…」 「全部自業自得だろ」 「うう」 さっき何て言おうとしたの?なんて聞けない。あまりにも自分があほ過ぎて今はそれを恥じるのに精一杯だ。だから、だからとりあえず… 「私もハンカチ買お」 「今更かよ…」

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