はづき

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はづき

ただの学生です‪𓂃 𓈒𓏸໒꒱ 小説書くのがすきです

きみの好きな人

「俺の好きな人誰だと思う」 突然、君は私を見て言ってきた。 そんなのわかってるよ、 好きな人が私じゃないってことくらい 聞かなくたって、わかってるよ。 「わからないけど…」 無愛想で、女の子と話しているところなんて見たことがない。男の子とだって接点を持たない一匹狼な君だったから、思ってもなかった。 好きな人がいることなんて 恋愛なんて興味がなさそうに見えて、 でも、一人でいても存在感は抜群で。 「お前だって言ったらどうする?」

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春と、恋と君の話

「いや、諦めるのはまだ早いって」 タピオカミルクティーをずずっと、飲み干して胡座をかいているのは、我が親友のぐんちゃんだ。底に残ったタピオカをストローで探っている姿は何度見ても面 白くて、つい面白くて吹き出してしまう。 「なにがいけないのかな、私は」 手を伸ばし、机に突っ伏すとまた少し気が重たくなる。 わかってる、何がいけないのか、なんて。 「あんたは、見る目がない。私が別れろって言ったって何も聞かないんだから。イノシシみたいに前に突き進みすぎ」 …私は、所謂"男運"というのがないのかもしれない。何度か恋はした。だけど、1ヶ月もしない間に気持ちが冷めてしまったり、相手に癖があったりと何故かいつも変な人ばかりだった。…私が変な人だから?いやいや、そんな… 「そんなこと言ったってさぁ…」 ため息を吐くと、ぐんちゃんはもうひとつのタピオカミルクティーを私に特別にやる、と言って差し出した。…ん?なんか、失恋してないのに失恋した気分になるじゃないか。 「お互い、大学始まるんだしさ。出会いの1つや2つあるって」 あぁ、そうだ。大学だ。 4月から私達は大学生になる。何も変わり映えのしなかった高校生活だったけど、案外楽しかったんだなって今になって気付いた。…もう、クラスという概念もなくなる。自分の教室も、ロッカーも何もかもなくなってしまう。 「出会いかぁ…」 それはあると思う、大学なんて出会いでできてるようなものだし、そもそも学校は毎日が出会いだった。 「ってかさ、なんで大学でも英語あるわけ?高校でもうお腹いっぱいなんだけど」 スマホを開き、大学の授業スケジュールを見ると「必修 英語」と記載されている授業がなんと2つもあった。勘弁してくれ、英語なんて1個でいいんだよ。 「私も英語あるよ」 ぐんちゃんの大学は、私と違って美術大学だけど、それにも関わらずに英語は学ぶのか…、大学の英語はプレゼンテーションなんていう地獄の時間もあるだろう。英語しか話しちゃいけない時間だってある。中高生の時は、緩い気持ちでテストの時だけ勉強していた英語だったけど、何故か大学は本格的に取り組まないといけない気がする。…まさか、毎週テスト?! いやいや、始まる前からこんなこと考えちゃきりがない。 「とりあえず、明日から学校頑張ろうぜ」 私がそう言うと、ぐんちゃんはまたタピオカをストローで探して、返事をするから少しだけ気が晴れた。 * * * 満開の桜が辺り一面に広がっていて、空と桜がまるで一体化しているように見える。 「うっへぇ、これが大学かぁ」 「やめてよ、その喋り方」 隣には、奇跡的に同じ大学に通うことになった、すみがいる。 すみとの付き合いはぐんちゃんよりも長い。出会ったのは小学四年生の頃。なんとなく会話をしていた結果、今の今まで大の仲良しで、すみは「はづちゃんはお笑い芸人みたいに面白い」と毎日のように笑って言ってくれる。 「おめでとう、すみ!彼氏できたね」 「いや、できてないよ。今、大学来ただけだよね」 お決まりの冗談で笑い合う、これが私とすみの毎日だ。 「…ん?次の授業は」 「英語だね」 まるで重りが体にどすんと落っこちてきたような感覚に陥る。…大学に来て、初めての英語の授業、そして初めて会う人。…大丈夫だろうか。 のろのろと二人で歩いてる途中、すみは号館が私とは違く、じゃあねと言うと珍しくすみは待って、と声をかけてきた。 「明日お昼一緒に食べよう」 すみは天使なのではないだろうか。うん、食べよう。当たり前じゃない、そんなの 「食べるぞ!!」 すみがいなかったら、きっと私は今頃心細くて憂鬱な大学生活のスタートだったと思う。 少しだけ軽くなった足取りで階段を上がり、教室に入る。 時刻は13時20分 授業が始まるまで、あと10分だ。 周りには、もちろん見慣れない顔が並んでいる。…話しかける勇気なんて持ち合わせているわけがない。 私は、空いている席に腰をかけた。 一息ついて、周りを見ると高校とは全く違うことを知る。高校では、決まったグループがすでにあって、一人の子は目立っていた。だけど、今は違う。 案外、1人で平然とした顔でスマホをいじっている子が多い。…それは、今回だけかもしれないけれど。 私は視線を斜め前の席に移す。楽しそうに話している男女二人。 …まさか、もう付き合った?そんなバカな。耳を傾けると、全く知らない言語を話している。これは、日本語なのか?いいや、違う。 女の子も、男の子も優しそうな雰囲気で、なぜかずっと目が離せなかった。 チャイムが鳴って先生が来ても、ずっと近くの席に2人は座って、アイコンタクトをしているものだから、それは確信になった。 …まさかもう、付き合ってる人がいるなんて。私が絶句している間に、先生の話も進んでいて、目の前のスクリーンを見ると「ウォーミングアップ」と大きく記載されているページになっていた。 