圓名

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圓名

・不定期投稿 ・初心者 ・コミュニュケーション下手

 ぼんやりとした部屋で、一人薬を飲む。先日から一種類増えた薬はそれだけで、自分の骨ばった手のひらと気分をひどく重くさせる。 ───抗うつ薬。  元々数種類ある薬─定型抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬─に、さらに追加で処方されたもの。  医者に、消耗期(休息期とも言うらしい)に入り始めたための症状があるからと説明を受けていたが、面倒だとしか思えなかった。  できるなら、その先日の定期診察のために外出もしたくはなかった。ここ最近、なにかをするのにも体はだるく、指先一つでも動かすのが億劫になっていた。  でもまあ、確かに、と思う。少し前までは毎日のように声がした。うるさくて、うるさくて、なのに自分以外には聞こえない。幻に追われていたのだ。それに比べれば、今の方がマシだと思うほかない。薬は、自分が思っているよりも効いているということらしい。  それでもやはり、薬がないとまともに生きていけないという感覚は、自らの息を常に浅くさせるのには充分だった。  数年前、病院からの帰り道で、自分は“おかしい”のだと、諦めたように優しく父に言われた時、しばらくは体に力が入らなかった。その後も薬が増えた。もうどうしようもなかった。  今日はよく眠れるといいな、と願って睡眠薬を飲み下す。頬を伝った水分には気づかないふりをした。

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