りる♡
6 件の小説恋
「キャーッ!何それ!少女漫画じゃん!」 帰り道。 通学路に響く、私の声。 「そうなの!ほんっとに、かっこよすぎてさ、もうキュン死しそうだったよー!」 友達の莉愛も、高い声を響かせる。 「…で?紗奈はー?」 「え、わ、私は…あ!今日ね…」 莉愛に聞かれて、自分の恋バナも話していく。 私と莉愛は、友達で、二人とも別の好きな人がいる。 だからこうやって、登下校中は互いに自分の今日あった恋バナを、話している。 莉愛の好きな人は、クラスはちがうけれど、莉愛と同じ剣道部。 湊くんという名前で、イケメンで、優しくて、頭も良い。 私も、もし湊くんに好きと言われたら、好きになってしまうかもと思っているくらいだ。 そして、私の好きな人は、部活は違うけれど、同じクラス。 斗菜くんというは名前で、凄くイケメンで、優しくて、男女問わず楽しく話してくれるタイプだ。 二人とも、お互いの好きな人のことも褒めあっていて、「いい人だね!」と、言い合っている。 ある日のこと。 「席替えをします」 先生の突然の発言に、クラスはザワついた。 今の席や隣の席の人がいいから、まだ席替えはしたくないという子と、今の席が最悪で、隣の席の人も苦手な人だから早く席替えをしたかったという子の二つに別れていた。 「はいはい、静かにして」 私のクラスの席替えは、先生が黒板に適当に名前の磁石を貼っていく、という、いたってシンプルなやり方だ。 シンプルで早く終わるところは良いのだが、全て“運”で決まるのは、ちょっと嫌なところだった。 「はい、じゃあ貼っていきますねー」 そういうと、先生はパチパチと手早く磁石を貼っていく。 この瞬間が、一番ドキドキする。 「はい、貼り終わったから席移動して」 私の席は−と、黒板を見た。 真ん中の列の、前から三番目と、席の場所はとても良かった。 (…やった!) 心の中で、いや、右手でしっかりとガッツポーズをしてしまったほどだ。 でも、肝心なのは隣の席の人だ。 うるさくて、口が悪い男子とは、流石に隣にはなりたくない。 隣の席の人は− −え… 隣の名前の磁石には、「大川 湊」と書いてある。 み、みみみみ、湊くん!? 頭の中は、混乱しかしていなかった。 これは、夢じゃない。現実だ。 ダメなんだ、手は出しちゃ。 でももしかして、優しくてイケメンなら、隣の席になったら好きになってしまうかもしれない。 「紗奈さんか!よろしく!」 ニコッと笑う湊くんに、しっかり笑顔を返せていただろうか。 「よ、よろしく…」 これから、湊を好きにならないように。と、自分にしっかり言った。 「じゃあ、三分とるので、単語を隣の人と確認し合って下さい」 英語の時間。 私はいつも、この三分間が憂鬱だ。好き、嫌い関係なく、異性と話すのがとてつもなく苦手だからいつも上手く喋れなくなる。 「じゃあ、俺が日本語言うから単語言ってね…それでいい?」 やっぱり優しい。 こんな小さなことまで確認してくれるなんて。 「あ、うん、いいよ」 そんなこんなで、三分間は終わった。 「おはようございます!」 湊くんが、元気よく朝、今日に入ってきた。 その瞬間、ドキドキした。 −私は、湊くんが好きなんだ。 今でも恋をしている。 ※これは全て、私の本当にあった話です!
