りとがみ
32 件の小説最強チートですが、魔王倒したらログアウトしました!!!
四の五 湖の奥で 「た、助けてくれぇぇぇぇぇ!!!」 阿良木は全力で走っていた。 右へ、左へ。 木々の間を抜け、ぬかるみを踏み越え、ただひたすらに逃げる。 「無理無理無理無理!!!死ぬ死ぬ死ぬ!!!」 背後から迫る気配に、振り返る余裕もない。 ただ前へ。 ただ走る。 ――どれくらい走っただろうか。 「はぁっ……はぁっ……!」 気が付けば、森が開けていた。 目の前には、小さな湖。 「……はぁ、はぁ……まいた、か……?」 後ろを見る。 ――いない。 「っしゃあああああああ!!!」 その場に崩れ落ちる。 「はぁー……生きた……」 喉が渇く。 阿良木は湖に近づき、手で水をすくう。 「ぷはっ……うめぇ……!」 冷たい水が、体に染み渡る。 「……にしても、ここどこだ?」 辺りを見渡す。 湖を囲うように木々が生い茂り、音はほとんどない。 静かすぎるほどに、静かだった。 「……あいつら、来ねぇかな……」 その場に座り込み、ぽつりと呟く。 さっきまでの騒がしさが、嘘みたいに遠い。 風が、水面をわずかに揺らす。 ――ちゃぷん。 「……ん?」 小さな音。 湖の奥。 水面が、わずかに揺れる。 「……魚、か?」 じっと目を凝らす。 ――静かだ。 何もいないように見える。 「……気のせい、か……?」 そう呟いた、その時。 ――ぴくり。 水面の奥で、 何かが、動いた。 「……?」 次の瞬間。 ――ゆっくりと。 水の中で、“それ”が目を開いた。
『享楽』
えー。あの4人の後かよー。 ラストを飾るって俺らしくねぇ〜。 いやぁ、俺は他のメンツより重い過去は持ち合わせてないのよ。 重いどころか、鬱陶しいけど……!! ……あー!また腹立って来た!!くっそぉ……!! ちょっとそこのアンタ! そうだ、今この話を見てるアンタだ!! おいおい!スクロールするな!! 聞いてくれよ俺の話! マジであったまくる話なんだよ!! ―――――――― 俺の両親は、いわゆる 『バカップル』だ。 互いが大好きだし、旅行も大好き。 俺と妹の春奈は学校で着いて行けないからって、 二人だけであちこち旅してる。 旅行が終わる度に、何々が良いとか 何々が最高だったとか。 俺らは行けねぇってのに自慢話ばっかしてきやがる! まーじで腹立つ! あまりにも腹が立って、イラつきすぎて、 あったまにきて!!! 一言一句、小説にしてやった。 そしたら、バズった。 なんか10万部突破とかで、めちゃくちゃ盛り上がってる。 よく来るコメントが、 『小説を読んでるだけで、行った気分になります! 作者さんは素敵なところに行ってるんですね!』 行ってねーーよっ!!!! 俺だって行きてーーよ!!! つー訳で、俺は両親の話をネタに小説を書くだけの小説家だ。 出すもの出すもの全部バズる。 有名小説家だってもてはやされてたりもする。 あの両親(バカップル)の話なのにな。 妹の春奈もここぞとばかりに、俺の寮に住み込んでマネージャーやってるよ。 あと、第2のオカンみたいに、厳しいしうるせぇし。 本当に勘弁して欲しい。 だが、両親が旅行に行く度に2人で何とかしあってきた仲だし、蔑ろにも出来ねぇんだよな。 はぁーあ。 まじで、こんな両親やら春奈やらに絡まれてりゃー。 不良にだってなりますよ。 まぁ、別に悪い気はしないけどな。 金も手に入るし、仲間もいるし、馬鹿やれるし。 阿良木とかいうクソ馬鹿と一緒にいるのが、 俺にとっての息抜きなんだ。 ……まぁ、なんだ。 俺は幸せだよ。 特にこれ以上語ることねぇや。 バカップルの話に頭来るわ、 第2のオカンに絡まれるわ、 阿良木や神崎達と馬鹿やれるわ。 毎日が楽しいよ。 ははっ、他4人の重い話の後の、 俺のクソ軽い話は良かったかもな。 んじゃ。寝るわ!おつかれ〜。 リアスト学園3年、森嶋郁夜。 『享楽』
最強チートですが、魔王倒したらログアウトしました!!
