バルサみこ。

1 件の小説

バルサみこ。

Triple☆Stars

ー「三つ星」ー 「シューシュポ、シューシュポ、シューシュポー。シュポポポー。」 ゆっくりと流れ出す景色を、僕は窓から左手に 眺めていた。 進む方向に背を向けて窓際に座っているから、だんだんと遠ざかる港で、こちらに向かって手を振る人達の姿が見えた。 窓の鍵をガチャガチャリと開け、ガラリと上に押し上げると、爽やかな浜風が流れ込んできた。 窓から身を乗り出して手を振り返して言った。 「行ってきまーす!」 そして、見えなくなるまで手を振り続けた。 ザブ、ザブブブンッ。ザブン、ザババン、ボ。 波をかき分け進んで行く。 ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタン。 程なくして陸に上がった。 向きを変え、進行方向を向いて席に腰掛けた。 海岸線に沿って進んで行く。 僕に与えられた時間には、限りがある。 限りある時間を精一杯生きるために、旅に出た。 目指すは「蒼い海(ブルーオーシャン)」だ。 その為には、先ず「紅の海」(レッドオーシャン)」を渡らなければならない。 席に腰掛け海を眺めながら、村長の言葉を思い出した。 「今を変える事はできぬ。なぜならば、今は過去の産物だからじゃ。変えられるもの、それは未来なのじゃ。行け、お前自身で思い描く未来を切り拓くのじゃ。フガ。」 村のためにも、僕は成し遂げなければならない。この「秘伝書」を携え、僕は行く。 「キラキラシュポー♪キラシュポー♪」 海を眺めながら、ついいつものメロディーを口ずさんでいた。故郷の村に伝わる懐かしいあのメロディーを。 口ずさんでいたら、なんだか泣けた。 しかし、泣いてはいられない。使命がある。 涙を拭い、そして僕はヘルメットをかぶり、シールドシステムを下ろした。スチャッ。 ウィン、ウィン、ウィンッと船内に警告のサイレンが鳴り響いた。 「これより、本船体は離陸致します。ヘルメットとシールドシステムをご着用ください。」とアナウンスが流れた。 秘伝書に記された伝説のエレメントを求める、僕の旅が始まった。 公開日:2016年1月18日(月)

6
1