やっぱり、大好き
大好きな人がいた
名前は【樹凛】《いつきりん》
俺が5歳の時に引っ越してきた、近所に住む2つ上のお兄さん
とても美人で優しくて、面倒見が良くて…いつも俺を気にかけて
くれる
…大好きだった、本気で
でも離れた、巻き込みたくなかったから
俺には力があった、それは相手の思考や心を読む力だった
力が目覚めたのは10歳の時、事故で3日眠った後のことだった
最初は偶然だと思った。でもそんなことはないとすぐにわかって、
『この力は誰にも言ってはならない』、子供ながらにそう思った
同時に、凛兄に嫌な思いをさせたり、凛兄が俺の力を知った
ことで、何か事件に巻き込まれると思った
だから離れた
傷つけたくなかったから、巻き込みたくなかったから
俺は元々頭が良かったから、中学・高校と偏差値が高くて
遠いところにし、高校卒業後は東京に行った
もちろん、出発の日は凛兄教えていない
というかそもそも、中学あたりから凛兄に会わないように
しているので、会って話すことすらしていなかった
それから数年後、俺が25歳の時だった
俺はうっかりして力のことを漏らし、気がつけばどこかの
廃墟で、椅子に縛られていた。
少しして何人かの男達が入ってきた
その中には、俺が酒によってうっかり力のことを漏らしてしまった男もいた
男達は俺を研究材料にするつもりらしい
(…まぁ、力のことを話してしまった俺のミスだよな…)
仕方ない、自業自得
そう思って俺が諦めていた時、ドアが蹴り破られた
そこにいたのは、もう何年も姿を見ていなかった凛兄だった
凛兄は男達を蹴散らし、俺に駆け寄って俺を縛っていた
縄を解いた
「伊吹!大丈夫?」
「り、ん…兄…?…なんで…」
「酔ってる伊吹が男に担がれて車に乗るところをたまたま見てね、
こっそりトランクに入ったんだよ。間に合って良かった」
凛兄がそう言いながら、俺を抱きしめた
「怖かっただろう?よく頑張ったね」
凛兄がそう言いながら俺の頭を撫でた
久しぶりの凛兄の温かさに涙が出てきて、思いっきり泣いて
しまった
「落ち着いたかい?」
2時間後。俺たちは外に出て公園のブランコに座っていた
「…ん…ありがと…」
「良かった…それにしても、なんで伊吹が攫われたんだろう…。
確かに伊吹はなんでもできるけど、そんな攫われるほどじゃ」
「…実は…」
ここまできたら隠せない、そう思って俺は凛兄に嫌われる覚悟で
力のことを話した
「…そんなことが…じゃあ、あの男達が伊吹を攫ったのって…」
「…研究の、材料にする為らしい…酔った勢いで力のことを話して
しまった相手が、そこの研究員で…」
「そんな…」
(伊吹が僕に嘘をつくわけない、つまり力のことは本当だ…。
僕が遅くなってたら、伊吹は殺されてたかもしれない?
…あいつ等、殺しておくべきだったかな…)
(意外にもすんなり信じてくれた…やっぱり、凛兄は凛兄だ…。
待て、いま物騒なこと考えてなかった⁇)
俺が凛兄の思考を思い返していると、凛兄が驚いたように
聞いてくる
「待って?じゃあさっきまでの俺が考えてたことも、今も」
「…全部筒抜けだな」
凛兄は真っ赤になって膝から崩れ落ち、片手で口を抑えながら
尻餅をついた
「う、そ…待って…マジかぁ////。想像以上に恥ずかしいね、これ」
「…『恥ずかしい』で済むレベル?
普通にプライバシーの侵害だろ…。
まぁ、オン・オフを切り替えられないから、
責められてもどうしようもなかったけどさ…」
「…じゃあ、僕の気持ちは伝わってるんだね?」
「…まぁ…」
「なら…」
凛兄が俺を押し倒す
「今度は伊吹の気持ちが聞きたい。僕の気持ちを聞いて、
知って…伊吹はどう思った?」
「…嬉しかった…ずっと、凛兄が好きだったし…だから…。
凛兄に嫌われたくなくて…凛兄を巻き込みたくなくて、
離れたのに…。これじゃ、本末転倒だね…」
苦笑するしかなかった
でも凛兄は笑わなかった、その代わりに俺にキスをした
まるで、俺の不安を拭うように
「僕が伊吹を嫌うなんて、あるはずないでしょ?
…それに…僕は伊吹の力で事件とかに巻き込まれるより、伊吹に
避けられる方が嫌だった」
「…ごめん…」
「伊吹…お願いだから僕から離れないで…僕に、君を守らせて
ほしい…。…ダメ?」
「…ダメじゃない…側に居てくれなきゃ、やだ…」
「ふふ、久しぶりの伊吹のおねだりだ♪仰せのままに、ダーリン」
凛兄はそう言って、今度は深くキスをした
この数年後
俺たちは同棲して無事結婚するのだが、
それはまた別の話
初投稿です。
これは短編?なのでしょうか…
お酒を飲みながら作ったので、誤字脱字や変なところがあれば
教えていただけると幸いです。
見ていただき、ありがとうございました。