あん弧
11 件の小説あん弧
人間観察好き。 私の言葉が、少しでも誰かの心に響くことを願って、言葉を紡いでいきます。 フラットな人とサバサバしてる人尊敬する……😶 (人間不信気味の優柔不断人間) 色々趣味あるので話しかけてくれたら嬉しいです🫥
別れの春、捨てた希望へ
春。 私の、嫌いな季節。 街を歩けば嫌でも視界に入ってくる桜も。 そこかしこにある桃色の服や雑貨も。 しつこく耳に残っている軽やかな音色も。 全部、全部。 嫌いになった。 目障りで、耳障りで、華やかさが邪魔で。 それなのに、皆楽しそうで。 私だけが、別世界に残されたような感覚で。 それが、羨ましくて、でも嫌で。 どうしようもなくて。 八つ当たりだって、わかってる。 こんなことしても無駄だって、理解してる。 自分の本当の気持ちだって、気づいてる。 だけど、私は受け止めきれなかった。 逆に、春に嫌われた。 でも、それで良かった。 嫌われれば、何も考えなくていい。 気にしなくていい。 もういい。 そう、思ってた。 だけどまだ、どこかで願っている。 自分の心の奥深くで、叫んでる声が聞こえてくる。 見えないフリをしてたのに。 聞こえないフリだってしたのに。 自分が、馬鹿らしいと思った。 もしも、時間を戻せるなら。 どこまで戻せばいいんだろう。 君と分かりあった時。 君と初めて話した時。 君を、見つけた時。 やり直したい時間、沢山ある。 でも、それは都合が良すぎるから。 なら私は、もう一度プロローグを見る。 君と出会わない世界線で、最初からやり直す。 それで、負けヒロインみたいに、馬鹿らしく生きていく。 私と君のエンドロールに、互いの名前が載る。 その願いが叶う世界は、どれほど幸せなのだろう。 でも。 その答えを知ってしまったら、 もう二度と戻れないと思うから。 さようなら、私の─ 希望だった、君。
ハンドクリーム
「手、貸してごらん」 この季節、人肌の温もりと共に囁かれた言葉だった。 誰に言われたのかは曖昧で、 それでもこの言葉は、私の中に残っていた。 別に、特別な言葉でもない。 それなのに、 暖かくて、 幸せで、 おまじないみたいで。 手のひらにある冷たさなんて、全く気にならなかった。 なのに、 あの手が離れていった後、残ったのは冷たさだった。 …ふと、昔のことを思い出した。 そこに、見慣れたハンドクリームがあったから。 確かに、あの時塗ってもらったものだった。 別に、思い入れがあるわけでもない。 しかし、そのハンドクリームに目を惹かれてしまった。 つい、買ってしまった。 家に帰り、少し後悔した。 自分の単純さに驚きつつ、ハンドクリームに手を伸ばした。 買ってしまったんだからと言い聞かせ、少しだけクリームを掬う。 ほのかに香るシトラスが、心を落ち着かせた。 それでも、求めていたものとは違った。 香りも、感触も、着け心地も、決して悪くはない。 でも、違った。 温かさも、優しさも、温もりも何も無い。 ただ手を保護するだけのものだった。 もう一度、あの感覚が欲しい。 なんとも言えない温かさを感じたい。 もう、叶わない願いだとはわかっているけれど。 心に穴が空いたような、時間が止まったような。 そんな気がした。 目の前が揺らいで、それが嫌で。 ハンドクリームを放ったまま、眠りについた。 …あの頃から、どれだけ時間が過ぎたのか。 数えれば、それはそれは長いもので。 なのに、感じた時間は短くて。 それでも、たくさんの思い出が溢れている。 そして今、私はハンドクリームを手に取って。 「手、貸してごらん」 と、おまじないをかけた。
生きることがそんなに偉いか