嫌な予感がする、まさか。先生に指名されて発表をするのではないか 私の予感は見事に的中し、ランダムに呼ばれ会話をし、先生が謎の紙を持って真剣な顔をしてチェックをしている。 …最悪だ。 教室を見回すとざっと30人前後の生徒数だろう。…私が呼ばれるのは絶対すぐだ。 「葉月」 やっぱり、と肩を落として私は重たい体を起こす。 呼ばれ慣れない自分の名前にドキッとして、冷や汗をかく。 外国の先生に葉月だなんて呼ばれたのは何年ぶりだろう。 最初に私が呼ばれたってことは、私はきっとスクリーンに書いてある最初の文章を読むってことだろう。やだな、皆が私のことを見ている気がする。視線をスクリーンにうつさないといけないのに、前を向けない。 だけど、 椅子をガタンとひく音が響き、私は自然と上を向く。 …あ、さっきの 初日から彼女がいて、彼女と一緒に授業を受けている…それが、彼への第一印象だった。 あれ、そういえば彼の名前はなに?ダメだ、なにも聞いてなかった。 教室には静寂な時間が流れている、名前…名前はなんて言う? 「えっと…」 おろおろと私がしているのを見て、彼は困惑したような顔をして微笑んだ。 どうして? 普通だったら、空気が重いのが耐えられなくて下を向くはずなのに。今まで、ずっとそうされてきた。だから、発表が苦手だったんだ。 「繆」 教室は静かで、たしかに彼の言った言葉はわかる、なのに どうしてだろう、私の世界が遅くなったのは。 今日、初めて彼を見て 今日まで一度も会ったことがないのに… その後話した内容は、スクリーンに書いてあった英文。鮮明に覚えているのは彼が私を見てずっと微笑んでいたこと。 90分間の授業も、なぜかあっという間に終わってしまう。 頭の中はもちろん空だ、なにも考えずに椅子にぽかんと座って時間は過ぎた。 授業の終わりを告げる鐘が鳴ると、忙しそうに帰る人で溢れる。 …帰ろう、すみがきっと待ってる。 でも、どうして あの時目が離せなかったんだろう。 鞄を持ち、椅子を引く。 相変わらず、一際目立つのはきっと初日から楽しそうに話している、カップルだからだ。そうに違いない。 彼氏かぁ…私もいつかできるかな。 あの二人を見ていると、私の世界は過去に巻き戻されるんだ。私に足りなかったのは、何なのか鮮明にわかってしまう。 ピロンと通知が鳴ると、すみからのメッセージで 『はづちゃん!授業終わった!待ってるね』 すぐさまスタンプを送信して、教室を出た。 その時 どうしてか、後ろを振り返りたくなった。 ふわりと春風が淡いカーテンを揺らす。 だって、一言くらい話しておけばよかった。 * * * 「え、初日からカップル?」 帰り道、すみに今日のことを話す。すみのクラスにはどうやらカップルはいなかったらしい。 「あーあ、羨ましい。彼氏とか」 同じ大学に彼氏がいたら、一緒に授業受けて…ご飯食べて、一緒に帰れたりするんだろうか。そしてあわよくば、夜になったら近くの観覧車なんか乗ったりして… 「でもなぁ、私…いつもダメだから」 今日は下を向いてばかりな気がする。すみは、そんなことないよと言って笑う。 そういえば、今日の二人 聞き慣れない言語を話してた気がする。中国語?英語ではないのは確かだ。 「大丈夫だよ、はづちゃん」 「…すみ。はづの彼女になる?」 「いいね、はづちゃんが彼氏なの」 こうやってすみとまた一緒に帰れる日がくるなんて、思ってもなかったな。 英語の授業はもちろん嫌だけど、なんだかそんなに嫌ってわけでもなくて。 少しだけ来週になるのが楽しみになった。 * * * 水曜日の二限 教室に入ると、また見慣れない顔が並んでいる。 英語の授業は2個ある。その内の1つは水曜日の…… ん? あれ、なんかおかしい気がする。 少しだけ違和感を感じ、私はすかさずスマホを開いた。 …最悪だ。 初日から教室を間違えるなんて、しかもここから結構離れている教室だ。 気を落としていると、ドア付近に私よりも困った顔をしている女の子がいた。 …この間の、 「もしかして、教室間違えた?」 彼と楽しそうに話していた、女の子だった。 私はすぐ彼女に話しかけた。 「うん、間違えたみたい」 彼女は少し戸惑った顔をして、私を見る。 きっと、留学生なんだろう。でも、日本語上手だなぁ…関心していると、彼女はスマホ画面を私に見せた。 「ここだよね?」 彼女が指さしたのは、教室の号館。 そうそう、私がそう言うと じゃあ一緒に行こうとすぐに教室を出た。 * * * 水曜日の教室は、この前の雰囲気と一緒だった。この前と同じ人がいて、この前とほぼ変わらない席。 教室に着くと、彼女はすぐにこの間の彼と話していた。 …うーん、やっぱり同じ教室に彼氏がいるっていうのは羨ましい。 そんな時期、たしか私にもあった気がする。 2人が微笑ましくて、どこか胸が音を立てて。 毎週、ずっとそれが繰り返されるんだ。 * * * あれから、顔を見合わせると 私と彼女は挨拶をするようになった。しょうちゃんと私は呼んで、葉月ちゃん、と呼び合う関係にいつの間にか発展して… 月曜日の三限、水曜日の二限 この時間だけの関係かもしれない。けど、すみ以外の友達が私にとっては新鮮で。大学で初めてできた友達がしょうちゃんだった。 「葉月ちゃん、彼氏いる?」 教室に着いて早々、しょうちゃんはニヤニヤとした顔を浮かべこんなことを聞いてきた。 「え?!いないよ」 ずっと隠していた私の好奇心が、限界を迎えそうだ…彼と付き合ってるの?私はしょうちゃんにそう聞きたい。そのことばが喉から出ては引っ込んで… 「…しょうちゃんは?」 恐る恐る聞くと、よくぞ聞いてくれたといわんばかりの顔をするしょうちゃん。 …よし、これであの日からのモヤモヤが晴れる。 あれ、でもどうして 私…モヤモヤしてたんだっけ。 