舞台
学校には、色んな子がいる。 別に、だから何って訳じゃ無いけど… みんな、無理してるのかなって、思ってしまう。 例えば、あのムードメーカーの美玖ちゃん。 いつも笑顔で、クラスを盛り上げてくれるけど、もしかしたら、本当はそういうのが好きじゃないのかな…って… 一回だけ、仲いい子が休んだから、美玖ちゃんと一緒に帰ったことがあった。 そのときに、私は、 「美玖ちゃんってさ、ムードメーカーだよね!美玖ちゃんのおかげで、クラスが盛り上がってるよー!ありがと!」 って、言ったんだ。 そしたら、美玖ちゃんが、 「あっ、ありがとう…。私、違和感ないかな?」 って。 「え?違和感?何が?」 私が聞くと、 「あの…ね、ちょっと…色々あって。べ、別に、結衣ちゃんには関係ないから!ごめんね、変な話して」 って…言ってたんだよね。 今でも、気になってるけど、詳しくは聞き出せないし、きっと聞き出さない方が、良いのかなって。 あれから、美玖ちゃんには何も聞いてないけど…きっと何かあるんだろうって… 簡単に例えれば、“仮面”かな。 みんな、学校で仮面かぶってるのかなぁって思ってる。 でも、私も、あの子も、先生だって、仮面被ってると思うし。 そうなんだ、学校は、舞台なんだ。 クラスの中で、みんな、“何か”を演じてるだけ。 そういうもの。 それが、きっと当たり前なんだ。
嫌われたがりと愛されたがり
「嫌われたい」 なんて、普通の人は思わないよね。 「愛されたい」 って思う人の方が、多いよね。 私もね、少し前までは、「愛されたい」って、思ってたよ。 だから、頑張ってた。 頑張ってたんだよ。 でもね、うまくいかなくて。 自己責任かもしれないけどさ、流石に酷いよね。 そんな、私とあの子の物語。 「ね、ねぇ」 私の親友の夏帆が、話しかけてきたの。 嬉しそうな顔をしていたから、まさか…!って思って聞いたの。そしたら予想通りだった。 「じ、実は…海斗くんと付き合えたの!」 海斗くんとは、夏帆と同じクラスのイケメン男子で、夏帆は海斗くんが好きだったんだ。 親友の恋が叶って、嬉しかったの。 「え?!ホント?!良かったね!」 私には好きな人はいなかったから、素直に夏帆の恋を応援していたんだ。 「うん!このみのおかげだよ〜!ホント、ありがと!」 夏帆の笑顔は私の太陽だった。 夏帆が笑うと、私も嬉しくなるの。 「あ、今日のお昼さ、夏帆が好きなメロンパン購買に買いに行こうよ!私も食べたいし」 私は夏帆とお昼ご飯を食べるのが幸せだったんだ。 夏帆が大好きなメロンパンを笑顔で頬張るのを見るのが可愛くて好きだった。 でも、私が夏帆を誘うと、夏帆はこう言ったの。 「あ…ご、ごめん…今日は海斗くんと食べるね…ごめん」 私は、まあ、付き合ったならこれくらいは普通かなって思って別々で食べたよ。 数日後、林間学校があって、私と夏帆と海斗くんは同じ班になったの。 私は正直嬉しかったよ。 オリエンテーリングをやったときに、私は石に足をつまずいて転んだの。 「わっ…痛い…」 膝も結構血が出てて、痛くて立てなかったの。 そしたら、夏帆がひょこって覗いてきた。 (夏帆、助けてくれるよね) 私はそう、安心してた。 すると、夏帆は私ではなく海斗くんの方に行った。 「海斗くん、やっぱカッコイイ〜!大好きだよ〜!」 (え…、) 完全に夏帆とは目が合って、私が転んだことにも気づいてたはずなのになんでだろうって、悔しかった。 だから、夏帆に言ったの。 「なんであんな事したの!」 