わからない。 なんで、生きてることが偉いのか。 命の大切さをわかってるから? 毎日頑張ってるから? 辛くても、前を向こうとしているから? …それの、どこが偉いんだよ。 適当に息をしてるだけのくせに。 ただの義務だと思ってるだけのくせに。 へらへらして、何もかも諦めただけのくせに。 なにが、「生きてるだけで偉い」だよ。 ふざけんな。 こっちは毎日に絶望してるのに。 生きる意味なんて失ったのに。 何もかも諦めたのに。 …自分を捨てたのに。 なんで、「死にたいなんて言わないで」って言うんだよ。 生きるのだって、消えるのだって、お前に関係ないじゃんか。 それなのに… なんでいつもいつも、消える選択を奪うんだよ。 消えたいのに。 苦しいのに。 もう嫌なのに。 消えるなって言ってさ。 なんで、お前が他人の人生を決められるんだよ。 もう、いいじゃん。 十分生きた。 もう終わったんだよ。 生きる意味がないんだから。 こんなのが生きてたって、迷惑なだけだ。 もう、終わりにしよう。 …それでも。 どんなに消えたくても。 こんな苦しい思いはしたくないと願っても。 何もかも諦めても。 お前は、手を離してくれないんだ。 それに。 自分だって。 本当は、心の奥底で願ってたんだ。 まだ、生きてたいって。 周りから、どんなに貶されても。 罵倒されても。 苦しめられても。 たった一つの、小さな小さな希望が。 絶対に、離れて行ってはくれないから。 だったら、最期までちゃんと生きてやる。 何十年先で、惨めに倒れる時まで。 全て失っても、最期まで抗ってやる。 自分の運命に。 それで、世界に何億といる人間に言ってやるんだ。 「別に、諦めたんならそれで構わない。けどな」 「ぼーっとすんな。お前の人生は、まだ終わってない」
似つかないドッペルゲンガー
何もかも飲み込んでいく影は 心なんて知りもせず ただ私を、黒く沈めるの そんなのは、必要ない だからもう付き纏わないで お願い、離れて もう要らないの お願いだから… それなのにいつまでもいつまでも 執拗に付き纏ってくる 何度願っても どれだけ走っても いつだって私のそばにいる 朝昼は貴方に見つめられて 夜は貴方に沈みそうになる 皆なんで気にしていないの? 執拗に取り憑くこの存在に 私はもう限界なのに… 貴方は私の何になりたいの? それとももう私の一部なの? 24時間365日 私ずっと貴方に憑かれてるの 愛とか憎いとか知るわけないでしょう? もううんざりよ 私が望むのは 貴方から離れたい、それだけ だって貴方は 私から 本当を奪っていくのだから… ◇◆◇ 私は心がわからない それでも君を知りたいの 私の全て捧げてもいいから 大丈夫 ずっと一緒だよ 離れたりしない 怯えなくて良いの 私が君を守るから 最近の君は不思議だね 急に走ったり 何か呟いたり 心配だなぁ… でも大丈夫、私はそばにいるからね 私たちは二人で一人 他の人間とは訳が違うの 私の願いは 君と消えたい、なんて こんなの意味わかんないよね ねえ、何をそんなに怖がっているの? 一緒に遊ぼう きっと楽しいよ でもごめんね、ずっとは無理かも 明るいのは苦手なの 代わりに夜は沢山遊ぼう 朝が来るまで、2人きりで 私に沈んじゃっていいよ 君は凄い疲れてるでしょう 何も隠さなくて良いから ホントの気持ち、私に頂戴 ◇◆◇ きっと私たちは 分かり合えないわ 生きる世界線が違うんだもの 私は貴方から離れたい 貴方は私と消えたいなんて 正反対な考え方ね 訳分からなくて 笑っちゃうわ ねぇ、私やっぱり貴方が嫌い 奇妙でなんだか悪魔みたいだから それでも私に取り憑いてたのが 貴方で良かったのかもしれないわ だって貴方じゃなかったら 私は壊れていたと思うから ◇◆◇ 君と会うことは 叶わないんだね 生きてる世界が違うから 私は君と消えたいのに 君は私から離れたいなんて こんなに違う思いだったんだね ごめんね 今まで縛り付けていて それでも、やっぱり君を愛してる 君は天使で私は悪魔で 出会っては行けなかったのかも それでも君と出会えて良かった だって君のそばにいたから こんなに幸せになれたんだ …ねぇ、聞こえる? 私たち、全然似てないわね それでも私、思ったの 似てない似たもの同士かなって 性格も思考も感情も 確かに全く似てないけれど 姿形は瓜二つでしょ? やっぱり何かの運命かしら 私たち、出会えて良かった 何も壊れない二人の世界で ホントの幸せに気づけたから ありがとう。 私の愛する、ドッペルゲンガー。
餅
