.*❁⃘夜桜冬花❁⃘*.
2 件の小説空の色
いつからか、世界は灰色になっていた。 空も、木も、人も、建物も全部。 つまらない人生、ありふれた毎日。 ああ、私なんで生きているんだろう? こんなに何も無い人生、意味なんてないのに。 明日はどうなるかなっていくら期待しても、心を満たしてくれるようなことは何も起きなくて。今日もまた、いつもと同じ通学路を歩く。 「雨……」 気づいてたけど、知らないフリをした。 どこかの優しい誰かが気にかけてくれるのを期待して。 「大丈夫?」って聞いてくれるのを期待して。 「ほんと、馬鹿みたい」 ふと空を見上げると、雨が降っている灰色の空はとても綺麗で、自分の心の汚さが嫌になる。 きっと私は変われないまま、この道を歩き続けるのだろう。 毎日、毎日、変わらずに。 ある日の朝、いつものように家を出て……何となく別の道を歩いてみた。 変われないって思ってても、心のどこかで期待していた。日常を変えてくれる何かを。 違う道を歩いてたはずなのに、気がついたらいつもの道で、やっぱり変われないなんて悲しくなる。 「ああ、また……」 あの時と同じような雨。今度は自分の汚さが見えないように、俯きながら歩き続けた。 「え……?」 一瞬、雨が落ちる道路に光が射した気がした。 もうすぐ雨が上がるのだろうか。 そう思って顔を上げると、光の中に1人の少年が立っていた。 「大丈夫?」 私の方を見つめながらそう呟く彼の瞳は、どこか寂しくて、暖かくて、とても綺麗だった。 これはきっとチャンスだ。 次はいつ来るか分からない、来るかどうかも分からないチャンス。 ここで踏み出さなければ、私はまたあの道を歩き続けなければいけない。 「……大丈夫」 根拠は、ない。 私はまだ何も変われてない。 明日にはまたあの道を歩いてるかもしれない。 だけど、きっと大丈夫。 あなたがいれば。 あなたさえいれば。 あなたがいるこの世界はとてもカラフルだから。 そう思って光の方へ歩き出した。 明日の自分とこれからの未来に期待して。 ふと振り返ると、さっきまでの灰色の世界はなくなっていて、とても綺麗な空だけが広がっていた。
好きな人の好きな人
最初は何とも思ってなかったんだ。 何となくイケメンだなとか、歌が上手いなとか。ただの同じ部活の仲間。それだけだった。 一度優しくされて舞い上がって。単純な人間だと思うけど、多分この時既に恋に落ちてたんだ。 気がつくと私の頭の中はあなたでいっぱいになっていて、気がついたらいつもあなたを目で追っていた。 「好きです」って言えたら幸せになれるのかな。 応えてくれるのかな。 毎日毎日そんな妄想を重ねて、自分からは何も言えないまま時が過ぎて。 ある時、気づいてしまった。あなたに好きな人がいること。 私があなたを目で追うように、あなたは一人の女の子を目で追っていた。 私じゃ、ないんだな。知ってたけど。 私よりもあの子の方が可愛いし。 相手が私じゃなくてもあなたが幸せになれるのなら。 そう思って、何も言わずに見守った。 何でだろう。あなたが幸せならそれで良かったはずなのに。 何で、こんなに涙が出るの。 分かってる。分かってたよ。 幸せになれるならそれでいいなんて、そんな簡単に忘れられる恋じゃない。 あなたの隣で笑ってるのが私だったら。 あなたの見つめる先にいるのが私だったら。 もしもあなたの好きな人が私だったなら。