ゆた
4 件の小説年に一度の
これは私の愚痴なのだけれど 文化的でめでたい日に 決まった食事をする慣わし 大変律儀で素晴らしい 私たち人間は真面目である 好きでもないが嫌いでもない 思い出はあるが思い入れはない ずぼらな母がテキパキと 年に一度の大仕事 あぁまた一年過ぎたのか 意味もない日々が過ぎたのだ 浸る間もなく日常に 戻れば明日はやってくる 時に意味を与えるは 自分自身でもあるだろう それでも今日は沈みたい これは私の愚痴なのだから
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強さ
“強さ”ってなんだと思う? 悲しみに耐えること? 誰かの味方になること? 自分の気持ちを抑えること? それも一種の強さ でもきっとそれは見せかけで いつか自分を壊してしまう 心のSOSを 程よく出せるようにならなきゃね そして自分の周りのSOSも 気づいて 寄り添えたら きっと貴方は強い人 強さって 優しさって 意思なんだなぁ
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栗
母のささくれた指先が 私の頬を包み込む 棘で愛を守っている 悴んだ手に包まれた 秋の小さな落とし物 暖かい蓑から抜け出して 優しさを返しに木を抱く
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君死にたまふことなかれ
頭にこだまする旋律に 指を弾かれ、優しく 私はその先を見つめていた 元より涙とは単にせせらぎであり 長い人生において、その尺は瞬である しかしながら私の記憶の大半を占めていること 君は笑うだろうか 目前に立ち込める揺らぎも 手で掻くように切り分け 進む方向は違えど 目的地は、いつもふるさと 小川が大きな河川となり やがて海に還るとき 私は君を想う 手を組み願うは 溶けゆく雪原の 徐々に顔を出す緑が 私を迎えうること まもなく寒さに耐えずとも 帰り道がわかるだろう 聞かぬ素振りの重い風 君死にたまふことなかれ
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