あるち

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あるち

フィクションなのかノンフィクションなのかは、読み手のあなたが決めてください なお作品に出てくる登場人物名等は、ノンフィクションだとしても架空の名称です

嘘の私を愛してくれますか?(連載)

第九章 決意からの父の死 私は篤志さんとの別れを決意していた 別れと言っても、きっと辛いのは私だけ 私は篤志さんと会う約束をした もちろん私は行かない 私を酷い奴だと嫌ってくれることを望んだ そしてそのまま連絡を断つつもりだった 本当に突然だった 深夜に電話が鳴った 「落ち着いてね。お父さんが亡くなったの」 母からだった 父が……………死んだ………? 何が起こっているのか分からなくなった 死んだ?……………… あれ……先週話したよね…… 元気だったよね………… 駆けつけた目の前には父が布団に寝ていた 何だ………寝てるだけじゃん 声をかける 起きない 揺さぶってみる 冷たい 顔を近づけてみる 息をしていない 深夜に突然苦しみだした父にすぐに気づいた母が救急車を呼んだが、救急隊員が来た時にはもう息はしていなかったという 交通事故から退院し、そこからあっという間の出来事だった 深夜に母から連絡をもらった時に、私は篤志さんに一言LINEを入れていた (お父さんが亡くなりました) (お父さん亡くなった!) (気持ちをしっかり持って、お父さんについていてあげてね) お父さんには心配をかけてばかりだった 学生の時 遊んでばかりいた時 家出した時 妊娠した時 彼と別れることになった時 体調を崩した時 再婚をする時 親孝行らしいことは何もできなかった 私のせいで父が早く死んでしまったのではないかと思った 今まで心配をかけ過ぎたせいで 甘えてばかりいたせいで 好き勝手ばかりしていたせいで こんなにも急に逝ってしまったのではないかと (私のせいでお父さん死んでしまった) (私がいなくなればよかったんだ) (それは違うよ。今和実ちゃんにできることは、お父さんの分まで一生懸命生きること) 篤志さんとのLINEを頭に浮かべながら、主人の腕の中で私は泣いた 主人は何も言わず、ただ抱きしめてくれた 主人の目からも涙がこぼれていた 私はただ泣いた 主人の腕の中で一晩中 ただ泣いた

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嘘の私を愛してくれますか?(連載)

嘘の私を愛してくれますか?(連載)

第八章 近づく終わり この二ヶ月に渡り、私たちはLINEを続けた ある時、篤志さんが今流行りの「感染症」にかかった すごく心配で今すぐにでも飛んで行きたい気持ちでいっぱいだった でも、私にできることはない なるべく休めるようにLINEを控えるようにした でもつい心配でしてしまうバカな私 約十日間の後、篤志さんは回復した しかし、その後しばらく体調は悪そうだった 私は私で夜眠れない日が続いていた 篤志さんへの想いと罪悪感 今にも潰されそうだ そんな私の姿を見て、さすがに主人もおかしいと思う 「暑さにやられたかな」 と言って私は誤魔化す 無理やり病院へ連れていかれる 心療内科にも連れて行かれた 何日も眠れない日が続いているのを、主人は気づいていたのだ 「俺では何も役に立たないかな?」 主人の言葉が突き刺さる 違うの 悪いのは私 私はあなたをを裏切ってるのよ ごめんなさい、ごめんなさい 「何に悩んでるか分からないが、とにかく今は眠れることが一番だよ。それから考えたらいい」 もうこれ以上優しくしないで ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい 病院から処方された眠剤を飲み、主人の腕の中で久しぶりに寝た 私は本当にひどい奴だ、最低だ 主人のことは心から愛している 同時に篤志さんのことも、いつも考えてしまうくらい好きだ 二人とも失いたくはない ふっと笑ってしまった 私は篤志さんの何を知っているのか? 会ったこともない LINEや電話でしか分からない 一体何を知っている? それなのに好き? 本当に? 主人と別れるくらいに好き? 篤志さんの言うことが本当なら いずれは自分の家族の元へ帰る人 奥さんや子供の元へ 例え奥さんとの中が不仲であったにしても 嘘だらけの私を愛してくれるはずがない それでも一度聞いてみたい 篤志さん 嘘の私を愛してくれますか?