四の四 キノコってレベルアップだよな? 「簡単じゃねぇか」 神崎が赤白のキノコをひょいと摘む。 「お前のレベル上げりゃいい」 「は?今!?」 「ダンジョンだぞ。こういうの食ったら強くなるイベントくらいあるだろ」 「ねぇよ!!!絶対ヤバいだろそれ!!!」 「でもお前、このままだと何も出来ないぞ」 「……ぐっ」 「ほら、赤白だし。どう見てもレベルアップだろ」 「逆に怪しいわ!!!」 「ゲーム的に考えろ。当たりかハズレかだ」 「ギャンブルじゃねぇか!!!」 「それやめた方が――」 「ほら食え」 「もごぉ!?」 白石の制止を無視して、口に突っ込まれた。 「うぐ、むぐ……んむ……あまっ!?」 予想外に美味い。 「うまっ!?え、なにこれ普通に美味いんだけど!?」 「で、レベル上がったか?」 「……いや?」 手を見る。足を見る。 腹を叩く。 「……なんもない」 「ハズレか」 「おーい」 小突く。 「……ん?なんか、いい匂いしません?」 白石が鼻をひくつかせる。 「お前からだな」 「俺?」 自分の腕を嗅ぐ。 ――めちゃくちゃいい匂いがする。 「……動物が、寄る匂い」 佐々木がぽつりと呟く。 「えっ、いや待てそれ――」 ゾワッ。 背後に気配。 「……おぉい」 ゆっくり振り返る。 「うっそだろ……」 ――狼。 しかも一匹じゃない。 群れ。 全員、よだれを垂らしてこちらを見ている。 「おいおいおいおい!!!これ絶対俺のせいじゃねぇか!!!」 「ガウッ!!」 一匹が飛び出す。 連鎖するように、群れが動いた。 「やっべえええええ!!!逃げろおおおおお!!!」 全力ダッシュ。 木々の間を縫い、必死に走る。 「誰か助けてぇぇぇ!!!」 「阿良木先輩!止まってください!ヒールかけます!」 「止まったら食われるから無理ーっ!!」 右へ、左へ。 とにかく逃げる。 「無理無理無理無理無理!!!」 森の奥へと逃げていった。 「……行っちゃった」 ぽつりと白石。 「まぁいいんじゃね?あいつ逃げ足だけはあるし」 「いやそういう問題じゃ――」 白石がため息をつく。 「だから無闇に食べるなと……」 「でも面白いだろ?」 神崎が肩をすくめる。 「普通にクエストこなすだけじゃつまんねぇし」 「まったく……あれ?森嶋先輩は?」 「さっき気絶したとこで踏まれてたぞ」 「……あーあ、肉球の後がくっきりだよ……《ヒール》」 「ぷはっ!?生き返った!?」 森嶋、復帰。 そして―― 「あーっ!ぷい助おまえーっ!!!」 「ぷっ!?ぷいーーっ!!」 びしゃあああああ!!! 「ぶべぇ!!」 再び沈む。 「何遊んでんだよ。森嶋。」 「……はぁ、《ヒール》」 白石がため息と共に回復。 「ぷい助だめだよ〜」 「ぷいぷいっ!」 優しくぷい助になだめるも、ぷい助はぷんぷんしていた。 テッテレテーン!白石瑠依、レベルアップ!! 「……あ、新しいスキル覚えた。……これは――」 一方その頃―― 「た、助けてくれぇぇぇぇぇ!!!」 阿良木はまだ逃げていた。
『贖罪』