「いるよ、もう少しで2年なんだ」 恋する乙女は可愛いって、少女漫画にかいてあったけど本当にその通りだ。 …2年。 あれで2年。まるで付き合いたてみたいな雰囲気だったのに… 「えー!2年!すごいなぁ」 「今、一緒に住んでるんだ」 一緒に住んでる……その言葉を聞いて開いた口が塞がらない。一緒に住んで、一緒の授業を受けて…それでまた同じ家に帰ってるのか…… 私の人生って一体…… いいね、そう口を開こうとした瞬間 机がグラッと揺れた。 「…あ、こんにちは」 あの日以来だった、彼と顔を合わせるのは。 「こんにちは」 やっぱり彼の優しい声に、私はどこか胸がザワザワするんだ。 …私は邪魔じゃないか、完全に。 そう思って立ち去ろうとした瞬間、彼はしょうちゃんに学生証を渡していた。 しょうちゃんとは、仲良くしたい。けど、どうしてだろう。 どこか遠くを見て、あの二人を見たくなるのは。 * * * あれから、私としょうちゃん、彼の3人でよく会話をするようになった。 私はほとんど、しょうちゃんと話して彼は私の隣にいる…みたいな不思議な空間だけど。 「これ見て」 突然、彼はスマホ画面を私に見せてきた。 色鮮やかな魚がたくさん並んでいる市場だった。 「すごい、魚好きなの?」 「うん、好き好き」 日本の市場はまだ行ったことがないから、おすすめの場所ある?そう彼は私に聞いてきた。 そもそも、魚は好きだけど買い物には滅多に行かないからなぁ。 「大和市の…つきみ野?ってところにたくさん魚あるみたいだよ」 知らない、なんて言えるわけがなく 有名なお店の名前を出した。 …数回しか行ったことないけどね。 「ありがとう、今度行くね」 早速彼は、私が言ったお店を調べてチェックマークをつけていた。…そう、彼女と。しょうちゃんと… やっぱり恋人っていいな、私もほしい。 そういえば、 今日はほんの少しだけ夏日だって、天気予報のお兄さんが言ってたっけ。 ほんの少しだけ、夏の太陽が顔を出すって…そう言ってたっけ。 あれ、 どうして私、 こんな寂しくなってるの。 * * * 月日が経つにはあっという間で、もう7月になった。照り返す日差しがジリジリとする季節に…… しょうちゃんとは、あれから連絡先を交換して話すようになって、相変わらず彼とは仲良さそうに話している。 私はその間にいて……って、やっぱり私は邪魔だな…そのポジションにいてもいいのかな。 彼とは、ほんの少しだけ話すくらい。 それでいい、それで…いいんだと思う。 今日も授業が終わると、しょうちゃんと私、彼は一緒に帰る。 しょうちゃんは校舎を出て、右方向に。彼はそのまま学校にいるか、しょうちゃんと同じ方向に。私は左方向。 コンビニの前でいつも、また来週ねといって手を振る。 …それが定番だったはず。 なのに、 隣にいるのはなぜか、彼。え?どうして?しょうちゃんと同じ家に住んでるんじゃないの? そもそも、一緒に帰るってなに…?どうして、私は友達の彼氏と…… 「そ、そういえばこの間の市場行ったの?」 今日は一段と暑い気がする、冷や汗が止まらない。どうして、彼は今 私と一緒にいる?? 「うん、葉月がおすすめしてくれてたでしょ?」 …葉月って言った、私の名前知ってたなんて。 うん、必死の思いで相槌をした。 「彼女はいいの?一緒に…」 私はバカだと思う、こんなことを聞いてしまうなんて。 時間がゆっくり流れ、彼は足を止める。 「…彼女?」 彼は一瞬だけ、ほんの一秒か二秒くらい、何かを考えるように目を細めた。 夏の光がその横顔を切り取って、まるで写真の中みたいに静止して見える。 「しょうちゃん…だから、一緒に帰らなくてもいいのかなって…」 ジリジリと照りつける日差し …今日は一段と暑い。 「え、付き合ってないよ。全然、ただの友達だよ」 あまりにもさらっと言うから、胸の奥でずっと絡まっていた何かが、一気に解けていくのがわかった。 同時に、言いようのない安堵と――それに混じった妙な期待みたいなものが込み上げてくる。 「…そっか」 自分でも笑ってしまうくらい、小さく呟いた。 「じゃあ、彼女は?」 どうして私は今…初めて一緒に帰る人にこんな話をしてるんだろう。…緊張してるから?何を話したらいいのか、わからないから? 彼のことが気になるから? 「今はいないよ」 「今は?」 「昔ね、いたけど。僕が日本に行くからって別れたんだ。最悪な別れ方だったけど」 …私、なに聞いてるんだろう。 彼は無表情のまま、私の隣を歩く。 最初に恋をしたのは、小学生の頃 今でも覚えてる、あの初恋は私にとってずっと恋愛のサンプルそのものだから。 その後も、何度か恋愛はした。けど、どれもがまがい物で。 「日本じゃ、遠いもんね」 うん、と言って彼は私をじっと見る。 なぜか最初からずっと 私は彼の目には弱いんだ …だから、あの時も? 「葉月は?」 信号が赤になり、足を止めた瞬間 彼はまた私を見つめて言う。 「いない、いるわけないよ」 笑ってそう言うと、彼は小さく頷いた。 あの日から この気持ちの名前は 恋かどうか、なんて考えてもなかった。 だけど今でも覚えてる、 どうして彼を気になってしまうのかも もうわかっていたのに。 * * * 「さっさと別れて正解よ、はづっち」 「そうそう、本当に心配したよ」 はぁ、とまたお馴染みのため息を吐くと 私はほんとになにをしていたんだろう、と何故か冷静になる。 私のことがあると必ずぐんちゃんの家に集まり すみ、ぐんちゃん、私で会議をする。 これが当たり前で…だいたいこの会議がある日は…… 「はづっち…何回目よ?」 はい。ぐんちゃんのこの言葉を聞くのは5回目です。 「…5回目です」 説教をされるのも、今日できっと5回目になる。