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嘘の私を愛してくれますか?(連載)

嘘の私を愛してくれますか?(連載)

第七章 彼 ここで私の若い時の辛い思い出「彼」について 私は過去に大きな失恋を2回経験している 一度目は同じ職場だった人 突然、別な人と結婚すると言われた 二度目は、今篤志さんに話している「彼」 この「彼」とは四年、、五年の付き合いに入っただろうか お互いの時間も大事にしつつ、干渉せず 会える時は、その時間を大切にした すごくすごく大事で、すごくすごく好きだった 結婚の話もなかったわけではない でも私は、好きなのに結婚となるとなぜか一歩前へ踏み出せなかった そんな私をどう思っていたのだろうか ある時私の体調の悪い日が続いてるな~と思い、病院へ行った 妊娠していた 彼に話した 「堕ろしてほしい」 聞き間違えたのかと思った 「お金は出すから、堕ろしてくれ」 間違いではなかった そこからいろいろとあった 本当に………ありすぎるくらい 結果的には、私は流産をしてしまった 赤ちゃんは育ってはくれなかった ふとその時の私が現れた そして、その時に苦しんだ「彼」とのことを篤志さんに相談していた 篤志さんは真剣に聞いてくれた こうしてみたら?とアドバイスもくれる あの時、その通りにしたらどうなっていたかなと思いながら 泣くこともあった 篤志さんの優しさや温かさで涙が出て止まらない時もあった 電話は深夜まで続いたこともあった その日は…… 嘘のない 仕事ではない 本当の「私」として 篤志さんと電話で結ばれた 本当に結ばれたかのように 温かく、なんとも言えない気持ちになった それからも篤志さんとのLINEは続いている

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嘘の私を愛してくれますか?(連載)

嘘の私を愛してくれますか?(連載)

第六章 好きです LINEでもいろいろなことをたくさん話した 家族のこと、友達のこと、仕事のこと、彼のこと ここでの仕事の話と彼の話は、私の若い時のこと 嘘ではないけど、現在の話ではないから結局のところ嘘になってしまうのだろう 篤志さんがどんな人なのか何も分からないのに、私は本当のことを話す 本当のことを話すって変な言い方だけど、本当にあったことを現在進行形の形で話をする おかしなことを言っているのは承知だが、こんな自分を少しでも知ってもらいたいと思っている 本当の私だけど、現在は嘘の私なのにね 篤志さんは私の話に心配してくれたり、アドバイスをくれたり、励ましてくれたり 声が聞きたいと言えばLINE電話で話してくれる 篤志さんの声はすごく温かい 優しい話し方で、ずっとずっと聞いていたくなる LINEをすればするほど 声を聞けば聞くほど 話をすればするほど 篤志さんの思いは強くなる そして、苦しくなる どこかでこうも思う 出会いの場所が場所なだけあって、篤志さんが本当のことを言っているとは限らない 名前も仕事も嘘かもしれない ただ後腐れなく遊べるだけでいいのかもしれない でもそう思えない いつまで嘘の私を続けるのか いや、いつまで篤志さんはこんな私の相手をしてくれるのか いつまでも会えない私の相手を どこかで嘘が分かってしまうかもしれない恐怖に怯えながらも、今日もLINEを送ってしまう いつかは終わる日がくるのに それを先延ばしにしてしまう自分がいる 写真でしか分からないあなたが 声でしか分からないあなたが 信じられないかもしれないけど 私はあなたが好きです

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嘘の私を愛してくれますか?(連載)

嘘の私を愛してくれますか?(連載)