すると夏帆は平然として 「うん?ああ、もう要らないかなーっておもって。恋を助けてくれただけでいいからもうさようなら〜」 ってさ。 それからだよ、友達いらない、友達は裏切りものだっておもって、嫌われたくなった。 でも、高校一年生の新学期の自己紹介のときに、ある女の子と出会ったの。 「名前は、青葉愛奈って言います!中学生のころはぼっちだったので、友達をつくりたいです!気軽に話しかけてください!」 私にとって、友達をつくりたいなんてことは信じられなかったよ。 「友達つくりたいなんて、ばっかみたい…」 って、呟いちゃった。 「…?な、なにか言いました?」 愛奈ちゃんが私を見つめる。 本当は言いたい。 裏切り者もいるってこと。 人間関係は、難しくて、一人の方がずっと楽だということ。 でも、友達を作るという夢を見ている愛奈ちゃんに、そんなこと言えないよ。 「なんでもないよ…」 愛奈ちゃんが気になった。 私と正反対。 友達に嫌われたくて、友達つくりたくないって思ってる私。 友達に愛されたくて、友達つくりたい!って思ってる愛奈ちゃん。 休み時間、愛奈ちゃんの席に行って、話しかけた。 「…愛奈ちゃん…」 愛奈ちゃんはこっちを見て、 「あ!このみちゃんだ!」 って、元気に優しく話しかけてくれる。 「…愛奈ちゃん、あのね…、友達って怖いよ…」 愛奈ちゃんは首を傾げる。 「…なんで?怖いの?」 私は中学生の頃の話をした。 「…そんなことがあったんだね。私、自己紹介で言った通り、友達いなくてさ。そういう裏切り者っぽい子もいるかもね。でも、このみちゃんは、違うよ。このみちゃんは、経験したからこそ、いや、元々人を裏切らないと思うよ」 私の話を聞いた愛奈ちゃんは、真っ直ぐ見つめて、そう言ってくれた。 「…え…?」 「私ね、このみちゃんとなら仲良くなれそう!」 夏帆とは、なんか違くて。 本気なんだなって、感じたの。 「…うん」 はっきりと覚えている。 今、私の一番の親友は愛奈ちゃん。 あれがきっかけだったんだよね。 私と愛奈ちゃんが仲良くなったの。 出逢えた。初めての人に。 「これからもよろしくね」 二人は見つめ合う。 そして、うなずいた。
自己紹介!
名前はなぁに? あ、名前ですか、名前はりるです! 性別は? 性別…は、女です! 年齢教えて〜 あ、年齢は、中一(13歳)です! 好きな食べ物教えろよぉ〜 えーと、パスタ!!パスタだけ食べて生活したいくらい大好きです!! あと、ラーメンも!! ふーん、じゃあ、嫌いな食べ物は? パクチーと白米!! え、日本人のなのに? そう、日本人なのに米無理なんですね! でも、給食では頑張って食べてます! ちょっとさぁ…聞いていい? なに? 好きな人いねぇの? え、ああ、聞いちゃう? 正直に言いますね、 います! ふーん、そっか。好きなアニメとか映画とかねぇの? うーん、アニメは見ないけど、日本の映画なら「君の名は。」とか、「すずめの戸締り」とか、「おおかみこどもの雨と雪」かな。ジブリも好き!! 外国の映画なら、「ピーターラビット」とか、「ザ・グレイテストショーマン」とかが好きかな! へー、じゃあ、最近ハマってるものは? えー、なんだろう…? 推しの子とか、HoneyWorksとか、それくらいかな…? HoneyWorksは小4くらいに聴き出して好きになったかな! このアプリ使ってるってことは…もちろん小説かくの好きだよな? うん!小さい頃から絵本とか小説とか作ってたよ! じゃ、これからよろしくぅー うん!よろしくね!