さーて、俺の番が来たか! 前3人の話は重かったろー? 俺の話はそんなに重くないから安心しろーっ! 俺は元気で明るくて面白いが売りだからな!! 今日も元気に頑張るぞーっ!!! そういや昨日神崎のや―― おいおい!飛ばすなよ! まぁまぁ、落ち着いて読んでくれ! ―――――――――――― 俺は、生まれてすぐ捨てられた。 拾ってくれたのが、“先生”だった。 先生は、俺を育てた。 優しくて、温かくて、 ――そして、盗んでいた。 小さい俺に、理由なんてどうでもよかった。 先生がやっていることが、 俺の“正解”だったからだ。 気付けば、俺も盗んでいた。 仲間も増えた。 それが、俺たちの生き方だった。 ――そして、壊れた。 9歳。 先生が捕まった。 助けなきゃいけないと思った。 守らなきゃいけないと思った。 その瞬間だった。 魔力が、器から溢れた。 止まらなかった。 壊した。 吹き飛ばした。 潰した。 ――仲間を。 一人、 また一人と。 叫び声も、 止める声も、 全部、届かなかった。 気付けば。 周りには、動かない仲間たち。 「……みん、な……?」 そして―― 先生が、俺の足を掴んだ。 「……りゅうや……にげ……ろ。」 「先生!!!!」 その声を最後に、 先生は動かなくなった。 警察が、俺を囲む。 それでも魔力は止まらない、 だから、壊した。 俺が、全部壊した。 全部、俺が―― 逃げた。 どこまで走ったかも分からない。 公園の木の影で、縮こまった。 ただ、泣いていた。 その時だった。 「……大丈夫か?」 幼い声が聞こえた。 「っ!!近づくな!!近づいたらお前もっ……」 「……魔力暴走の香りがした。大丈夫だ。俺がいるから。」 そいつは、迷わず俺を抱きしめた。 ――初めてだった。 壊れないものに触れたのは。 魔力が、静かに収まっていく。 「ほら、大丈夫だろ。お前、名前は?」 「阿良木……龍夜……」 「そっか。俺は神崎新羅。」 それが、俺の―― 救いだった。 「そうだ、これやるよ。」 「……ぇ?……バンダナ?」 「魔力制御のバンダナだ。今のお前にピッタリだな」 神崎は、俺に笑いかけてくれた。 「……あり、がとう。」 「……そうか。お前一人なのか。俺ん家くる?」 俯いていた俺に、突飛な提案だった。 「俺と一緒にいれば、暴走しても抑えられる。お前のことを助けられる。どうだ?」 こいつのおかげで魔力暴走は落ち着いた。 でも、仲間たちは―― 「生きて償えよ。」 「……!!!」 俺の心を読むかのように、神崎は口を開いた。 「お前が生きてくれるなら、"それでいい"ってさ」 神崎は俺の上を見ていた。 俺には何も見えなかったが、 確かに、先生なら言いそうな言葉だ。 「……ありがとう、新羅くん。それじゃあ、一緒にいい?」 「神崎って言え。新羅は……むず痒い。」 「神崎。うん。神崎!これからよろしく頼む!」 「おう。」 俺たちはグータッチをしていた。 9歳の俺は、1つ下の神崎家族とともに暮らすことになった。 全部失った俺に残ったのは、 この命と、罪だけだ。 だから。 俺は、忘れない。 何を壊したのかも、 誰を殺したのかも。 このバンダナは、外さない。 これは、俺の“贖罪”だ。 ―――――――――――― どうだった?面白かっただろ!? ……えっ、一番重かった……? いやそんなはずはっ―― ペラペラ。 ……。 ……わぁお。確かに一番重いわ…… すまんな! まぁ俺のこと、少しはわかっただろ? じゃあお疲れ!!次は森嶋レッツゴ〜っ!! リアスト学園3年、阿良木龍夜。 『贖罪』
最強チートですが、魔王倒したらログアウトしました!!!