第五章 LINE (どうしたの?。急にLINE教えてなんて) (だって、急にいろいろ考えちゃって。あれを通してだと篤志さんお金かかっちゃうじゃん) (そんなこと気にしてたの?。和実ちゃんと話したいから大丈夫) (それにLINEだと好きな時にメッセージ送ったり、話したりできるし) (ありがとう。嬉しいよ) (ねえ、仕事って何してんの?。教えてよ) (笑。何でしょうね) (非日常的な乗り物って聞いて、すごく気になってんだけど) (うーん笑。観光系って言えば分かるかな?) (観光系?。えー………何だろう?。観光バスとか飛行機とか……あっ、人力車とか笑?) (違うけど、人力車はいいところついてるかな笑?) (えー、あとは思いつかないや笑。あ、どんな顔してるの?) (顔?。さっぱり系ですよ) (誰かに似てるって言われたことある?) (ないなー。和実ちゃんは?言われたことある?) (小さい頃なら、〇〇っていう昔のドラマの主役だった子。あたしはよく知らないんだけど笑) (ずいぶん昔だね笑。あ、でも可愛い感じがする) (かわいくないよ笑。そうだ、写真交換する?) (写真か………。僕ねあんまり写真とか送りたくないんだよね。和実ちゃんがどうこうするとかじゃなくて、意図しなくても他に流出するかもって思うとね) (あたしはそんなことしないよ!。雰囲気が知りたいだけ) (じゃ早く会わなきゃね笑) (そうなんだけど…お父さんのことがあるからしばらく無理だし………) (うーん、いいのあるかなー………) (言い出したのはあたしだから、自分のはあとで送っとく。篤志さんは送れたらでいいや) (笑。探しとくよ) (あ、時間遅くなっちゃったね。明日早いのかな?) (明日は五時半起きだね。じゃそろそろ寝ますか) (うん。ありがとう、楽しかった。じゃまたLINEするね) (僕も楽しかったよ。じゃ身体に気をつけて、しっかりお父さんを診てね。おやすみ、またね) 私は一枚の写真を送った。 目元だけの写真を。 次の日の朝、一枚の写真がきていた。 マスクをつけた目元だけの写真。 (おはよう!。急に恥ずかしくなっちゃって。でも送るって言ったから目元だけのを送りました笑) (おはよう。美人さんですねー) (そんなことないですよ!。篤志さんも優しそうでかっこいいやん) (かっこよくはないですよ。ありがとう) (これって仕事の制服?……船に乗ってる?) (そうです。観光船に乗ってます) (へぇー。すごく似合ってる!) (よく言われます笑。じゃそろそろ出航だから、またね。ありがとう) (頑張ってね。私もお父さんのとこ行ってきます)

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嘘の私を愛してくれますか?(連載)

一度も喧嘩をしたことがないあなた

とにかく優しい 無口なくせに毒舌 私の作ったものは全部美味しいと食べてくれる 私の家族にも優しい 寝るのが早い 起きるのも早い して欲しいことは叶えてくれる 仕事が好き 手先が器用 隣にいるのに時々何を言ってるのか聞こえない 物静か 会話は少ないがいつも側にいてくれる 私を守ってくれる 行ってらっしゃいのキスは忘れない 帰るコールも忘れない 誕生日も記念日も覚えている 私のちょっとした変化にもすぐ気づく 私が遊びに行っても必ず迎えに来てくれる 一緒にお風呂に入る ちょっぴり足が臭い そんなあなたは私の大事な人 私と結婚してくれてありがとう

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一度も喧嘩をしたことがないあなた

嘘の私を愛してくれますか?(連載)

第四章 父の事故 実家の父が交通事故にあったと連絡がきた。 私は取るものも取らず、すぐに実家へ向かった。 実家までは、新幹線で二時間ほどだ。 父はどんな状態なのか。 無事なのか。 全く分からない。 病院に着いても、すぐには会えなかった。 今世間を騒がしている「感染症」のせいだ。 病室には1人しか入れない。 今は母がいるため、駆けつけても私は入れない。 病院の入口で、兄と姉が待っていた。 兄と姉もまた中には入れないため、母と携帯で連絡を取っているのだ。 「大きな事故だったけど、肋骨の骨折だけで済んだよ」 兄の言葉に腰が抜け、その場に座り込んでしまった。 「親父の居眠り運転らしい」 え、何でまた?。 お父さんらしくないことだ。 「とにかく無事で本当に…よかっ…た」 姉が泣きながら言った。 本当に本当に生きててよかった。 しばらくして母がきた。 「ごめんね驚かせて。お父さん大丈夫だから」 母の目は真っ赤だった。 実家へ戻りしばらくすると主人が駆けつけてきた。 父の様子を説明するとホッとして 「明日朝イチで戻るよ。和実はしばらくお義父さんやお義母さんのそばに居るといいよ」 と言ってくれた。 あ、篤志さん………… 主人が隣にいるにも関わらず、ふと篤志さんのことが気になった。 次の日主人を見送ってから、私は篤志さんにメッセージを入れた。 「篤志さん?、和実です。実はちょっと大変なことがあって……。このメッセージを聞いたら連絡ください」 月曜日に会おうかと話してから、どうしようかと思っていた。 会うことはできない。 割と早く返事がきた。 「和実ちゃん?、どうしたの?。今少しなら話せるよ」 すぐに篤志さんと話をした。 「仕事中にごめんなさい。あの、昨日父が事故にあったと連絡がきて……」 「え!。お父さん大丈夫?」 「肋骨骨折だけで済みました」 「はーっ、それは良かったよ。大変だったね。和実ちゃん大丈夫?」 「大丈夫です。ありがとう」 「しっかりお父さんのこと診てあげてね。あとお母さんのことも」 「あの、月曜日………ごめんなさい」 「そんなこといいんだよ!。今はお父さんやお母さんの側についててあげること」 「ありがとう……」 「会うのはいつでもいいんだから」 「またメッセージ入れてもいい?」 「当たり前でしょ!。僕もメッセージ入れるから」 「本当にありがとう」 「和実ちゃんも疲れを起こさないようにね。じゃ仕事に戻るからね。またね」 篤志さんの声を聞いて涙が出てきた。 こんな風に言ってくれるなんて思っていなかった。 お父さんは大丈夫ですか? 和実ちゃんは大丈夫? 今日は残業で今帰ってきたよ お父さんの具合いはどうかな? 今日は休みなんで友達と会ってくるね 和実ちゃん、疲れを起こしてない? 今日は仕事が忙しくてさすがに疲れました笑 和実ちゃん、ちゃんと食べて休める時は休んでね こんな感じで、篤志さんは毎日メッセージをくれた。 この時からだろうか。 私の気持ちに変化が生まれたのは。 あれ……私、ずっと篤志さんのこと考えてる?。 篤志さんのことを考えると、胸がドキドキする。 え……どうしちゃったの私…。 何で主人じゃなく、篤志さんのことばかり。 私………篤志さんのこと………。

