ゆた
5 件の小説安堵
人に優しくする意味って何だろうか。 相手によく思われたいからだろうか。 世間体を気にしているからだろうか。 もし目の前で人が倒れたら、 周りに誰もいなくても、 一生出会わないであろう人でも、 言葉が通じなくても、 私は手を差し伸べると思う。 だって、優しい自分でありたいから。 優しい自分が好きだから。 エゴでもいいから、手を差し伸べたい。 見て見ぬふりをすると、 もやもやが、 私をしばらく支配する。 そのもやもやと、 誰かに優しくできた時の幸せな感情が、 私は人として生きていると 安堵させてくれる。
年に一度の
これは私の愚痴なのだけれど 文化的でめでたい日に 決まった食事をする慣わし 大変律儀で素晴らしい 私たち人間は真面目である 好きでもないが嫌いでもない 思い出はあるが思い入れはない ずぼらな母がテキパキと 年に一度の大仕事 あぁまた一年過ぎたのか 意味もない日々が過ぎたのだ 浸る間もなく日常に 戻れば明日はやってくる 時に意味を与えるは 自分自身でもあるだろう それでも今日は沈みたい これは私の愚痴なのだから
強さ
“強さ”ってなんだと思う? 悲しみに耐えること? 誰かの味方になること? 自分の気持ちを抑えること? それも一種の強さ でもきっとそれは見せかけで いつか自分を壊してしまう 心のSOSを 程よく出せるようにならなきゃね そして自分の周りのSOSも 気づいて 寄り添えたら きっと貴方は強い人 強さって 優しさって 意思なんだなぁ
栗
母のささくれた指先が 私の頬を包み込む 棘で愛を守っている 悴んだ手に包まれた 秋の小さな落とし物 暖かい蓑から抜け出して 優しさを返しに木を抱く
君死にたまふことなかれ
頭にこだまする旋律に 指を弾かれ、優しく 私はその先を見つめていた 元より涙とは単にせせらぎであり 長い人生において、その尺は瞬である しかしながら私の記憶の大半を占めていること 君は笑うだろうか 目前に立ち込める揺らぎも 手で掻くように切り分け 進む方向は違えど 目的地は、いつもふるさと 小川が大きな河川となり やがて海に還るとき 私は君を想う 手を組み願うは 溶けゆく雪原の 徐々に顔を出す緑が 私を迎えうること まもなく寒さに耐えずとも 帰り道がわかるだろう 聞かぬ素振りの重い風 君死にたまふことなかれ