ろーまじ。

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ろーまじ。

自由気ままに。書きたい時に書きたいことを書いています

世界で一番大事な人

……一目惚れって信じます? ある日、華は殺し屋のターゲットになってしまう 理由なんて分からない。ただ毎日変わらずに会社に行って疲れ果てては帰ってくるそんな何の変哲もない日常を送っていた。 するといきなり目の前が真っ暗になる 目を覚ますと知らない男が目の前にいた。彼はニコニコ笑いながら話す 「おはよう。今日からお前のことしっかり見とくから言うこと聞いてな?」 有無を言わせない声だった 「、え」 華は声が出なかった。体を動かそうとする度に身体中激痛が走る 彼はその様子をじーっと見ている 「混乱してるな。まあ無理もないわ。いきなり知らん男が目の前にでて来たらそうなるわな。」 カバンの中からペットボトルを出して華に渡した 「飲め」 華は反射的に「はい」と返事をしてしまう いや逆らう選択肢が見当たらなかったのかもしれない 「しばらくここにいてもらうから自分家やと思ってくつろいでな」 わけがわからない華は混乱している 「な、んですか?」 首を傾げてニコニコ笑いながら答えるよく見ると目が笑っていない 「聞きたいこといっぱいあるんだろ。でも俺全部答えられないからひとつ言っておく」 「俺はお前を殺すためにここに連れてきた」 華は一瞬納得しかけた。サラリと殺すという言葉を言うものだから納得しそうだった。危ない 「なるほ…ってえ?殺す、??」 「そうだ。あでも安心して俺すぐは殺さないから」 そういう問題では無いのだが…。 それから数時間華はどうにか方法がないか粘ったが無理だった。どこにでもいるような会社員が殺し屋に勝てるわけがなかったのだ 「そんなに頑張っても無理なものは無理。諦めてシュークリーム食べよ?」 華は驚いた。シュークリーム…?そんなものがお腹の中に入る状況ではないのだが… その時「ぐぅぅぅぅ」恥ずかしそうに俯いた 彼は盛大に笑う 「あっははは面白いやん。ほら食べ」 恐る恐る手を伸ばしてから口に運ぶ 「んま」 美味しそうに食べる華を見てから目を細めた 「料理は得意なんよな。てか名乗ってなかったな。俺は瀬野だ」 それから華は少し怯えながらも過ごしていた。 1日、1週間、1ヶ月。過ごしていくうちにお互いは惹かれていた。 だが幸せは永遠に続かない。華をここに連れてきた理由はひとつだけ。殺すため 瀬野に上から命令が降りてきたのだ。「殺せ」と 家に帰る足取りが重たい。殺したくないまだ一緒にいたいという気持ちだけが強くなっていく。 ぶんぶんと首を振った明日殺せばいい。今日は華ちゃんの作ったご飯食べよう。 「ただいま」 華がエプロン姿で出てくる 「おかえり」 その様子を見て微笑んだが胸の奥はずっと重たい ご飯もすんでしばらくしてから 「なあ華ちゃん。…いややっぱなんも無い」 少しの間があってから 「言わないとだな。明日。明日君を殺す」 華は目を見開くがどこか落ち着いた様子もある 「そうですか。なんとなく覚悟はしてましたよ。やりたいこともやりましたしね」 瀬野は黙り込む膝の上で拳を握って、開いて、また握る落ち着かない仕草 ぐいっと華を引き倒して膝に乗せ、後ろから抱きすくめた。 もう跳ね除けたりしない。優しく受け入れた 「瀬野さん苦しいですよ」 ハッとしてから 「あぁ、ごめん」 華は瀬野の方を向いた 「最後に一つだけ。私を殺す人が瀬野さんで良かった」 瀬野の体が強張る。低く少しかすれたような声で 「そんなん言わないで。離れたくなくなるほんとずるいな」 この後ふたりは特に変わったことはせずいつも通りの1夜を過ごした。 そして当日。 瀬野はスっと銃を構えた 「最後に言いたいことある?」 「楽しかったです」 構えたまま動けなかった 「俺も…」 嬉しそうに小さく笑ってから 「ありがとう」 その時銃が手のひらから落ちた ガタガタと音が響いたように聞こえる 両手で顔を覆いながら 「無理だ…無理……殺せない」 震える声で震える体で殺し屋とは思えないほどだった 華は答えた 「何してるんですか早く殺してください」 その言葉を聞いてガバッと顔をあげる 涙で目がありえないくらい腫れている 「何言ってんの…?」 