−素顔−
ずーっと笑顔。 「紬ちゃんは、怒らないの?」 「紬ちゃんは、人にムカついたことがないの?」 紬は、いつも周りの人にそう聞かれる。 何を言われても、暴言を吐かれても、ずーっと、笑っていた。 そんな、一人の少女、紬の物語。 「ガラッ」 一年五組の教室のドアが、ゆっくりと開かれる。 まだ誰もいない教室に、紬はたった一人。 他のクラスの生徒の声だろうか。 少しだけ、元気な声がかすかに聞こえてくる。 紬は書き忘れていた予定黒板を書くため、予定黒板の方へ向かった。 ちょうどチョークを持った瞬間、ドアが勢い良く開けられる。 「ガラッ!」 「わっ」 いきなりの大きな音に驚き、紬はチョークを落としそうになる。 「おはよ」 ドアの開ける音とは反対に、開けた本人は小さな声で面倒くさそうに挨拶をした。 「あぁ、紬か。偉いな、ちゃんと書くんだ、予定黒板。」 「うん」 「てゆーか、今日、話し合いあるよな?ダルくない?」 紬に問いかけながら、クラスメイトの大野蓮は自分の席に通学バックを置いて、教科書や筆箱をしまってゆく。 「う、うん…」 紬は微笑みながら返事をする。 「カリッカリッ…」 予定黒板に教科と内容を書いて、六限目まで書き終わると、自分の席に戻った。 (ドキン、ドキン) 席に戻ると、胸が高鳴る。 隣の席は、クラスメイトの大野蓮。 他のうるさくて性格の悪い男子ではなく、元気で明るく、優しい性格の蓮と隣の席になれたのは、幸運なのかもしれない。 (なんでたろう) 胸が高鳴る理由は、紬自信もよく分からない。 蓮に恋なんてしてないし、蓮は怖くない。 (それなのに、どうして高鳴るんだろう) 「うわ、ごめん!今日私掃除当番だった!カラオケ行けないわ、ごめん!」 放課後、クラスの女子の高い声が教室に響き渡る。 「…紬さんに頼めば?」 「え…?いや、いいって。自分でやるから−」 「紬さん、掃除当番代わってやってくんない?」 「いいよ」 断るのが苦しくて、仕方なく代わった。 その瞬間を、蓮は見ていた。 「おい!」 「わっ…ど、どうしたの?蓮くん?」 「なんでっ……なんでお前は…っ…」 続きを言おうとしているが、泣いていて上手く言えないのだろう。 「れ、蓮くん?だっ、大丈夫?何か言いたいんでしょ?」 「なんでだよっ……なんでそんなに我慢するんだよっ…なんでそんなに仮面かぶって…演技して…いつも作り笑いばっかしてんだよっ…!」 (あ…) 蓮の今まで見たことの無いくらい必死な声と表情に、驚いてしまう。 「あ、あのね…」 「紬っ…!明日、遊びにいかね?」 「…え?」 突然の誘いに、戸惑った。 蓮と紬は特に仲がいいわけでもない。 遊んだこともない。 それなのに、蓮は顔を見て、しっかり言ってくれた。 「…うん、いいよ」 「あ、行く場所さ、お化け屋敷でいい?」 「…え?なんで?」 「お前さ、作り笑いしかしてないだろ。素のお前が見たいんだよ」 (そういうこと…か) 「…うん!ありがとう!」 「おはよ!遅れてごめんねっ」 ちょっとはりきって、紬はオシャレをして出かけた。 「…嬉しい」 「…え?」 「嬉しいよ…お前の素顔、見れるから」 お化け屋敷に着くと、怖そうな見た目の建物に手足が震える。 「…こ、こわぁ〜」 少し進むと、人影が見えた。 「ヴァァァァァァ〜!」 「キャァァァァァァ〜!」 「わ、怖かったぁ〜」 お化け屋敷を出ると、蓮が笑った。 「お前、あんな顔するんだな」 「う、うん…怖くて…」 (ドキン、ドキン) (あれ…?胸が…ドキドキする) 「お前さ、」 「…?」 「無理して笑わなくてもいいんだよ」 「えっ?」 