すみをチラッと見ると すみは曇った顔をして 「まぁ、でも別れられて本当によかった。私、あの人嫌いだし。そもそもなんか信じられなかったというか…」 彼と初めて帰ったあの日から もう半年が経った。私はあれから、彼のことを考えなくなった。彼は友達だからだ、だけど…… 「そもそも、あいつ年上の自覚ないし」 ぐんちゃんは相変わらず遠慮なしに思ってることを言う。ぐんちゃんの言葉が胸に刺さる。…何度繰り返すんだろう、なにしてるんだろう… 私の胸の奥に刺さった何かの棘はずっと抜けないまま。 そのままの状態で、また私は誰かと付き合って…失敗して。 もちろんその人のことを考えて、好きになった瞬間もあった。だけど、いつもこうやって失敗するんだ。 彼のことは頭の奥にあった。 もちろん、付き合っていた当初は彼のことはあまり考えてはなかった…なのに、私は、彼からのメッセージがある度に 「ほんと、別れて正解だと思う」 やっと気持ちが晴れた気がした、私は笑ってそう言うと2人はやれやれとした顔でジュースを口につけた。 私は、開いてしまっていた。 彼からのメッセージを。 デートしている時も、どこにいても… 別れて正解だ、あの人とずっと付き合っていたって…自分がおかしくなるだけだ。 授業がある日も、彼はいたけど 私は何故か彼の後ろ姿だけを見て、話しかけられなかった。 もう、自分がどうしたいのかさえも見失っていた。 彼と初めて一緒に帰ったあの日は、たしかすごい暑い日だった。 それで… いつだったか、またもう一度一緒に帰った日があった。 私は心が疲れていて、正直、その日は一人でいたかったのに 何故か彼と一緒にいるとすごく安心して… 「友達ね…」 ぼそっと呟くと、2人は首を傾げて私を見つめた。友達だよ、友達。 桜が散って、向日葵が咲き、 秋は短くて もうあっという間に冬になる。 …もう少しで、1年は終わる。 「ねぇ、それにしてもさ。1年間あっという間だったよね」 相変わらず、タピオカを啜っているぐんちゃんはずっと変わらなくて。 気づけばもう もう、明日で1年生最後の授業だ。 「ほんとに早かったなぁ」 すみは荷物をまとめながら、そういえばと続けた。 「ねぇ、はづちゃん。この間…男の子と帰ってたよねー」 すみは珍しくニヤニヤとした顔を浮かべながら聞いてきた。不覚にも、ドキッとした。…きっと、彼のことだ。 「友達だよ!」 自分で言った言葉なのに、なぜか苦しかったのを覚えてる。 * * * 「葉月ちゃん、じゃあいい年にしてね」 無事に最後の授業が終わって、しょうちゃん、私…そして彼の3人で並びながら歩く。 お決まりのコンビニ前で私達は解散する。 あの日の私には、彼と連絡先を交換するだとか、彼とどうなりたいか、とかそんなことは考えてもなかった。 ただ、少しだけ彼のことになると後ろ髪引かれるんだ。 「うん、しょうちゃんもね」 しょうちゃんに笑顔で手を振る、彼にもちゃんと笑えて言えたか、わからないけど…2人は、何かを話しているようだったから私は先に2人に背中を向けて歩く。 …1年も経ってない、色んな出会いがあった。あんなに嫌だった英語の授業もそこまで苦ではなかった。 とぼとぼと帰り道を歩きながら思う。 …寒いなぁ。 体を刺すような風、重たくて歩きにくい足。 今年も雪、降るかな 「待って」 忙しない足音と同時に、私を引止めた声 「どうしたの?」 振り向くとそこには、息を切らしている彼がいて。…しょうちゃんと、一緒に帰ったんじゃなかったの? 私は平然を装って、どうしたの?なんて聞いたけど、本当はちょっとだけ期待してたんだ。 「今日、一緒に帰れないかと思って」 今日で彼と一緒に帰るのは、3回目だ。 少し戸惑って頷いた。 1歩歩くと、彼はなぜかなにか言いたそうな顔をして立ち止まっていた。どうしたの?と、また聞くと彼はスマホをポケットの中から取り出した。 「LINEでも…連絡先交換したい」 私は、もしかして…と自惚れた。中国ではこれは普通のことなんだとしたら、きっと罪だ。 連絡先を交換したあと、私と彼は駅まで歩いた。 さっきまであんなに寒かったのに、今は全然寒くない。 連絡先なんて、しょうちゃんから聞けばいいのに。どうして直接交換してくれたの? 私は横目で彼の横顔を一瞬だけ見た。 ポーカーフェイスで、何を考えてるのか全くわからない。わかるのは、彼は優しい。そのことだけで 「そういえば、家は?どこら辺なの?」 彼はいつも用事があるから、と言って駅まで来てくれて。 最初は本当に用事があるんだと思っていたけれど… 「あー、あっちだよ」 交差点に着き、信号が赤になると彼は駅とは反対方向を指さした。 どうして? 「いつも帰りにスーパーに寄る用事があるから」 だから気にしないでくれって、言いたいんだろう。 言葉がなにもでなくなる、私はやっとの思いで彼と会話を繋げる。 慌てて出した日本のお雑煮は関東と関西で味が違う話なんかでも彼は笑って聞いてくれた。 新鮮だった、日本人だったらこんな話鼻で笑われるくらい、どうってことない話題なのに。 私が日本人だから彼は興味があって… でも、 もし、万が一 いや、なに考えてるの?でも… 彼と恋したら…… 「じゃあ、また」 あっという間に駅について、改札口で彼は私に手を振る。 次はある? その確信はない ____「日本じゃ、遠いもんね」 自分で言った言葉なのに、心に突き刺さって抜けない。 わかってる、 躊躇ってしまう理由も、全部。 * * * 彼と連絡先を交換してから、私と彼は長文で連絡をし合う仲になった。 柄でもない、私が長文でLINEをするなんて。彼と話していると新鮮で、何でもない私の話題でも倍にして文字で返ってくる。 「好きかもしれない…?!」 食堂で、すみに今までの事を打ち明けると案外すみは、わかってましたといわんばかりの顔をした。 