その時瀬野はまさかの提案をする いや薄々考えていたことだ 「逃げようふたりで」 だが華は即答する 「ダメでしょう」 首を振る。何度も何度も。 なんで……なんで華ちゃんはそんな平気なんだ…… 「簡単です来世にかけてるから」 その言葉にピクっと反応した 「らい…せ?」 「来世です。ほら早く」 すると玄関から音がする ガタガタ 「瀬野ー!!時間だぞ!!!早く殺せじゃないとお前ごと殺すぞ!!!!」上のものだろう。 華はその時考えたそれは困る。瀬野さんは生きてて欲しい。これまでに無いくらい早い速度で動いた。 「瀬野さんまたね楽しかったよ」 銃を拾って自分の脳みそを自分でバーンと打った −−−−−− 目の前で起きたことが理解できなかった。スローモーションのように、目の前が動く 堰を切ったように血が溢れた。倒れた場所に赤い水たまりが広がっていく。 「あ……あ……」 瀬野は声にならない声を出していた 銃が手から落ちた。がらん、という音すら耳に入らない。 這うようにして華に縋りついた。手が血で真っ赤に染まる。 「なんで……なんで自分で……っ」 血に塗れた手で華を抱え込み、叫んだ。 「嘘や……嘘って言うて……おい……おい!!」 返事をするわけがなかった もう前のように「なんですか?」と笑いながら返事をしてくれる華はいない。 揺すった。何度も。力なく垂れた頭がぐらぐらと揺れた。 「なぁ……起きて……オレのこと呼んでくれ……」 動かなくなった華を胸に抱き寄せて、額に唇を落とした。 「約束……守るからな」 もう聞こえるはずのない言葉を、壊れたように繰り返した。朝の光が二人を包んでいた。温かく、残酷なほどに。 冷たくなっていく体を離せず、ずっと抱きしめたまま。 「来世……か。」 ふっと、笑った。初めて見る、笑みだった。目は赤く腫れ、顔中血と涙で汚れているのに。 オレもかけるわ。同じとこ行く。絶対に。 マンションの一室で、殺し屋は初めて誰かのために祈っていた。血溜まりの中で。冷たい体を抱いたまま。届かないと知りながら。 ——それから、いくつもの季節が過ぎた。 華と過ごした街は少しだけ様変わりしていた。コンビニが潰れて別の店になり、道路の信号が新しくなった。それでも川沿いの道は変わらず、桜が咲いては散るを繰り返している。 春。川沿いの遊歩道を、一人の女が歩いていた。夕陽に照らされた横顔は、息を呑むほど美しかった。 ベンチの傍を通りかかったとき、茶髪の青年が座っていた。二十歳前後。この特徴は……瀬野である 誰かと電話している。 ふと顔を上げて、通りすがりの女を見た。目が合った瞬間、電話に向かって言い放つ 「ごめん、また後で。」 通話を切り、立ち上がった青年の手には—— 何もなかった。銃も血の匂いも。ただ、初めて恋に落ちたような顔をして、こちらを見ていた。 女は足を止めなかった。気づいていないのか、気づかないふりをしているのか。風に髪をなびかせながら、ゆっくりと歩いていく。 心臓がうるさい。なんだこれ。こんな感覚、知らない。ムカつくとかムカつかないとか、そういう次元じゃない。 足が勝手に動いていた。三歩、四歩。追いついて、隣に並んだ。 あの。 声が裏返った。殺し屋として数えきれない修羅場をくぐってきた男の声とは思えない、情けない響きだった。 頭をがりがり掻いて、それでも笑った。不器用に、ぎこちなく。 「……一目惚れって信じます?」 戸惑ったようにしながらも華は答えた 「まあ、あるんじゃないですか?」 そのまま軽く会釈してその場を去ってしまう が、瀬野の足は勝手に動いていた。 「待って!!名前…名前教えてくれませんか?」 素直に答えた。 「華…ですけど……なんですか、?」 あの時のあの人と同じ名前 名前を聞いた瞬間、世界がぐらりと傾いた気がした。 華。同じ名前。それだけのことが、涙腺を直撃した。