サイレント街 #1
自分でもよく分からない。
でも自分が腐り始めていたのは分かる。
ここは沈黙と無言の街サイレント街
この街では色々な事が行われている。
ギャングの抗争、銃や大麻の取引、殺人、誘拐、強盗、強姦、
腐りに腐り切った最低で最悪な街である
俺の母親は父から酷いDVを受けており
酷い精神的病を負い最終的にピストル自殺をした。
父は毎日酒に明け暮れ違法賭博やギャンブルをして借金を抱え込み
母親のDVを理由にわざと警察に捕まり刑務所へと逃げた。
でも俺は特に何も思わなかった
だってそんなの日常茶飯事だと思ってたから
こんなの誰でも経験することだと思っていたから
俺もあんな風に腐り切って人生が終わると思っていたから
【大事な人すら守れない】
「なぁ見ろよ、あのタッパがデカい女ここら辺じゃ見ない顔だぞ」
「本当だな、運が良けりゃ拉致れるぞ?」
「やめとけやめとけ、どうせまた失敗するのがオチだ」
「なんだよノリ悪すぎだろ、お前はどう思うダン?」
今日は無駄に天気の良い日だった
それと同時に暑さも込み上げていた
「おいダン」
いつもはこんなボーっとなんてしないが暑さのせいか
朦朧としていた。
「おいダンテ話し聞いてんのか?」
「え?あぁ、なんだっけ?」
「たくお前なここはサンタモニカじゃねぇんだ、ボーっとしてんじゃねぇ」
「あぁ悪い悪い」
正直今日は何故か凄く暑い
今は十月の中旬だっていうのに
大袈裟だがまるで暑さはデス・バレー並みだ
「ほらあの女だよ、何故か道のど真ん中で突っ立てる」
その女は確かに背が高く、多分俺よりも高い
髪は短くて目は一重で見た目で言えば綺麗だった。
ただこんな暑いのにボロくて汚い長袖に裸足で暑くないのか?と思った
床はコンクリートでこの暑さだ、いくらなんでも裸足で歩けば火傷だ
しかも目には生気が感じられない、まるで立ったまま気絶してるみたいだった
「あー我慢できねぇ、あんな当たりな女ここら辺じゃいねぇよ一発ヤリにいこうぜ?」
「お前なぁ誰のせいでこの前女逃したと思ってんだよ」
「あれはダンテが勝手に逃したからだろ?」
俺は正直強姦とかにはあまり興味は無かった
だがこの街ではそう言うのは当たり前に行われている。
あれは確か十四の頃、俺と仲が良かった唯一幼なじみの
エリナと言う女友達がいた。
あいつとはなんでもした、金がない時は盗みをしたり、時には道端に落ちてたハエが集ってる犬の死骸を食ったりもした。
そうでもしないと俺たちは生きていけなかった
そしてある日、俺達二人は路上で寝てふと目が覚めるとエリナが居なくなっている事に気づいた
最初はトイレに行ってるだけかと思ったが
よく考えてみればこの街で十四歳の未成の
女が路上で爆睡していだんだ
それに気づいた時俺は咄嗟に
「誘拐されちまったのか」
そう思った
その瞬間俺達が寝ていた後ろの路地裏の奥の方から
何やら音がした。
俺はその音が鳴る路地裏の奥へ進んだ
ただただ腐敗臭がして暗闇が続く
こんな気持ちになったのは初めてだった
その時に俺は初めて恐れを知った
エリナが居ないだけでこんなにも寂しくて怖いのだと
母親がピストル自殺をした時にでさえこんな気持ちにならなかったのに
今思えば多分あの時はエリナの事が色んな意味で好きだったんだと思う
手が震えた一人が嫌だった早く会いたかった
そんな気持ちでいっぱいだった
その時少しの灯りが見えた
その瞬間自分の心が確信した
「エリナ!」
そう思いその灯りの方に咄嗟に走った
だがそこに居たのは4人の男達だった、見るからに二人くらいは目がキマってた
だけどそんな事じゃ俺は驚かなかった。
その光景は男四人が一人の女を犯していたんだから
しかもその女はエリナだった
顔をボコボコに殴られていて腕には切り傷まで付けられ
首を絞めながら
その光景を見た瞬間俺の壊れていた何かが更に砕けた。
その時のエリナの目はあの女や母親と同じ目をしていた
しかも俺はただそれを見ているだけだった、何もしなかった。
助けようとも声をかけようともしない
カカシ見たいに突っ立てるだけだった。
そして俺はそこから逃げた
自分の無力さを感じた俺が一番卑怯で一番クズだ。
あれだけ仲良くしておいて友達とか言っておいて最後はこれだ。
「最低だな俺」
「いきなりどうした?」
「ダンテは元から最低だろ笑」
そしてあれからもうエリナとは会っていない
「なぁそんな事よりさぁあの女どうするよ?」
「しゃーねぇヤルか」
「お!珍しくダンテが乗り気だぞ!」
そうこの街でははこう言う会話が
こう言う事が当たり前の街
ここは子供の夢が詰まった遊園地やおもちゃ屋じゃない
腐りに腐り底辺で最低な人間が集まる場所
サイレント街なのさ
第1章 完