蓮の率直な言葉に、戸惑う。 「お前、無理し過ぎ。作り笑いしなくても、生きてけるし」 (ドキン、ドキン) 「う、うん…ありがとう!」 (あれ…?これって…?) 胸の高鳴りの意味に今、気づき始める。 (そっか…、私、蓮くんに知らないうちに“恋”してたんだ…) 必死に作り笑いして過ごしていた紬を、みんなは見過ごしていた。 不思議に思っても、質問するだけ。 −でも、蓮だけは見過ごさないで、紬の素顔をみつけてくれた。 そのおかげで今は、素顔で過ごしている。 −無理して笑わなくてもいいんだよ− この蓮の言葉は、一生の宝物だ。
だいすき。
「むにゃ…」 (ああ、また朝が来た) 佳奈は、朝起きると、憂鬱な気持ちになる。 (ついこの前までは、こんなんじゃなかったのにな…) 朝ごはんも、なかなか喉を通らない。 「お母さん、食パン半分だけでいい?」 お母さんは少し心配した様子で、 「本当は1枚全部食べた方がいいけど…分かったわ。半分でいいから」 と、パンを半分に切ると、ラップに包んで、冷蔵庫へ入れた。 「行ってきます」 玄関のドアを開けて、外へ出た。 4月、5月はこの瞬間、胸がワクワクしていたのに。 今も、胸は動いている。でも、その動きは、怖くてドキドキしている動きだった。 学校へ着くと、あの2人を見かけてしまった。 その瞬間、胸がギュッと苦しくなる。痛くなる。 “あの2人”とは、同じクラスの川村優香 と、朝日梨乃だ。 「佳奈ちゃん、だよね?」 その明るい声は、彼女の苗字の“朝日”のようだった。 新学期、友達がいなくてひとりぼっちで絵を描いていた佳奈に、初めて明るく声を掛けてくれたのが、梨乃だった。 「うん」 嬉しくて、声には出さなかったけど、心の中ではとても喜んでいた。 「絵、描いてるの?上手いね!」 話しかけてくれるだけでなく、梨乃は褒めてもくれた。 (梨乃ちゃん、優しいな…!) 嬉しくて、楽しくて、梨乃と話すのが好きになっていった。 −そして、ちょうどいい関係になっていった頃、変わり始めてしまった。 (うん、きっと、あの頃からだ…) 佳奈自信も、はっきりと、変わった日を鮮明に覚えている。 「うん、うん!それでね−」 朝、HRが始まる前に教室で梨乃と楽しく話していると、先生が話し始めた。 「みなさん、1回、席に着きましょう」 みんなは先生の言う通りに席に着いた。 先生は、明るい笑顔で、元気よく話し始めた。 「今日から、このクラスに転校生が来ます」 「え、転校生?!」 「どんな子だろう」 「楽しみだね」 先生の言葉に、教室がザワつく。 「はいはい、楽しみなのはわかりますが、転校生が教室に入ってくるので静かに」 みんな、胸をワクワクさせて黒板の方を見ている。 「ガラッ」 ドアが開く音がする。 その後、ドアから細くて長い指がドアに触れ、ドアが閉まった。 「はい、転校生の川村優香さんです」 「可愛い!」 「体細いね!」 「髪サラサラじゃん!モデルみたい!」 転校生の優香を見て、みんな驚き、褒めまくった。 「川村さん、自己紹介を」 今日がしーんとすると、優香は緊張した様子で話し始めた。 「あ、はい。今日から、このクラスに入ります。川村優香です。好きな食べ物はフルーツ、嫌いな食べ物はピーマンと揚げ物です」 「よろしくねー!!」 みんなの元気な声に、優香も安心している様子だった。 「ガタッ」 いきなり、椅子の音がした。 「先生!質問してもいいですか?」 と、手を挙げたのは、梨乃だった。 「はい、いいですよ」 先生の言葉に笑顔になって、質問し始めた。 