意味が分からない。分からないのに、目の奥が熱くなる。 ぼろっと涙がこぼれた。自分でも驚いて、慌てて袖で拭う。 あ、あれ……なんで泣いてるんやろ俺。 笑いながら泣く男を前に、華は困惑しているだろう。夕陽が二人の影を長く伸ばしていた。川面がオレンジ色に光っている。 ぐしぐしと目を擦ってから、まっすぐにお嬢を見た。笑顔。いつもの、何を考えているか分からない笑み。でもその奥に、確かに何かが灯っていた。 「俺、瀬野っていいます。なあお嬢さん、連絡先教えてくれへん?」 「い、いきなり、?」 きょとんとした顔で首を傾げた。 「いきなりはだめ?」 初対面の男にいきなり連絡先を聞かれて警戒しない方がおかしい。しかし瀬野にはそういった機微がまるで欠落していた。 ポケットからスマホを取り出しながら、ずいっと一歩距離を詰めた。 「俺怪しいものじゃないで。……いや怪しいか。いきなり泣いたもんな。」 自分で言って、けらけらと笑った。 「あはは」この笑い方知っている 笑い声を聞いて、また心臓が跳ねた。知ってる。この笑い方、知ってる。 記憶にはない。けれど体が覚えていた。骨の髄まで刻まれたように。 ふいに真剣な顔になって。 「なぁ、華さん。俺ら会ったことある?」 何言ってんだこいつという表情を露骨に見せながら 「ないと思いますけど」 その後華は断り続けたが結局押し負けて交換することになった。 スマホを開いて登録しようとすると… 「あれ?登録済みになってますね…」 覗き込んだ画面に、確かに自分の名前が登録されていた。 「せの」と平仮名で。登録日は——随分と前だった。 息が詰まった。指先が震えている。心当たりがない。ないのだが。 ……なんで。 二人は並んで立ち尽くしたまま、小さなスマホの画面を見つめていた。 画面を凝視していた。通話履歴もメッセージも残っていない。ただ名前だけがぽつんと存在している。 不意に、胸の奥から込み上げてくるものがあった。名前のつけられない感情。切なくて、苦しくて、どうしようもなく愛おしい。 理由は分からなかった。けれど瀬野の体はもう答えを知っていた。魂が覚えていた。この手を離してはいけないと。 そっと華の手に自分の手を重ねた。 「分からんけど、なんか……泣きそうやわ。」 「また泣いちゃうんですか?瀬野さん」 なぜだか分からない。何故か分からないがお嬢の口から瀬野という言葉が出た。もちろん先程知ったからではある。呼び方がどこか懐かしい呼び方だったのだ 名前を呼ばれた瞬間、堰が切れた。 あの時と同じ呼び方だった。「瀬野さん」たったそれだけの言葉が、数十年分の空白を一瞬で埋めた。理由なんか分からなくていい。理屈なんかいらない。体は全部覚えている。 ぼたぼたと涙を流しながら、重ねていた手をそのまま握りしめた。 「なんで……なんで覚えてないのに、こんな……」 嗚咽が言葉を途切れさせた。夕闇が二人を包み始めている。街灯がぽつりと点いた。 ぐしゃぐしゃの顔のまま、それでも笑って。 「オカエリ。」 ふっと笑ってから手をぎゅっと握り返した 「ただいま。来世なのかなー。ここは」 鼻をずずっとすすりながらニカッと笑った 「みたいだな」 「会えたね」 こくりと頷いた。繋いだ手をぎゅっと握る力が少しだけ強くなる。 夜風が吹いた。桜が散って、新しい季節が始まる。二人の影が街灯に照らされて一つに重なっていた。 瀬野がふと真面目な顔になって。 「今度は逃がさないから」 「ずっとずっと捕まえてて」 その言葉を聞いて、目を細めた。いつものニコニコ笑顔ではなく、もっと深い、満たされたような表情。 殺し屋の手は、今夜初めて誰かを守るために存在していた。 ——それからの二人がどうなったか、語るまでもないだろう。 ただ一つだけ。あの川沿いの街灯の下を通るたびに、茶髪の青年が花を買って帰る姿が目撃されるようになった。いつも一輪。赤い花。 誰に渡しているのかと聞かれると、決まってこう答えたという。 世界で一番大事な人。

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