四の三 ぷい助、無双(味方に) 「はっ!?そうか!!ぷい助!破壊光線だ!お前ならできる!」 森嶋ははっとしたように、ぷい助に話しかけた。 「ぷいっ!?ぷいぷい!」 必死に首を振るぷい助に、森嶋がぐいっと顔を近づける。 「出来る!!やるんだ!!」 「おーい!精神論でどうにかするな!」 ぷい助は声圧に、ビビる。 「ぷ、ぷぷ……ぷーっ!!!」 びしゃあああああ!!! 「おわぁああああ!!!」 放たれた水は、見事に森嶋へ直撃。 「ぐっ……いい……みずでっぽう……だったぜ……」 後ろへ倒れ、親指を立てる。 ガクッ。 「何気絶してんだ!?」 タンク、戦線離脱。 「おい!!どうすんだよ!!タンクやられたぞ!!!」 「さて、どうしようね。」 焦る阿良木に、神崎はにやけながら狼見た。 その間にも、狼はじりじりと距離を詰める。 「……佐々木、用意」 神崎が短く言う。 空気が変わる。 佐々木は四つん這いになり―― 《変身》 次の瞬間、狼の姿へと変わった。 「行け」 低い一言。 ――ドンッ!! 佐々木が一気に距離を詰める。 角で腹を狙う一撃。 「キャウン!」 狼は咄嗟に体を逸らし、直撃を避ける。 「おぉ!!いいぞ佐々木!!やれるじゃねぇか!!」 佐々木は一度距離を取り、再び構えた。 「……あれ?いけるんじゃね?」 「魔法攻撃来なければ勝て――――」 ドゴォォォン!!! 神崎の言葉を遮るように、爆発音が鳴る。 「は?」 阿良木は、開いた口が塞がらない。 さっきまで戦っていた場所が、黒く焼け焦げる。 「ま、魔法!?」 狼が、口元に火を宿していた。 「おいこれ!負け試合なんじゃ!?」 佐々木は木の上へと回避していた。 「……佐々木、戻れ」 神崎の指示で、静かに戻る。 「さて――」 神崎が周囲を見渡し、情報を探る。 ふと、キノコを摘んだ。 ニヤリと笑う。 「簡単じゃねぇか」 「何がだよ!!!」
最強チートですが、魔王倒したらログアウトしました!!!
四の二 初戦闘、そして無力 「なんでアタッカーいねぇんだよーーっ!!!」 阿良木の叫びが、森に響いた。 ――しん、と静まり返った。 さっきまで騒がしかった森が、一瞬で音を失う。 ピヨピヨ、と鳥の声だけがやけに響いた。 神崎が口を開く。 「まぁ、スキルなくてもなんとかなるかなって」 「先に言えよ!!!」 「阿良木先輩の拳で制圧とかでもいいんじゃないです?」 「レベル上がらないじゃん!」 「元々上がらねぇだろ」 「……あ」 白石の提案にツッコむも、神崎の言葉に納得した。 「……まぁ、いっか!」 雑に切り替える。 「なんかあっても白石(ヒーラー)いるし!行くぞ!」 そのまま奥へ進む。 木々が生い茂り、足元には湿った落ち葉。 妙に色の濃いキノコがあちこちに生えている。 「敵、あんまりいませんね」 「平和だな〜。キノコとかタケノコとか――」 「タケノコ……?……いや、ねぇよ」 阿良木の言葉に周りを見渡す森嶋。 「いやあったって!」 「ねぇって!」 言い合いながら進む。 「……来る」 「阿良木、気を付けろ」 佐々木と神崎の言葉に、阿良木は振り向く。 「え?なに――」 ビュンッ!!! 「うわぁああああ!!!」 背後から突進。 間一髪で回避する。 「はっ!?狼!?……ってタケノコ生えてる!」 「角だろ!!!」 頭に角を生やした狼が、こちらを睨む。 「森嶋!ガード!」 「言われなくても!!《鉄壁》!!」 