餅はよく伸びる。 伸びるから、長生きすると言われる。 確かに、縁起が良いのかもしれない。 でも、食事中の事故の原因でもある。 餅が喉に詰まった。 餅を食べていたら窒息してしまった。 子供が噛み切れず飲み込んでしまった。 餅は、縁起が良い。 でも、危険な食べ物だ。 餅ひとつで、命の危険に陥る場合がある。 私は思う。 こういう食べ物こそ、無事に食べ切れるとその1年が良いものになるのではないかと。 よく、神は平等と言う人がいる。 私はあまり神を信じてはいないが、この言葉は本当なのではないかと思う。 良いことが続くと、いつか不幸がやってくる。 悪いことがあると、その後には幸せになれる。 餅も、1つの試練のようなものでは無いだろうか。 人間が作ったものだとしても、神はそれに運命を託したのではないだろうか。 餅を食べ切れれば、1年の始まりは無事に過ごせる。 普段神を信じない私も、信じてみようと思う。 1年の始まりに食べる餅を、私にとっての神に見立てて。
どうか、いつかの未来で。
20XX/8/25 21:50 青く澄んだ空に、煙が溶けだしていく。 黒い霧が、辺りに立ちこめる。 火事だ。 誰かがそう叫び、辺りは騒然とした。 ひとつの家を見つめ立ち尽くす人々。 周りには消防隊が駆けつけ、赤く燃える炎を消していく。 数分後、家から炎は消えた。 焼け焦げて今にも崩れそうな家は、火災の深刻さを物語っている。 死傷者無しの報告に、人々は哀れみつつもその場を立ち去った。 その家に少女が取り残されているとは、思いもせずに。 少女は、机の傍で横になっていた。 何もかも諦めた、そんな姿で。 ああ、なんで─ なんで、私は消えないのだろう。 思い出も、財産も、全て消えていったのに。 なんで私だけ、残されなければいけないのだろう。 少女は、炎の中へ消えていった家を見つめながら思った。 私も、消えてしまいたい。 消えてしまえば、何もかも捨てられるんだろう。 思い出も、愛も、自分自身も。 私は、屑だ。 作ってきた思い出の価値が、わからない。 注いでくれた愛情の価値が、わからない。 自分の価値さえも、わからない。 まるで何もわからない、幼稚な子供だ。 いや、そんないいものでは無い。 分けてもらった恩を仇で返すような、ただの屑だ。 邪魔でしかない屑は、消し去ってしまえばいい。 誰かが作った勝手なルールだとしても、世間はそれを信じている。 だから、私みたいな屑は世界の障害。 要らないと言われ、罵詈雑言を浴びせられるくらい当然だ。 それでも稀に、助けようと手を差し伸べてくる人間もいる。 手を掴めば、楽になれるんだろうか。 普通に、生きていけるのだろうか。 いや、そんなことは高望みだ。 どうせまた、同じことの繰り返し。 多くの人を巻き込んで、結局また邪魔になるんだろう。 それならば。 少女は、先程とは別人のような表情で、ゆっくりと立ち上がった。 不安定な足取りで、それでも着実に歩みを進めていく。 少女は1枚の写真の前で、動きを止めた。 触るだけで灰になりそうなその写真に何が映っていたのかは、誰にもわからない。 ただ1人、少女を除いて。 少女は写真が崩れるのも厭わずに、震える腕で抱きしめていた。 写真に込められた思い出も愛情も、少女にはわからないだろう。 それでも、その写真の大切さは、ちゃんと伝わっていた。 止まっては進みを幾度か繰り返し、少女は窓際まで辿り着いた。 急に、少女はスカートの裾を破った。 そして傍にあったペンで何かを記し、無造作にポケットに入れる。 少女は深呼吸して、不器用に笑った。 少女の中で止まっていた時間が、動き出したような気がした。 後悔も、絶望も、不安も。 幸福も、欣幸も、希望も。 全てのことを受け止めて、少女は旅に出た。 それは終わることのない、永遠の旅だった。 少女は旅立つ直前、優しく微笑んでいた。 誰かが希望を繋いでくれる、そう信じて。 拝啓 この手紙を見ている貴方へ。 貴方が見る頃には、私はもう旅立っているのでしょうね。 なんだか切ない気もするけれど…後悔はしてないの。 今まで辛かったし、終わりにしたかったのも事実。 だけど、大切なものに気づけたから。 私は最初から最後まで屑だったけど。屑なりに、楽しめたと思う。 一つだけ、伝えたいことがある。 例え生まれ変わったとしても、 また同じ人生が良いと思えるように生きて。 思いたくないとしても…どうか今を、ちゃんと生きて。 これが、我儘で屑な私から送れる言葉。 じゃあまた、いつかの未来で。