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嘘の私を愛してくれますか?(連載)

第三章 出会い系サイト 私たちが出会った出会い系サイトには、いくつかの番組がある。 普通の会話。 アダルトな会話。 もちろんアダルトな会話ほど稼げる。 テレフォンセックスを知っているだろうか?。 その名の通り、電話でセックスをする。 その番組で私たちは出会った。 「今日はすごくHな気分なんだ」 「私も」 「一緒にしようか?」 もちろん私は実際にするわけはない。 コーヒーを飲みながら演技をする。 電話越しに相手の声や吐息が聞こえる。 私はそれに応える。 正確には、感じてる振りをしているだけ。 相手が本当にしているかは分からないが、おそらく女性の喘ぎ声を聞いて、興奮していることには違いないだろう。 そうでなければ、お金をかけてテレフォンセックスをする必要がないのだ。 この喘ぐのも、結構疲れる。 本当にセックスしているかのように演技をしなければならない。 「あ…ダメ…も…イッちゃう」 「僕も……一緒に…」 イケばもちろん終わりだ。 「すごく気持ちよかった…」 「僕もだよ」 恋人たちがセックスを終えた後のような会話。 大概はすぐに切られてしまうのだが、ここで会話に繋がれば、その分私の稼ぎになる。 そして気に入ってもらえればメッセージを残し、その次に繋げられる。 そうして男性は、決して安くはない一分いくらのお金を払い、私たち女性は、一分いくらのお給料をいただく。 「またお話したいな」 「僕もだよ。また話してくれる?」 「もちろん!。メッセージ入れておくね」 「ありがとう。また電話するよ」 こうしてメッセージでやり取りしながら、電話で話をする。 話をするたびにテレフォンセックスをするわけではない。 私たちはこれ以降、普通の会話しかしていないのだ。