阿良木の言葉にスキルを使う。 ドンッ、と重い音で衝突した。 「今だ!誰か攻撃しろ!!」 ――誰も動かない。 「……え?」 嫌な沈黙。 「おい!!なんで誰も攻撃しない!!?」 森嶋の叫びに、皆は分が悪そうに視線を外す 「いやだって、誰も攻撃手段ないし……」 「ここで再確認すんなよ!!!」 絶望が深まる。 「あ、ぷい助!みずでっぽうです!」 白石がぷい助を掲げる。 「ぷいぷーい!」 びしゃあっ。 水が狼にかかる。 狼は後ろに飛び下がった。 ――効いてない。 「……効いてねぇじゃねぇか!!!」 狼は体を振り、水を払う。 再び、構えた。 「おい!!どうすんだこれ!!!」 完全に詰んでいた。
『依存』
俺は、小さい頃から愛を知らない。 父親は消え、母親は壊れた。 飯があるかどうかは、その日の母の気分次第。 無い日が、何日も続いた。 だから俺は、盗んだ。 コンビニでおにぎり一つ。 ポケットに入れて、走って、 隠れて、食べた。 美味かった。 でも、それ以上に―― 生きてる気がした。 捕まれば、殴られた。 帰れば、殴られた。 それでも、 腹が満たされるなら、どうでもよかった。 そんなある日。 パンに手を伸ばした俺の手を、 上から、誰かが掴んだ。 「好きなだけ入れな。買ってやるよ」 差し出されたカゴ。 「俺の家においで」 罠かと思った。 でも――どうでもよかった。 食えれば、それでいい。 帰る場所も無いのだから。 そいつの家について行った。 案内されたのは静かな部屋だった。 「好きにしていいよ」 それだけ言って、 そいつは出ていった。 ――何もされなかった。 ベッドに倒れ込んだ。 柔らかかった。 身体が、沈んだ。 逃げ場のない夜じゃない。 こんな場所、初めてだった。 殴られることもない。 怯える必要もない。 気付けば、眠っていた。 ――朝。 目を覚ますと、 いい匂いがした。 部屋を出ると、 テーブルに並んだ朝ごはん。 「おはよ。眠れた?」 普通の飯。 でも、俺には―― 初めての“普通”だった。 「……いただきます」 美味かった。 美味くて、 涙が止まらなかった。 そいつは笑っていた。 ――この人のそばにいれば、 俺は生きていける気がした。 だから。 俺は決めた。 この人のために、生きると。 ――この人が、俺の世界になった。 俺の名は、 佐々木詩連。 リアスト学園二年、佐々木詩連。 『依存』
最強チートですが、魔王倒したらログアウトしました!!!
四の一 アタッカー不在 ――森のダンジョン――入口―― 「よっしゃあああああ!!!初ダンジョン来たああああああ!!!」 「うるさいですよ。敵に見つかったらどうするんですか」 白石に怒られた。 「いやいや、敵が来たら、んなもんばちこり攻撃よ!」 「攻撃って、誰がです?」 「誰がってお前……そりゃあ……」 言いかけて、止まる。 「……待てよ」 嫌な予感がした。 「え……。確認していいか?森嶋がタンク、白石がヒーラーで……神崎と佐々木は?」 「茶化しだな。佐々木も攻撃特化はない」 「ぷふっ」 「いや笑うなよ!!!」 耐えきれず笑う森嶋にツッコミを入れた。 頭の中で役割を整理する。 タンク、ヒーラー、サポート……。 そして―― 「……あれ?」 静かに、確信する。 「な、なんで……」 ゆっくり顔を上げる。 「なんでアタッカーがいねぇんだよおおおおおお!!!!」
最強チートですが、魔王倒したらログアウトしました!!!