「…かも、だよ」 すみにじっと顔を見られて、恥ずかしくなって下を向く。 「だって、はづちゃん。あの日すごく楽しそうにしてた、初めて見たよ」 "あの日" すみが言うあの日は、彼と一緒に帰った日だ。 あの日は、付き合っていた人にどう別れを打ち明けるか、考えていて誰とも話したくなかった日 だけど、私はあの短い帰り道で彼に救われたんだ。 「あの人と一緒にいると、安心する。楽しくて…」 ふと、窓側に視線を変えると そこには彼がいた。 おかしい、たくさんの人が並んでいる食堂で3秒もかからずに彼だけを見つけられるなんて。 「…どれ、見せて」 すみは、私の様子に気がついたのか身を乗り出して食堂の列を見た。 私はどうしてか、席を離れて彼のそばへと走り出して。自分でもわからない。どうして、こんなにも体が勝手に動いてしまうのか。 階段の1番上で、彼を見下ろす。 すみは、眼鏡までかけ目を細めて彼を見ていた。 …このまま、ずっと誤魔化していくの? 彼は夏になったら自分の国へ帰ってしまう、ずっと…このまま… 「私は、はづちゃんのこと応援してる」 すみはまだ彼をじっと見て、言う。 私も彼を見た 「すみ…」 "私はこれから先どうしたらいい?" そう言おうとした瞬間、突然彼は顔を上げて私見た。 目が合った瞬間、最初は目を丸くしてその次にまたあの笑顔で、私に手を振った どうしたらいい? もう、誤魔化しなんて効かない 曖昧なんかじゃない 私は嘘ばかり、怖がってばかりで、 なにも進めない、このままじゃダメだ。 「はづちゃんがどうしたいか、だよ」 彼はすみにも気がついて、軽く会釈をした。すみも彼に会釈して、優しく微笑んで大丈夫、と言う。 私がどうしたいのか、 そんなのわかってる。ずっと、わかってた。 期待してしまう自分も… 違う国、違う言語 違う未来だって、あるかもしれない。 だからずっと踏み出せなかった。 私が、彼とどうなりたいかなんて そんなの一緒にいたい、たったそれだけなのに。 「わかってるよ」 視線の先で、彼はまた私を見上げて笑う。なんでずっとそこにいるの?って顔をして。 なんでだろうね、それはきっと 私はとっくの前から…初めて見たあの瞬間から、心の奥にいつも貴方がいたから。 私に背を向けて、友達の元へ行く彼の姿を見るとまた寂しくなって。 …だって、私は彼と一緒に食事をする関係性でもないし、口実だってないから。 * * * 「で?どうするの?はづっちは」 すみの次はぐんちゃんに問い詰められる私… どうするの?その答えはもう決まってる。 「一緒にいたい」 私がだした答えに、ぐんちゃんは少し驚いた顔をして、そう、と小さく呟いた。 「なら、デートにでも行ってみたらどうよ?誘われてないの?」 ぐんちゃんの言葉を聞いて、私は自分の失態を突然思い出した。 彼と連絡先を交換した次の日だった 池袋の話になって、今度一緒に行かない?と誘われたことがあったんだ。 私はその時、なんて答えればいいのかわからなくて… そのまま話題は流れていき…… 固まっている私を見て、ぐんちゃんは勘づいたのか、ならはづっちから誘ってみたらどう?と、提案をしてきた。 「無理無理!どこに?なんて言って誘うの?」 デートなんて、今までしたことなんてなかった。 何人かと付き合いはしたけれど、デートといった付き合いもなく別れてしまったし そもそも、デートってなにをする? ぐんちゃんを見ると、むっとした顔をされた。 「私に聞かないでよ、デートなんてしたことないんだから。はづっちの方が経験豊富でしょ?」 「私は…わからないよ、こんなの。誘って、断られたら…」 思わず下を向いてしまう。断られる可能性はある。だって、直接話したことなんてあまりなくて。彼と私はしょうちゃんの共通の友人なだけで… 「まぁ、当たって砕けてみたら?」 いや、砕けるのかよ。 だけど 砕けてみたら?ぐんちゃんのその言葉に納得した。 もしも、断られたらその時は 高校と違って、クラスが一緒で毎日会うわけでもない。 大丈夫、なんとかやっていける気がする。 「はづっち。こういう時こそSNSよ」 ぐんちゃんは得意げにスマホを指差した。…なにかの情報を見ろということか。 私はSNSを開き、画面をスクロールし続けた。 「どう?いいのありそう?」 「んー、ないかなぁ」 その瞬間、私はほんの少しだけ画面をスクロールする指を止めた。 …ジブリの展覧会 彼はジブリに興味あるかな、日本の映画だし…きっと、見たことなんてないかな。 「応援してるから」 またタピオカをズーズーと吸いながら言うぐんちゃんは、面白くて もしもだめだったとしても、それでも大丈夫って思えた。 * * * 大学生活にもすっかりと慣れて、気づけば2度目の夏が顔を覗かせていた。 もう、6月 あれから彼と今でも連絡を取り合っている。週に一度だけ授業が同じで会う。 私はというと、あれから何も行動ができないまま… 今日は、週に一度だけの彼と同じ授業で。 隣の席に座る彼の顔は、あの時と同じポーカーフェイスで何を考えているのか相変わらずわからない。 授業は淡々と進んでいく中、彼のスマホに視線を移した。 彼がじっと見ているのは、あの日見たジブリの展覧会だった。 信じられなかった、彼が私と同じ記事を見ていたこと …当たって砕けてみたら? ぐんちゃんの言葉が脳裏に過ぎる。 「それ、私も見たよ」 小さな声で彼に話しかけた。すると、彼は、記事をスクロールして詳細を見た。 「東京なんだね」 「…東京かぁ」 近場だったら、誘いやすい気がするけれど東京じゃ…きっと遠いし、ハードル高いよね。 でも、言ってみる?当たって砕けみても、きっと今この瞬間しかない気がする。 「…い、行ってみる…?」 