「えっと…得意なことってなんですか?」 「…うーん…あ、えっと、絵は得意かは分からないけど、好きなのでよく描きます」 (そうなんだ…!) 佳奈は自分と趣味が合いそうで、ちょっと嬉しかった。 だか、そのつかの間、梨乃の言葉に少し胸がドキンとする。 「あ!そうなんですね!私も、たまに描いたりします!休み時間、暇だったら一緒に描こうよ!」 (あ…) 別に、佳奈を仲間はずれにしようなんて言ってないのに、なんだか梨乃が取られてしまう気がしてしまった。 「はい!ありがとう!」 (…そうだ、梨乃ちゃんは優しいから、ひとりぼっちを作りたくないんだ) そう。きっと、学校に慣れない転校生を誘うのは、転校生が孤立しないようにと、優香を想っている、梨乃の優しさなのだ。 (ネガティブに考えない!ね!) 何度も自分に言い聞かせた。 そして数日後。 いつものように、休み時間、佳奈が絵を描いていると、梨乃が席から立った。 (今日も私の方に来てくれる−) そう思っていたのだか、梨乃が向かったのは、優香の席だった。 (え…) 一瞬、なんだか胸が重く、苦しくなった。 (ほら、ネガティブに考えない!だってこの前約束してたじゃん!…きっと、また私の方にも来てくれるって!) 苦しい胸を押さえながら、そう、言い聞かせた。 「うわ、上手!!すっご!!」 梨乃は、優香のスケッチブックを見て、そう言った。 「そうかなぁ〜やだ、照れちゃうなぁ〜」 「アハハ!でも、ホントに上手いよ〜」 梨乃と優香は、笑顔だった。 佳奈は、梨乃の方をずっと見てしまっていた。 (…梨乃ちゃん、私と話してるときよりも笑ってる…?) 「凄い〜!私もこれくらい上手くなりたい〜!」 (…もしかして、私のときは嘘で褒めてただけなのかな…ホントは上手くないのに…) なんでだろう、ネガティブ思考になってしまう。 (…) そして今。 ついに、2人は一緒に登下校するまで、仲を深めていってまったのだ。 別に、佳奈は梨乃や優香に虐められてもない。 でも、きっと優香と話す方が楽しいのだろう。 休み時間になると毎回、優香の席に行って、優香を褒める。 優香と笑う。 その瞬間、胸が苦しくなって、痛くなる。 それから佳奈は、梨乃を避けてしまった。 勝手に。 自分の意思だけで。 梨乃がどう思っているかも知らないで。 本当は避けたくない。 仲良くしたい。 …のに。 そして、そのまま夏休みに入ろうとしていた。 終業式の日の朝。 いつものように、憂鬱になりながら学校へ向かう。 するとだ。 「か〜な!」 (え?) 「おーい、佳奈?」 「え、梨乃ちゃん?」 いきなりの梨乃の登場に、驚きが隠せない。 すると梨乃は、ゆっくりと話し始めた。 「…ごめんね」 「…」 「佳奈、気にしてたでしょ、私のこと」 「うん…」 「ホントの事、話すね。…私、転校生とかが来ると、仲良くなりたい!って、すっごい思っちゃうタイプなの。だから、優香ちゃんに頻繁に話しかけに行っちゃったの」 「…」 「ホントはね、すっごい、佳奈と話したかった。でもね、なんかさ、距離?が出来ちゃって。私のせいだけど。それから話しかけに行くのが怖くて…だから優香ちゃんにね、相談してたの、佳奈のこと」 「…うん」 「そしたら、思い切って話しかけてみたら?ってアドバイスくれて。それが今なの」 「そっか」 「…うん。で、佳奈のこと、嫌いになることなんて絶対無いからね!」 「…ありがとっ…!」 嬉しくて、涙が出てくる。 「…あ、あとさ、梨乃って呼び捨てしてよ!」 「…うん!…梨乃!」 「はーい!…アハハッ!」 この1ページ、ずーっと残しておこう。