三の三 グループ結成!! 「……なんでだよーーーーっ!!!」 阿良木の叫びがギルドに響く。 「阿良木って攻撃してた?」 神崎は白石に問う。 「あー、逃げ回ってた気がする。」 「じゃあそれは引き付け役だろ。そりゃ白石の手柄だわ」 「引き付け役ってなんだよ!!!」 阿良木は四つん這いのままツッコミ。 「グループ登録してりゃあ、等分出来たのになー。」 森嶋はやれやれと首を振る。 「……グループ、登録……?」 その一言で、ガバッと立ち上がった。 「グループ登録します!!!俺がリーダー!!!この4人がメンバー!!!」 「えっ……いいですけど、了承は?」 春奈は驚いていた。 「お前らいいよな!?」 「えっ、俺は別に……」 「僕も、大丈夫です」 「いいぜ」 「……」 全員あっさり了承。 「よっしゃあ!!!5人グループ!!名前は――最強戦士ファイブで!!!」 「いや、ダサいだろ!!!」 阿良木作のグループ名に即ツッコミを入れる森嶋。 「えっ!?今よくね!?」 「よくねぇだろ!!」 ピコーンと、何かを思いつく森嶋。 「じゃあこうしようぜ!邪王ディアボロスランゲージにしよう!」 「お前も大概だ!横文字並べただけじゃねぇか!!!」 即刻ツッコミ入れる阿良木。 「これでどうだ!最強最悪晴天烈火!!!」 「ダッセェ!漢字集めりゃいいと思ってやがる!」 阿良木の名前にケチを付ける森嶋。 ギルドのど真ん中で、クソダサネーミングバトルが始まっていた。 「……じゃあ“勇者と御一行”でいいんじゃね?」 神崎が横から終わらせる。 「かしこまりました。“勇者と御一行”で登録いたします」 「……ん?」 知らぬ間に、登録が終わっていた。 「白石、依頼選んでこい」 「え、僕!?ちょ、ちょっと待ってて……えっと……」 掲示板を見に行き、少し考える。 「中級、森のダンジョン……森林狼のしっぽ10本、とかどう?」 「いいじゃん、それ」 「「……ん??」」 置いてけぼりな阿良木と森嶋。 そのまま受付へ。 「勇者と御一行様、中級依頼、受理しました。お気を付けて」 「勇者……?」 「御一行……?」 顔を見合わせて―― 「「最っ高だな!!!それにしようぜ!!!」」 「もうそれなんだって」 神崎が呆れる。 「ほい、これが依頼書」 ぴらりと紙が目の前に出される。 「おおぉぉ!これだよこれ!冒険って感じ!!!」 阿良木の目が輝く。 「行くぞお前らーーー!!!出発だーーー!!!」 「おーーっ!!!」 阿良木と森嶋は空高く腕を上げた。
『機長、おかえりなさい。』
「機長、時間ですよ。」 これは、とある介護士の、不思議な能力の話。 夢見 叶(ゆめみ かなえ)。女性、介護士。 「今日はいい天気ですね〜。昨日の雨も嘘みたいにカラカラですよ〜」 叶は、おじいさん――高橋さんが乗った車椅子を押していた。 晴れ渡る空の下、二人でゆっくりと散歩をしている。 「あぁ、いい天気だ。絶好だな」 高橋さんは、空を眺めながら呟いた。 「こんないい天気の空は、飛ぶと気持ちよかったんだ」 ブゥゥゥン、と大きな音が空に響く。 「わっ、大きな飛行機ですね!」 「……あぁ、あれはT-102だ。あれはわしが乗っていた機体だ」 高橋さんは懐かしむように、その飛行機を見つめていた。 「……懐かしいなぁ。また、乗りたいなぁ」 その様子を見ていた叶は、ふと口を開く。 「……乗ってみますか?」 「ははっ、もうわしは老いぼれだ。乗れなんかしないさ」 高橋さんはクスッと笑った。 「……乗れますよ。高橋さんが良ければですけど」 「……ありがとう、夢見さん。その気持ちだけでも嬉しいよ」 「……高橋さん。目を、閉じてください」 叶は車椅子を止め、ストッパーをかける。 「……? あぁ、いいが。なにか付いたか?」 高橋さんが目を閉じる。 