これが私の精一杯だった、 いつも通り喋れなくて恐る恐る彼を見た。 「え?!」 今までに聞いたことがないほど、大きな声だった。授業中なことも忘れて、私は笑ってしまった。 嫌われてはないと思う、それはわかってる。 「わかった、行こう。いつがいい?」 彼はまたいつもみたいに優しく微笑んでくれる。 私の世界は、真っ白なキャンパスだった だけど彼が私の世界に入ってからは パレットのように日々、色が追加されていって、重ねられていく。 「いつでも」 私がそう返事をすると、彼はまたスマホを見て楽しそうにしていて。 …私のこと、どう思ってる? 思わずそう聞いてしまいたいくらい、心が弾んだ。 * * * あっという間に、彼と展覧会に行く前日の夜だ。 私はあれからというと、ネットに時間を費やしている。本当に、取り憑かれたかのように中国のことを調べ尽くした。掲示板サイトは全部見た。中国ではどのような恋愛をするのか、好きな人にはどんな対応をするのか… 『まぁ、一旦落ち着きなよ。はづっち。1回目のデートはさ相手を見るだけってことにして』 ネットを見て、ぐんちゃんとすみとのメッセージの往復だ。 彼だけを見る、1回目のデート 『様子を見る、だけにしてみたら?』 続いてすみからの返信が来る、私だってこの時は楽しむことだけを考えて彼といたいと思っていた…けど 『じゃあ、今度カラオケも行こうよ!絶対ね、約束だよ』 突然の彼からのメッセージだった。 …次は、ある? その確信はあるんじゃないかなって。 もし、私が告白したら 彼はどんな反応をする?あの笑顔で頷いてくれる?それとも… 私は翻訳アプリを開き、すぐに検索をした。 中国語で、好きはなんていう? 「我喜欢你…か」 私は気になって、他の言葉も調べてみることにした。我非常喜欢你…あなたが大好き。いやいや、こんなことを調べてどうするつもり?彼に言う?そんな勇気…ない。 でも、頭から離れない。英語の1文覚えるのだって、大変な私なのにどうして、習ったこともない中国語は頭にすぐ入るんだろう。…彼の顔が浮かぶ。 * * * 朝日が眩しくて、目を覚ました。カーテンの隙間から光が照り返している。何の話をしよう、彼は…楽しみにしてくれてるのかな。 ふわふわとした気持ちで、1時間目の英語の授業を受ける。…ふと半年前、彼と出会った英語の授業を思い出す。 今でも覚えてる、彼の名前は聞き慣れなくて、私があたふたしてると彼は優しく笑ってくれて。私は、その笑顔をみてどうしようもなく、彼を知りたくなった。 名前がわからなかったことを謝る?何の話をしよう、色々な口実をつけて、彼との関係を築きたかった。 『今日は楽しむんだよ、はづっち』 珍しくぐんちゃんからのメッセージ、いつもは私から送らないと滅多にこないのに…頑張ってみよう、私は昨日見た中国語翻訳アプリを開いた。 …気が早いって、前に突き進みすぎだってまたあの二人からまた怒られるかもしれない。なにも成長してないけど…私は1分でも早く彼の隣にいれる口実がほしい。 1時間目が終わって、彼と教室を出てすぐの階段の下で待ち合わせをしてる。授業が始まって1時間が経つ。10時…あと、40分すれば… こんなに誰かを待つことがドキドキすることだって、今まで知らなかった。…今日、彼に好きだってもしも言ったら… 『おはよう、授業終わったら教えてね。階段の下で待ってるね』 朝のメッセージは初めてだった。…おはよう、ありきたりな言葉なのにこんなに心が温かくなるってことも、彼が教えてくれた。それから、今日は楽しみだねとメッセージも続けてくる。 私は単純だ、ちょろいと自覚している。それから二人にメッセージを返してからはずっと中国語翻訳アプリを眺めた。 英語の授業を受けているのに 頭の中は中国語のことばかり、…半年前と似ている。 きっと、私は彼としょうちゃんが付き合っていたとしても彼を好きになっていたと思う。 だから、もし今日失敗しても変わらない。私の気持ちは変わらない。 いつも何を考えているかわからない横顔も、「なに考えてるの?」って、今日聞くために私は彼と会う。 * * * 授業が終わる鐘が鳴ると、私の胸騒ぎはより一層大きくなっていく。 教室を出て、階段を降りると 彼はもう待ち合わせ場所に来ていた。私が声をかけようとする前に、私に気づいて手を振ってくれて…彼はいつもとは違っているように見える。今日は、わかるよ。きっと楽しみにしてくれてたって、私と同じ気持ちだって。 彼の隣へ行くと、彼は無邪気そうに笑った。私が知ってる彼は、確かに私を見て微笑んでくれるけど… 「可愛いね、すごく」 …やっぱり、今日は違う。私は彼がわからなくて、何度も横顔を見た。いつものポーカーフェイスの面影はなくて、私が知らない彼が隣にいて …なんて、返す? ありがとう、の一言?それだと、冷たい感じがする。それとも…もう、今日は我慢しないで聞いてみようかな。 「…なんで、今までそんな、可愛いとか言わなかったよね」 わざと明るく言ってみせた、返事はもうわかってる。きっと、なんとなく。とかそんなあやふやな返事だって。 「思ってるよ、ずっと…でも今日は本当に可愛いから」 私は少し歩く速度を緩めた。今日は、朝起きてすぐに思い浮かんだのは彼の顔だった。いつもより早く起きて、準備をして…洋服も、3日前からどれにしようか、とか考えて…人生で初めてだった。誰かに会うのがこんなにドキドキするのなんて。 「そうなんだ…」 絶対今は、顔が赤いと思う。今日は少しだけ暑いから彼にはバレていないってそう願う。また、彼の横顔を見ると彼は全然赤くなんてなってなくて。…慣れてるのかな、なんて思って少しだけ寂しくなった。 * * * 電車で1時間、って聞くとすごく遠く感じてた。けれど、彼といると本当にあっという間で。