物語の行き着く先で
探す。 探す。 本当を。 貴方の人生の、エンドロールを。 あの時、何があったのか。 何処へ、行ってしまったのか。 私は、どうしたら良かったのか。 何を、信じれば良いのか。 私の人生に、どんなエンドロールが似合うのか。 ああ、もう会えないのかなぁ…。 もう一度合って、ちゃんと、伝えたかった…。 「 」...って。 ...いや、もう無理か。 ごめんね、貴方を想っていたのが...こんな私で。 ...ばいばい。 ………… …そこに、居るの? …良かった、また会えた。 心配、してたんだよ。 何があったのか、何処に居たのか。 ずっと、ずっと探してた。 …もう、大丈夫なんだね。 はは、もう、探すの…疲れちゃってたから。 あん、しん…した…。 …話したい事…たくさん、ある…んだ。 これから、は…いつでも、話せる…ね。 「 」…。 (…大好きだよ。)
この想いが尽きるまで
作詞・作曲家見習いが書いた歌詞(ポエム?) 時間がある人は見て行ってくれませんか。 途中で見飽きたら辞めてもらって構いません。 それでは、お願いします。 君にだけは愛されたい でも君にだけは愛されたくない そんな我儘を呟いて 理想を求める僕自身が嫌いだ でも それでも 君は僕を見てくれていたよね なんでかなって今も考える こんな僕を見てくれる人 なんてもういないと思ってたからさ 気づけば果てしなく続く道 僕はその真ん中に立っている 何もかもがわからなくなった時に 君は僕を操る糸を引いた 思えば思うほど遠のいた あの頃の記憶は薄れてく でもきっときっと思い出すんだ それほど大事ってことだよね? あの頃の僕らはもういない 新たな物語の幕開けだ 今度は立ち止まっている君を 操る糸を僕が引く番だ あなただけを愛していたい でもあなただけを愛せるのかな そんな疑問を押し付けて 理想を描く僕自身が嫌いだ でも それでも あなたは僕を信じてくれたよね なんでかなって今も考える こんな僕を信じてくれるなんて 到底あり得ないと思ってたからさ 気づけば果てしなく続く空 僕は君を見つめながら風に遊ばれてる 何もかもがわからなくなりそうな時に 僕は君を操ってる糸を引いた 何十年も経ったら遠のいていく この記憶を残すことは出来ないの? でもきっときっと思い出せる それくらい大事な物だから あの頃の僕らに会いたいな でも次の舞台が幕を開ける 立ち止まってしまった僕のこと 君に糸を引いて操って欲しい ああ、もう君に会えないんだ 現実は残酷が好きなんだろうか たとえこれが夢であったとしても 君と離れるのは無理だと誓う 結局味方なんていないんだろう すぐに裏切る度胸はどこにある? みんな嘘をついて誤魔化して結果は同じ 残酷さ もう誰のことも信じられない ああ、なんで消えてしまったんだよ 君がいなくなったこの世界で どうやって生きろと言うの? ああ、もう君に会えないんだ 僕は悪魔に好かれてるんだろうか これが運命であったなら 未来を変えることは出来たのかな? たとえこれが夢であったとしても もう僕は目を開けられないね 世界に神様がいるのなら一つだけ願い事をしよう どんな酷い目にあったって良い 1日だけでも良いから もう一度この場所で生きて良いですか? ダメと言うのなら仕方がない でもどうやって眠れと言うの? この世界で生きる希望と もう一つの世界で眠る意味 そんな物ひとかけらもないって お互い別の場所で嘆いてる 「あぁ...馬鹿みたいだな」 やっと意味がわかったよ とても単純なことじゃないか お互いに笑いながら いつもの噴水の前に集合 姿形がなくたって 想いはちゃんと見えてるよ 二人がすれ違う瞬間 「また来世で愛し合おう」 その声は良く聞こえたよ 楽しかった日々と君にさよなら …違うね、「またいつか」。 この想いが尽きることはない そう信じてるから
思考