そして、叶はそっと手をかざした。 「目を開けてください。機長」 「……機長……?」 叶にそう呼ばれた高橋は、ゆっくりと目を開けた。 ――そこは、離陸前の飛行機の操縦席だった。 「……なっ、なんだ……これは」 「機長。時間ですよ」 高橋の横には、副操縦士の服装をした叶がいた。 「……あ、あぁ。時間か……それじゃあ、出発しよう」 自分の機長の服装を確認したあと、操縦桿に手をかける。 その瞬間、手が自然に動いた。 忘れていたはずの操作、感触、感覚。 覚えていなくても、体が覚えていた。 「……T-102、離陸します」 高橋は、しっかりと無線を入れた。 「OK、グッドラック」 無線の向こうから、懐かしい音質の声が返ってくる。 飛行機はエンジンを回し、ゆっくりと滑走路を走り出す。 そして――空へ。 「機長、挨拶。忘れてますよ?」 副操縦士の叶が、マイクを軽く叩いた。 「あ、あぁ。すまない。えー、当機をご利用の皆様――」 アナウンスを終えると、自動操縦に切り替える。 「……あぁ、覚えている。懐かしい」 ぽつりと呟いた、その時。 「高橋、何をブツブツ言ってんだ?」 隣から、男の声が聞こえた。 「……!! 木梨!! お前、何して――」 「……はぁ? 何してって、そりゃ仕事だろ」 木梨と呼ばれた男は、呆れたようにため息をついた。 「……木梨……あぁ、まだ生きてたんだ」 高橋は、噛みしめるように彼を見つめる。 「なんだお前っ、気持ちわりぃな! 勝手に殺すなよ! 俺はお前の相棒だろ? 死なねぇよ!」 「いやいや、そうだったな。ははっ……えっ」 木梨にツッコまれ、ふと前を見る。 ガラスに映る自分の姿に、高橋は息を呑んだ。 そこにいたのは、若かりし頃の自分だった。 「……あぁ、そうか。これは、夢だ」 「おーい高橋、ブツブツ言うなよ。あれ見ろよ。デケェのが近づいてるぜ」 「……あれは」 視線を前に戻す。 そこには、大きな積乱雲が立ちはだかっていた。 「……よし、木梨。上昇して突破するぞ。アナウンスを頼む」 「了解、機長。こっちは任せな」 「……ははっ。久しぶりで腕がなるわ!」 高橋は心底楽しそうに操縦桿を握った。 積乱雲を抜け、無事に空港へと近づく。 「T-102、着陸します」 「おかえりなさい」 無線の声が、優しく返ってきた。 相棒の木梨とともに、機体は滑走路へ降り立つ。 ――安全に到着した。 「お疲れ! 高橋! 今夜は飲みに行こうぜ!」 「ああ! もちろんだ! ぱーっと飲もう! 黒川と西村も呼ぼう!」 「いいねぇ! 決まりだ! いい店予約しとくわ!」 楽しそうに笑う木梨を見て、高橋も微笑む。 「……あ? おーい高橋〜? 高橋! おー……い……」 「……さん。……橋さん。高橋さんっ」 「おはようございます、高橋さん」 木梨の声が遠のくのと同時に、叶の声が聞こえてきた。 「……ん、んん? あぁ、寝てたんか。すまん。太陽が気持ちよくて」 目を開けると、そこはいつもの散歩の帰り道。 車椅子は施設の前に止まっていた。 「……いい夢、見れましたか?」 「……あぁ。すごく懐かしくて、楽しかったよ」 「ふふ。それは良かったです」 「……ありがとう、夢見さん」 「いえいえ、私は何もしてませんよ〜。さあ、お昼ご飯の時間になりますよ。急ぎましょう!」 叶は車椅子を押し、施設の中へと入っていった。 「そんでな! すんごい懐かしい夢を見たんじゃ! 夢見さんのおかげじゃ!」 おやつの時間、高橋さんは楽しそうに語っていた。 「夢見さん! あたしも思い出したい夢があってね!」 「ちょっと抜け駆けしないでちょうだい!」 「あんたこそよ!」 叶のもとに、次々と人が集まってくる。 「わっ、待ってください! そんな急に来られても〜っ!!」 夢見 叶。 夢を見せ、叶える物語。 ――完。