電車の中では何の話をしたのか忘れてしまった、それくらい私は必死で…今日の夕方まで。いいや、展覧会を見終わってすぐ…?それとも、まだやっぱり早い? 期待してしまうのは、あの日 最後の授業だからと言って連絡先を交換しに来てくれたから、用事なんてないのに駅まで送って、微笑んでくれるから。 今日、楽しみにしてくれてたって少しでも私と同じ気持ちでいてくれてるって思うから。 展覧会に着くと、彼はカメラを出して展示物をじっと見ていて。 「ね、見て。カメラ持ってきたんだ」 「すごいね、そのカメラ」 振り返ると彼がいて、かと思ったら 横に彼がいて。視線を前に移すと彼がいて。私の世界は変わった、この展覧会みたいに最初はただの空間だったけど、少しずつ少しずつ、鮮やかになっていった。 私が少しだけ先に行って、一瞬だけ後ろを見ると彼は私に気づいて、笑って隣に来てくれた。当たって砕けてみてもいいってやっぱりそう思うよ。だって、今日はもう充分楽しいから。 展覧会は、ゆっくり見ていても2時間ほどで終わってしまった。 夢みたいな空間だった、私の好きな映画と、私が好きな映画を好きな彼がいて。 外はまだ少しだけ明るい、彼はきっと困ってるだろう。このまま帰るか、それとも…って。 「そういえば、私ね初めて覚えた中国語があるんだよ」 初デートは短い時間の方がいいって、聞くけれど…それと、平均で見ると3回目のデートで告白をするのが普通だって聞くけれど。私は今日頑張るってそう、決めたんだ。 「え?なに?」 答え合わせをしないと、私はわがままだから曖昧な関係は耐えられないから。 私がどうしたいか、なんて そんなの一緒にいたい、ずっとそれだけだよ。

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春と、恋と君の話

君との恋はセーブができない.

きみとの恋はセーブができない. 「そこのルビー回収してクリアだよ!」 深夜0時、私達はゲームで待ち合わせをする。何気ない会話をして。 「なゆ、あのさ」 きっと今夜もいつも通りの時間が過ぎていく そう、思っていた。 「ん?」 「…俺、お前が好きだ」 だけど あろうことかこいつ、橋川雪斗は深夜0時に大爆弾を投下しやがったのだ。 「…へ?」 いやいや、何言ってんの、こいつ。私達はずっと馬鹿みたいに笑い合うただの友達だったじゃん。 「冗談じゃないから」 いつもみたいにヘラヘラしてない聞き慣れない声。 「な、何言ってんの…」 「なにって、好きだって言っただけ」 調子が狂う、こいつが私を好き? 有り得ない。だっていつも可愛い女の子達に囲まれて、告白されてるのに。 私よりも魅力的な子がたくさん周りにいるのに。 「なんで私なの…」 「なゆがいいから」 「私じゃ…」 “私じゃ、ダメだよ“そう言いかけようとした時、画面が真っ暗になった。 「充電、切れた…」 まるで、さっきのことが夢だったみたい。…いや、夢に決まってる。 「なゆがいいから」 だけど 何度も再生される、あいつの声。心臓がぐっと掴まれたような感覚だった。 ため息をつくと、ベッドに乱暴に投げ出してあったスマホが光る。 夢じゃないと思わせるような 「また明日」 あいつ、雪斗からのメッセージだった。 * * * 一睡も出来なかった。それはもちろん、全部あいつのせい。 朝起きて1番にあいつの顔が浮かんだ。…やっぱり夢かもしれない。そう思ってスマホを開くと、「また明日」という雪斗からのメッセージがあった。 どんな顔して会えばいい?昨日は本気なの?それとも…… 「なゆ、どしたその顔」 「ありさ?!」 机をバン、と勢いよく叩き大きな目を見開いて見上げる 私の中学の頃からの友達、ありさ。 …ありさなら相談してみてもいいかもしれない。 チラッと横目で雪斗の席を見て、雪斗がいないことを確信した私は 実はね、と昨日のことを話した。 * * * 「あ、ついに山が動いたってわけね?」 話を聞き終わったありさは、呆気ないような顔で言った。 「…へ?」 全て知ってますという顔で私に微笑むありさに頭が真っ白になる。 「雪斗くんさぁ、バレバレなのよね」 「バレバレって…?」 そんなの当たり前じゃん、とありさは雪斗の席を見て続ける、 「なゆを好きなのが、よ」 「い、今までそんな素振りなんてなかった…し、わかんないよ」 「でも昨日好きだって言われたんでしょ?」 …確かに言われた。 私と雪斗の間には恋話なんてものは今までなかった。なのに、いきなり… いつもヘラヘラしてて能天気なあいつが私を好きだなんて、 「だ、だけどやっぱり昨日のやつは冗談っていうか…」 「…本気だって言ってんだろ」 ドンと机に鞄を置く音と、同時に不機嫌そうな雪斗の声。 「本気って、なんで私に…」 今までそんな素振り見せなかったじゃん、彼女がほしいって、好きな人いるって恋愛話もお互いなかったじゃん。動揺する私を置いて雪斗はぶっきらぼうに言う。 「何回言えば気が済むんだよ、俺はなゆが好きだって」 なゆがいいんだよ、 ため息混じりの声と、色素の薄い大きな瞳に吸い込まれそうになる。 「雪斗くん、ずっと好きだったもんね。なゆのこと」 ね?と雪斗を見て言うありさ。私、なにもわからなかったよ。 「あぁ、なゆ。そういうことだから。帰り待ってる」 「え、あ、うん…」 いやどういうこと? と、突っ込む思考さえ回らなかった。 雪斗が席に戻った瞬間、甲高いチャイムが校内に響き渡る。チャイムが煩い、いいや。違う、私が。私の鼓動が煩いのかもしれない。 「なゆ、あんた顔真っ赤だよ」 今まで雪斗を意識したことがない、なんてことはなかった。1度だけ、雪斗には好きな人がいるのか、とか。告白の返事どうしたの?と聞きたいことがあった。 