𝑄 「ストレスを溜めず生きる方法は?」 𝐴 「何事もポジティブ思考」(それができる人は良いよね) 「他人と比べない」(無意識に比べちゃうでしょ) 「完璧主義にならない」(なってるつもりないし) 「誰かに相談する」(出来ないから悩んでんだよ) はぁ…… 辛い。 なんだろう、この… 地獄に突き落とされるような。 心臓を抉られるような。 …ダメだと、わかっていても。 死にたくなるような…苦しみは。 どうしたら、消えるのかなぁ… 考えたくもないし、無駄なのもわかってる。 それでも、ふとした時に考えてしまうのは… 心が、何かを─ 訴えているのかもしれない… それが何かは分からない。 訴えているのかすら分からない。 何がしたいのか、どうしたいのか。 自分のことなのに、分からない。 …はぁ、もういいや。 面倒くさ。 確かに、なんで考えるんだろ。 考えなければ、楽なのに。 独りでずっと何も考えないでいた方が楽なのに。 そうすれば、周りと関わらなくて済む。 嫌に思われることも、 怒られることも、 呆れられることも、 貶されることも… 人からどう思われるかなんて気にしないで、 ちょっと楽になれるかも。 あーでも、 無理かも。 今から関係切るの面倒だし。 てか絶対絡んでくるし。 嫌なのに… 人前だと仮面被る癖、いつまで経っても治んないし。 あれ、また… なんだ、結局… 考えてんじゃん、馬鹿。 自分で嫌って言ったのに。 はー、なんかもう訳わかんない。 でもちょっと楽かも。 てか結局、精神的障害治るわけじゃないし。 てか一生背負う気だし。 こんなとこで負けてるとか、ダッサ。 よし、また明日─ いや、次頑張れる時、なんかしよ。
理想のいい子
自分を作らない人。 そんな人、きっとどこいもいない。 よく「天然だね」と言われてる人がいる。 でも、それだってきっと自分を作っている。 周りの思う「理想の自分」になるために。 自分を隠して、作り替えている。 呼吸するように嘘をつく。 理想という「仮面」をつけて。 全てを隠すための「着ぐるみ」を着て。 「自分らしく」 みんな口ではそう言う。 結局自分らしく生きている人なんて、 いないだろうに。 少し、私の話をする。 変わった自己紹介、くらいに思って欲しい。 私には、友達……と、言って良いのか分からないが、よく一緒に話したりする子が何人かいる。 その子によく「お母さん」「温かい人」「頼れる人」など、そういうことを言われる。 どう思っているか知らないが、それに乗っかって周りも茶化すように、同じようなことを言ってくる。 別に、嫌に思うわけではない。 そして、頼られるのは嬉しくもある。 ただ、それを積み重ねた結果、周りの理想の自分になっていた。 無意識の内に、自分が自分で無くなるような…… そんな感覚だった。 でも、思った。 その方が、生きやすかった。 自分を認めて貰えたような気がした。 言葉で言えば、少し矛盾しているかもしれない。 でも、実際は違っていたりする。 だから私は、今、「理想」の自分として生きている。 それが自分らしい生き方、と言えば、おかしいかもしれないが。 自分らしさ。 この言葉は、沢山の「意味」が混じりあってできた言葉だとおもう。 人によって感じ方の違う、そんな言葉。 口で言うのは簡単だ。 でも、綺麗事というのは通用しない。 この世界は、少しおかしいと思う。 それは私だけの意見かもしれない。 けれど。 ありのままが受け入れられないのは、おかしい。 自分を隠さなければいけないのも、おかしい。 そのせいで苦しんでいる人だっている。 心を無くしてしまう人だっている。 何もかも、やめてしまう人も…… そういう人は、大勢いる。 自分を隠す人が、悪い、おかしい訳じゃない。 それだけはわかって欲しい。 ただ、隠しても、隠さなくても。 「心」だけは、隠してはダメ。 本当の自分を消すなんてこと、絶対にしないこと。 偽りの自分だけで生きていれば、いつか限界が来る。 その限界を迎える前に、少しくらい、さらけ出しても大丈夫。 限界を越したあと、苦しむのはあなただけじゃない。 周りだって、苦しさを感じる。 悲しさを感じる。 だから。 どうか、自分を消さないで。 ありのままでも、受け入れてくれる人はいるということを。 自分を作ったとしても、自分の心はしっかり持つということを。 どうか、どうか。 忘れないでいて欲しい。 これが、理想に押し潰されそうな、私の微かな叫び。