瀟洒
4 件の小説しとしと
雨の日は少し歩いてみよう この時期に散歩するにはちょうどいい気温と 濡れたアスファルトの匂い。 何時もより緑の匂いも濃い。 そのうち雨足が強まって ふらりと入ったカフェが落ち着く。
『みえてるよ』
3限目と4限目の休み時間。 机から本を引っ張り出し開いた私の耳にクラスの噂話が聞こえてきた。 「昨日の番組見た?」 「見た見た!心霊写真のやつ!」 くだらないなぁ… 「すごいよね、あんなにはっきり写ってるの」 4人で固まっていたうちの1人が得意げに話し出す。 「あれは捏造でしょ、幽霊なんて居ないよ!」 「居るかもしれないじゃん!」 「じゃあなんで、携帯の画質も良くなった今に比べて昔の方が心霊写真多いの?」 『信じる派』の方は何も言えないようだった。 …それはそうだろう。 元々幽霊なんて写真に映らないんだから。 テレビ番組で面白おかしく取り上げられているのは全部偽物。 信じてても信じて無くても見える人にだけは見えるもの。 もっと正しい感覚でいえば 『視界の隅に映る』 『目で見ていなくて、頭で認識している』 というのに近いか。 …それにもし居ないとしたら図書室に体育座りでいつも居るあの子はなんなのだろう。
泡沫とプリクラ
人気の無い、早朝の海岸で僕はその箱の蓋を開いた。 中には、1年も前に別れた元カノのプリクラ。 携帯の写真は消せたのに、これだけは捨てられなかった。 二人の思い出をゴミ箱に入れて無かったことにするなんて行為はしちゃいけない。 彼女は、僕を成長させてくれたから。 けれど過去にばかり囚われちゃいけないんだ。 進まなきゃ。 頬を伝う涙を拭い、箱からプリクラを取り出す。 そして 引き波に思い切り投げ込んだ。 朝日を浴びてそれらはキラキラと輝きながら漂っていたが すぐに見えなくなった。
静寂、指揮棒、そして。
先生が指揮棒を取った。 私達は其れに応え一斉に楽器を構える。 たった6分。それだけの時間で金賞かそれ以外かが決まる一世一代の大舞台だ。 先走ってはいけない。 音程が狂ってもいけない。 金管、目立ち過ぎるな。 木管、合わせろ。 けれど── この瞬間を、 そしてこの時間を 楽しめ。 吹奏楽曲 片岡寛晶 作曲 鳥之石楠船神(とりのいわくすふねのかみ)