いつも囲まれている女の子の中に好きな人がいるんじゃないか、って 雪斗に彼女ができたら、好きな人ができたら 毎晩一緒にゲームできなくなってしまうのかな?なんて考えたり 雪斗はどんな子を好きになるんだろうと考えた瞬間もあった。 * * * そんなことばかり考えていたからか あっという間に終わった、今日。 夕焼けが教室を赤く染め、校舎は放課後の世界へと変わり始めた。 「なゆ」 雪斗はいつもと変わらない声 いつもと変わらない、私の名前を呼ぶ声。 …聞き慣れいるはずの声なのに、いつもはすぐに雪斗の目を見て話せるのに。 「な、なに?」 「なんだよ、ぼーっとして」 苦笑気味に雪斗は私の顔を覗く。 雪斗の隣って、雪斗と2人きりってこんなにもドキドキしてたっけ?自分が自分じゃないみたいに。 「だって……」 あんなこと言われたら、 「なんだよ」 「今まで、ずっと友達だって思ってたから急にあんなこと言われても私は…」 私は、どんな顔して雪斗といればいいのかわからない。友達なのは確か。雪斗に対して抱いているこの気持ちが恋なのかわからない。 ただ1つわかるのは、雪斗の周りがたったの一晩で輝いていること。 「…俺はなゆと出会った時から友達だなんて思ったことない」 「え…?」 色素の薄い大きな瞳と目が合い、雪斗はくすっと笑う。 その笑顔に不意にも胸が鳴る。 そんな優しく微笑む雪斗を知らない。 「俺は、ずっと必死だった今も」 雪斗と出会ったのは、高校1年生の頃。 席が隣同士で最初は少しツンとしてて苦手だった。 だけど、月日が経つにつれて 同じゲームが好きだったり、案外優しいところがあったりと自然と仲良くなった。 あの日からずっと私のことを…? そう思うと急に体が熱くなる。 「なゆが好きなゲーム難しいから…」 「難しいって、ずっとやってたって言ってたじゃん」 「なゆがやってるっていうから…、話せる口実が欲しかっただけ」 まぁでも今はハマっちゃったけど、と言う雪斗の表情があまりにも真っ直ぐで。 …どうしてそんな、真っ直ぐなの。今まで目を逸らしてた私が嫌になるよ。 「少しは俺のこと考えてくれますか」 夕日の光なんかじゃない。 赤く染る雪斗の顔。 そんな顔、今まで見たことがなかった。…どうして今まで、気づけなかったの? 不自然な敬語を使う雪斗が面白くて 「あ、昨日セーブするの忘れた…」 「おい!無視かよ」 「セーブさせてよ〜」 考えてる、この気持ちはきっとあと少しで恋になる。

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君との恋はセーブができない.

そんなのズルい、

「可愛いかよっ!」 教室の中だというのに 私の一日の始まりはだいたいこの言葉から始まる。 瞬きを忘れるくらいにじっと、雑誌の中にいる推しを見つめる。 私の推し 咲くんは、色素が薄くて大きい目と、ふわふわの黒髪がチャームポイントの人気モデル。 「ほんとあんたは犬好きね」 はぁ、とため息をついて真理が言う。 真理は小さい頃からずっと一緒にいて 親友でもあり幼なじみでもある存在。 「犬じゃないー!咲くん!」 「はいはい」 いつも私を見て呆れている様子の真理だけど 実は真理は私の唯一のオタ友だったりする。 「咲くん、茶髪になってる!見た?」 キラキラとした目で私の目の前に携帯を映し出した真理。 「はぁっ?!かわ…かわ!」 画面に映る咲くんは、まるで犬みたいに可愛くて相変わらずふわふわしてて… 「あー!こんな彼氏がいたらな…」 思わず大きな声を出した私を見て 真理は悪い顔して微笑んだ。 「可愛い系なら、いるじゃん」 「…え?」 そんな人なんていた? 異性に対して可愛いなんて思ったのは 推しだけのはず…、 「湊くん」 「へ?!」 本当に予想もしていなかった名前があがった。 「ないない!」 湊くんは、学年でも有名な無愛想男子。 女子は特に男子に対しまであまり接していないような人。 それに、同じクラスでも 関わったことなんてない。 「そう?私には可愛く見えるよ」 真理は何故か勝ち誇った顔をして言った。 「えー?」 どうも理解ができない、一言も話したことがない男子。 …私がただ知らないだけ? いやいや、真の可愛いはやっぱり… 「それに湊くんかっこいいし」 「かっこいいのかー?」 真の可愛いは外見から可愛いんだから! 真理と話してる内にHRを知らせるチャイムが鳴った。 「じゃあ!また!」 「うん!」 手を振って、私は自分の教室に戻り席に座った。 …湊くんが可愛い…かぁ。 さっきの真理との会話を思い出し 私は右隣前の席に座っている 湊くんの背中を眺めた。 …ないない! だって可愛いというよりきっと かっこいい系だ。私は絶対可愛い系主義者だし…! 誰かに言い聞かせるかのように 自分の世界に浸ってる私の前を覚ますかのように 「おい」 低く、ぶっきらぼうな声が耳に響く。 「…へ?」 恐る恐る見上げてみると、声の主は さっき話しにあがっていた湊くん本人だった。 真正面から見る、湊くんに 不意にもドキッとした。 そういえば、彼 学年の中でもすごい人気者なんだっけ… …あれ? そんな人が、私なんかに用なんてあったっけ? 教室の中の賑やかな声と 真剣な私を見つめる瞳。 「俺、」 ドキドキして、目を逸らしたいのに 逸らせない。逸らさせてくれない。 「好きなんだ、お前のこと」 時が止まった感覚というのは 正しくこの瞬間をいうんだろう。 いま、なんて? す、すき?誰が?私を? 頭の中が真っ白で疑問しか浮かばない。 「…え?!」 もう一度見上げた 湊くんの顔は苺みたいに真っ赤に染まっていて。

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そんなのズルい、