曖昧
美咲はよく笑う。誰かが冗談を言えば一拍遅れて声を弾ませ、私に向かって「ねえ、今の可愛いって思ったでしょ?」と勝手に決めつける。
「好きなんだろ?」
「どこ見てるの、胸?」
そんな軽口を、まるで息をするみたいに自然に放ってくる。色気というより、無邪気さに近い奔放さをまとって。
放課後、私と並んでいる姿を誰かに見られたらしい。翌日にはもう、廊下を歩けば後ろからひそひそ声がついてくる。
──付き合ってるらしいよ。
笑い半分、本気半分──そんな空気。
ある日、昇降口の近くで美咲の友達グループに出くわした。派手めな女子が三人、並んでこちらを見ている。
「ねぇ、本当に付き合ってるの?」
ニヤつきながらそう聞いてきた瞬間、美咲が当然のように私の腕を抱き寄せた。
「そーだよ。うちの彼氏」
軽薄な声。軽い仕草。だけど妙に近い距離。
「ちげーよ」
反射的に私は否定した。美咲は「あはは、冗談に決まってんじゃん」と笑い飛ばす。
その友達のひとりが、ふっと柔らかい目つきで言った。
「でも、お似合いだけどね」
お似合い? どこがだ。