雨に溶けた内緒話
「この事は内緒だから、絶対誰にも言わないで。」
私たちの距離、僅か0cm。
雨が降りしきる路地裏で、出会ってすぐに接吻をされ、名も知らぬ女性にとある口裏合わせを頼まれる。
「で、ですけど……こんな現場目撃しちゃったら私……」
言いながら、全身が震えるのを感じる。
「誰かにチクったら貴方も共犯なのよ?捕まりたいの?あたしは、なんの罪もない貴方を守るために口裏合わせをしてるの。」
「分かりました…。絶対に誰にも言いません。でも1つお願いがあります。」
せかせかと逃げる準備をしている彼女の後ろ影を見上げ、私は呟く。
「雨が止んだら、私のことは忘れてください。」
彼女はヒュッと息を飲み、
「そんなの分かってるわよ。唇、奪って悪か____」
「私はこの先、貴方の事をすぐに忘れることは難しいです。私にとって初めてのキスだったから。だけど、あなたが改心して、また私の元に現れてくれたら、隣にいさせて下さい。」
しまった、被せて言葉を言ってしまった。
「なによ、未練タラタラね。それは…告白に入るのかしら?」
彼女の頬は紅潮し、明らかにモジモジと体をくねらせている。
私は彼女に向かってはにかみ、
「内緒です。」
と、ドヤるように吐き捨てた。
今、私たちを包んでいるのは降りしきる雨だけ。