画面に向かう意味
家に帰って、靴を揃え、手洗いうがいをし、ピアスを外して、プリーツのスカートから白のジャージに着替えて、緩く巻いた髪を結び、ご飯を作りながら、彼氏とビデオ通話をする。
これが私の会社から帰ってからのルーティーン。
彼に画面越しにでも会える。そう思うだけで今日一日頑張ろうと思えた。
これから先、ずっとこんな生活が続くのだろうと想像するだけで幸せだった…
一年後…
今は家に帰ると靴を放り投げるように脱ぎ、手洗いうがいを速やかに済ませ、林檎柄のジャージに着替えて、画面の前に鎮座する。
「おいおい…ただいまは?」
彼氏はキッチンから顔をだす。
「せっかく同棲始めたのに…なんで無視なんだよ〜というか同棲始めて何ヶ月だっけ?」
彼ののんびりとした質問に対して私は速やかに応える。
「林檎くん推し初める1ヶ月前に始めたから…4ヶ月じゃない?それより!今日からバースデーイベだからご飯作るのよろしく!」
一年前、画面に向かう理由は彼のためであったが、今では推しのためである。