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鈍い音がした気がした。目の前が暗くなっていく。あの時の様に。
「あ、おっはー。」
妙に騒がしい無音と心地よいタバコの匂いに目を覚ますと、そこは車の助手席だった。
「ん…ぅん?」
重い瞼をこじ開けて右を見ると、一人の女性がいた。
「君、今日から私の人質ね。」
「…ぅん?」
俺は夢を見ているのだと思った。もしくは走馬灯か、それとも…
「私、有名な殺し屋で今は指名手配犯なんだけどぉ…知らないかな?」
考えるうちに、彼女は何か言った。僕には意味がわからなかった。こんな美女が殺し屋で、指名手配犯で。そして僕はその人質…だめだ。理解は出来ない。
「ぃっ…」
後頭部が痛い。
「あれ?あーごめんごめんっ!強く殴りすぎちゃったかな?」
あぁ、俺は後頭部を殴られたのか。この女性に。
「ん…えっと……殺し屋…って言いました?」
「そう。私は殺し屋で、今は色々あって追われる身なのよ。だから君を攫ったんです!」
言われた言葉は理解できた。
「あぁ…はい」
彼女は驚いたような表情をして口を開いた。
「え…君、怯えたりしないの?」
俺は別に怯えない。死ぬ覚悟なんて前から出来ているし、死にたかった。と言うかその前に、彼女の態度からは怯えさせる気が微塵も感じられないのだ。
「ん…はい」
「君は不思議な子だね。今までの子達は皆んな暴れて逃げようとするから…」
「……あの…貴女のお名前は?」
「。年齢は秘密〜。君は?」
「僕はです。」