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5 件の小説サングラス
… 「サングラスって知ってる?」 『知ってる』 「…あ、眩しい時にかけるやつじゃないよ。」 ……え? 『いや、サングラスってそれしかないじゃん』 「あるんだなぁ、それが」 ……は? 何言ってるんだ、此奴。 「サングラスっていうのはねぇ、太陽の光でできたグラスの事を言うんだ」 尚更わからん。 『…え、 サン(太陽) グラス で、サングラス?』 「さっきからそう言ってんじゃん」 『あぁ、そっか、ごめん?』 「うん」 … …… ……… …意味わからん。 『えっと〜、それって、他のグラスとどっか違うの?』 「うーん…多分?」 多分ってなんだ多分って。 「どんなに冷たいものでも秒でマグマ並みに熱くなるよ」 『嫌だなぁ』 「…なんかさ」 『?うん』 「ナウいね」 『は?』 「ごめんて」 『うん』 …さっきもあったな、こんなこと。 え?デジャヴ? 「今あるよ。使う?」 『あるんだ。使う』 「使うんかいw」 『笑』 友達のテルアキが、自前の黒いバッグをゴソゴソしだした。 出てきたのは、意外と普通の縦に長いグラス。 色は透き通っていて、なんだかココロ惹かれる …てか、素手でも大丈夫なんだ。 ここホントに地球? テルアキ人間? 「大丈夫なんだよね」 『え?』 「今、素手でもいけるんだって思ったっしょ」 此奴ほんとに人間か? 『お前人間?』 「当たりめぇだ」 『だよな』 … …… 状況が掴めない。 「はい、どーぞ」 『おお、ありがとう』 思っていたよりずっしりとしている。 中に何か入っているような重さだが、見た感じ何も入っていない。 『重いな、なんか』 「太陽のオーラとかじゃね?知らんけど」 『随分適当なことをおっしゃる』 「まぁね」 なにを自慢げに。 …確かに、熱くはない。ただ重い。兎に角重い。持ってるだけで疲れてくる。今すぐにでも手を取って遠くにぶん投げたい。うんと遠くの星まで。 あまりに疲れてしまい、グラスの底と地を密着させた。 「重いよなぁ、それ」 『ほんとだよ。どうやったらここまで持ってこれるんだよ。』 ここは駅。どこだか分からない。 テルアキとどうでもいい話をしながらブラブラと歩いた結果、階段の隅に座りこみ、今の訳分からん状況になっているのだ。 …そう考えれば自業自得じゃね? 分からないことだらけでココロの中は煙でいっぱいだ。 いつまでもグダグダしているのにも厭になり、もう何でも良くなってしまった僕は、遂にグラスの中にさっき自販機で買ったポロナミンPを入れてみる事にした。 慎重で臆病な僕には、当然一気にドバっと入れる事はできなく、とりあえず1滴入れてみることにした。 グラスの底に静かに広がるポロP。 途端に、ジュッと短い音がした。 誰もが熱くなったポロPから、湯気がたちこめると思うだろう。 しかし結果は、そんなものではなかった。 あまりの熱さに消えたのだ。今やポロPは行方不明である。 えっ 『僕のポロPがぁぁぁぁぁぁ!!?!!??!!』 僕はポロPガチ勢であった。成功すれば、ホットポロPでも堪能しようと思っていた。 それも虚しく、ポロPは消え失せた。無念である。 「な、なぁ元気出せよ!ポロP2本奢ってやるからさ」 『……うん。』 そこからは、あまりのショックで記憶が曖昧だ。 …っていうか、熱くなるって嘘じゃないか。あのホラ吹き野郎(テルアキ) 量が少なかったのか?流石に悔しいから、今度またサングラスとやらを借りて瓶1本分のポロPでホットポロPを作ってやる。 未だにサングラスがなんだか理解しきれていないが、それ以前にホットポロPが大切だ。(勿論ポロPも) テルアキが本当に人間なのかも、謎が深まるばかりだ。 〜終〜
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私は今、見られている。 と言っても、誰に見られているのかは分からない。 分かるのは、自分がいるこの場所は、昼は白に染められ、夜は黒く、闇に包まれると言う事だけ。 ただ不思議と、別に厭という訳では無い。 其れが自分の使命のように感じるのだ。 見てほしいとさえも感じる時がある。 私は平面的だが、私を見ている者はどうなのだろうか。 平面的?それとも、立体的? きっと立体的なのだろう。私を見ている視線には、どうもココロがあるように感じる。 平面的なのだとしたら、きっと、ココロなど無く、ただそこにあるだけなのだろう。 私は今も見られている。 立体的で、ココロがあるものに。 私の事をずっと見ているものは、きっと あなた[読者]なのだろう。
こだま
ドカーン 花火の音が空にこだまする。 音につられて鳥がはばたく。 はばたいた鳥の羽が、木の1部に触れる。 鳥とすれ違いざまにぶつかった木の葉ははらりと落ちる。 まるで誰かの涙のように、 木の葉はあの子の涙となる。 あの子の目には、窓越しの花火。 僕の目には、素直な花火。 あの子の目には、素直な花火が似合うのに。 ドカーン…… 次にこだました時、 あの子の叫びも、共にこだまする。 あの子の涙は、木の葉となる。
またね。
「じゃあね」って言われると、ちょっと悲しくなる。 「またね」って言われると、思わず口もジャンプして喜んじゃう。 なんの違いがあるの?って思っちゃうかもしれないけれど、自分にとっては月と太陽くらい離れてる。 「じゃあね」は、お別れのあいさつだけれど、 「またね」は次がある。 次も笑って会いましょう。 それじゃあ、またね。
夜
夜が来た。 来たのは、夜ではなくひとつの雲であった。 雲が太陽の顔を隠したのだ。 ふと上を見ると、そこには大きな雲ひとつ。 どれほど大きくても、世界を夜にすることは出来ない、 ちいぽけな雲であった。