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第二章 最初の会話 「どの辺に住んでるの?」 「西の方かな?。あなたは?」 「僕は渋谷の方」 「都会人じゃん。あ、ねえ名前を教えてよ」 「住んでる所はそんなに都会でもないよ。名前は篤志。あなたの名前は?」 「あたしは和実。篤志さんははいくつくらいなんだろう?」 「さあ?。会えた時に教えるよ。和実ちゃんは?いくつ?」 「えー笑。あたしは三十二歳。ねえ仕事って何してる人?」 「笑。それも会えた時に教えるよ。まあ非日常的な乗り物に乗ってる…ってだけ。和実ちゃんは何してる人?」 「あたしはサービス業だね。えー、なんだろう~?。気になるぅ~」 「さあ、何でしょうね笑。和実ちゃんはどんな感じの人?」 「見た目?。うーん、背は小さいよ。150ちょっとしかない。篤志さんは?」 「僕は175くらいかなぁ?。さっぱり系です。和実ちゃんは可愛い系かな?」 「可愛くはないよ~。背がちっちゃいだけ」 「充分かわいい感じだよ。彼とかはいるのかな?」 「いるよ。もう四年くらいの付き合いかな。篤志さんは?」 「僕は結婚してますよ。単身赴任で東京にいるんだ」 「そうなんだ。あ、こういう電話で会ったことある?」 「残念ながらまだないね~。和実ちゃんはあるのかな?」 「ふふふっ、どうでしょうね笑。やっぱり遊びたい?」 「いちお男ですからね~笑。でも僕ね、好きになった人としかそういう関係になれないんだよね」 「遊べない感じがする」 「そう思う?。でも僕も男だよ」 「何か裏切ったりとかできなそうだけどな笑」 「和実ちゃんは彼とうまくいってるの?」 「うーん、付き合いが長いからねー」 「好きなんでしょ?」 「そりゃあね~。あ、そうだ、篤志さんは何が好き?」 「何って、食べ物とか?。そうだなぁ、何でも好きだよ」 「海鮮とか好き?。あたし美味しいお店知ってるんだ~」 「海鮮いいねー。そのお店行ってみたいな~」 「でも会ったら嫌われるかも…」 「見た目を言ってるのかな?。それを言うなら僕だって同じだよ。和実ちゃんに嫌われるかも」 「話しした感じはすごく好き。だから会って嫌うことはないね」 「僕は見た目よりも、話しした感じとか性格重視だから大丈夫。その和実ちゃんのオススメのお店に連れて行ってよ」 「休みが合えば一緒に行きたいね」 「仕事が終わってからでもいいよ」 「遅番の時は結構遅くなるからなぁ…」 「次の休みっていつ?。決まってるの?」 「シフトによるから決まってはいないんだけど。えっと次は…火曜日かな。篤志さんは毎週決まってるの?」 「僕も決まってはいないよ。あっ、僕も次の休みは火曜日だ!。じゃ月曜日、仕事終わったらどう?」 「じゃ、とりあえず月曜日ってことで」 「楽しみだな~。会えるのも、そのお店も!」 「がっかりしないでよ笑」 「僕の方こそ。あ、何だったら遠くから見て、こりゃタイプじゃないなと思ったらそのまま帰ってもいいよ笑」 「そんなひどいことしないよー!」 「ははは笑。じゃ楽しみにしてる」 本当のこととウソとが入り交じった、出会い系サイトを通しての会話 まだこの時は、私の中では「仕事」だった

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嘘の私を愛してくれますか?(連載)

第一章 出会い 私は四十七歳、専業主婦だ。 訳あって外に働きに行くことができないので、主人には内緒で在宅のアルバイトをしている。 いわゆる出会い系サイトのサクラだ。 顔を出さず声だけだが、そこそこにはなる。 昼間しかできないけど、結構男性はいるもんだ。 そこである男性と繋がる ちょっとアダルト系の番組で繋がったのだが、普通の話も楽しかった。 純粋にまた普通に話したいと思った。 しかし私はあくまでも「仕事」なので、名前や年齢等は適当だ。 相手は既婚者。 単身赴任で東京に来ていた。 私も東京に住んでいて(若い時に住んでいた場所にした)彼がいるという設定。 ここでの私の「彼」は主人ではなく、実際に過去に付き合った「彼」のことにした。 この仕事は、お話した相手に伝言を残すことで、気に入ってもらえればまたお話しをしてもらう。 そうすることで固定客を獲得し、お金が稼げるのだ。 ちなみに男性側は有料である。 私はもちろんメッセージを残す。 あなたから返事がくる。 話ははずみ、とても楽しい。 と同時に胸がドキドキしている。 いつ会えるかな?などと話しながらドキドキしている。 だが私は「仕事」なので会うことはできない。 そもそも実年齢と言ってる年齢も違うし、住んでる場所も違う。 ましてや主人に内緒で会いに行くことはできない。 しばらく伝言でのやり取りが続いていく。 ひとり暮らしをしている設定なので、夜お話をする時は別室にいく。 家で電話をする時は、お互いに別室に行くので、主人に怪しまれることはない。 自分で作った「架空の自分」になり切って話していく。 しかしこのドキドキした気持ちは、今の私の本当の気持ちだ。 もっとたくさん話したい。 もっと声がききたい。 日毎にその思いは強くなっていく。 話せば話すほど、この思いは強くなる。 どんな人なんだろうか。 声と会話だけで想像が膨らむ。 あなたのことが知りたい。 顔も姿も中身も、全てが知りたい。 あなたに会いたい。 突然、伝言のやり取りが終わるかもという不安から私は自分のラインを教えた。 「仕事」としてではなく、「私」としてやり取りがしたかった。 声と会話だけで、私はあなたに恋をした。

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